「 遅発性複合免疫不全を呈する18q欠失症候群 」【金兼弘和 寄附講座教授】
国立大学法人東京医科歯科大学
国立大学法人鹿児島大学
― 18q欠失症候群患者では、定期的な細胞性/液性免疫能の評価を提唱 ―
ポイント
- 18q欠失症候群の患者が、成人期に遅発性複合(液性/細胞性)免疫不全を呈したことを明らかにしました。
- 18q欠失症候群の患者は低ガンマグロブリン血症を主とする液性免疫不全を呈することは知られていましたが、細胞性免疫不全まで呈することはこれまで知られていませんでした。
- 18q欠失症候群の患者は、遅発性に重症な免疫不全症である複合免疫不全を呈する可能性があり、定期的な細胞性/液性免疫能の検査を受けた方が良いと考えられます。
研究の背景
研究成果の概要
研究成果の意義
用語解説
※1染色体長腕
染色体は動原体と呼ばれるくびれを境に短腕(p)と長腕(q)に分けられる。
※2先天性大脳白質形成不全症
神経細胞の軸索と呼ばれる長い突起に巻き付く髄鞘(ずいしょう)とよばれる構造が正常に形成されず、大脳の白質に異常が現れる症状。神経系の症状が引き起こされる原因の一つとも考えられている。
※3先天性免疫異常症 (inborn errors of immunity. IEI)
従来原発性免疫不全症と呼ばれていたが、易感染性のみならず、自己免疫疾患や悪性腫瘍の合併も多くみられることから、疾患概念の変化とともに用語も変更され、500近くの原因遺伝子が知られている。
※4液性免疫
B細胞や形質細胞によって産生される抗体(免疫グロブリン)を中心とした免疫機構である。
※5アレイベースゲノムハイブリダイゼーション解析
検査サンプルと正常なDNAを競合的に検査して両者のDNAの量差から異常を判定する染色体検査の手法である。
※6CFSEによるT細胞分裂試験
生細胞蛍光染色色素であるCFSEを利用して、T細胞をPHAという物質で刺激をして分裂能を評価する試験。細胞性免疫能の評価法の一つである。
※7T細胞受容体遺伝子再構成断片
体内でT細胞が産生されるときに生成される環状DNAのこと。血中に安定して存在するため、新生T細胞のマーカーとして利用可能である。
※8Igκ鎖遺伝子再構成断片
体内でB細胞が産生されるときに生成される環状DNAのこと。血中に安定して存在するため、新生B細胞のマーカーとして利用可能である。
※9細胞性免疫
T細胞やナチュラルキラー細胞などの免疫担当細胞自体による免疫機構である。
論文情報
掲載誌: Journal of Clinical Immunology
論文タイトル: 18q Deletion Syndrome Presenting with Late-Onset Combined Immunodeficiency
DOI: https://doi.org/10.1007/s10875-024-01751-4
研究者プロフィール
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
小児地域成育医療学講座 寄附講座教授
・研究領域
先天性免疫異常症、小児感染症、血液・腫瘍学
友政 弾 (トモマサ ダン) Tomomasa Dan
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
発生発達病態学分野 大学院生
・研究領域
先天性免疫異常症、血液・腫瘍学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
小児地域成育医療学講座 金兼 弘和 (カネガネ ヒロカズ)
E-mail:hkanegane.ped[@]tmd.ac.jp
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科
小児科学分野 西川 拓朗 (ニシカワ タクロウ)
E-mail:adu44150[@]ams.odn.ne.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
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鹿児島大学医歯学総合研究科等事務部総務課総務係
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