「フルデジタルワークフローでの新規部分床義歯製作方法の開発」【金澤学 教授】
公開日:2023.2.3
「フルデジタルワークフローでの新規部分床義歯製作方法の開発」
―デジタル技術を用いた新しい部分入れ歯の製作方法―
―デジタル技術を用いた新しい部分入れ歯の製作方法―
ポイント
- 近年、歯科業界においてデジタル化が進んできています。
- 本研究では、従来とは異なった新しいデジタル技術を応用した方法での部分入れ歯の製作方法を開発しました。
- デジタル化により、入れ歯の製作過程は簡略化され、さらに均質化が期待されます。
研究の背景
歯科治療において、失った歯を補うものの一つとして入れ歯(義歯)があります。入れ歯を作る過程は、歯科医師による型取りや噛み合わせの確認等と、歯科技工士による入れ歯の製作に二分されます。
この入れ歯の製作過程のほとんどは、歯科技工士の手作業によるものです。具体的には、石膏模型上でワックスを利用した入れ歯のデザインや、石膏型にレジン※1を流し込む作業などがあります。特に部分入れ歯の製作においては、金属の鋳造等の煩雑なステップもあり、入れ歯の精度も歯科技工士に依存する側面があります。こうしたステップの一部は3Dプリンター等を用いることによってデジタル化することができるようになってきていますが、そのすべてをデジタル化するには至っていませんでした。
この入れ歯の製作過程のほとんどは、歯科技工士の手作業によるものです。具体的には、石膏模型上でワックスを利用した入れ歯のデザインや、石膏型にレジン※1を流し込む作業などがあります。特に部分入れ歯の製作においては、金属の鋳造等の煩雑なステップもあり、入れ歯の精度も歯科技工士に依存する側面があります。こうしたステップの一部は3Dプリンター等を用いることによってデジタル化することができるようになってきていますが、そのすべてをデジタル化するには至っていませんでした。
研究成果の概要
今回、金澤教授らの研究グループは、自身らが開発したデジタル技術を応用した総入れ歯の製作方法を応用し、製作過程をフルデジタル化した部分入れ歯の製作方法を開発しました。具体的には、患者さんの欠損状態に応じた入れ歯をPC上でデザインし、そのデザインに対応した外枠を設計します。その外枠の中に既製人工歯※2と、3Dプリンターで造形した金属のフレームワークをはめ込み、レジンを流し込み重合※3します。そしてその外枠ごとミリングマシンに装着し、一度に入れ歯を削りだします。この方法の開発により、従来よりも手順を簡単に、かつ精度のよい入れ歯を作ることが可能となりました。
研究成果の意義
従来、部分入れ歯の製作において、フレームワークとなる金属は歯科技工士の手によって鋳造、研磨されて作られていました。これに対し、3Dプリンターを利用して金属のフレームワークを製作したことで、その煩雑な作業を削減することができ、またミリングマシンで一度に切削加工することで、時間も短縮することができます。入れ歯の設計においても、従来は、石膏模型上で手作業で行われていたものが、パソコン上で行ったことで、材料の無駄を削減することができるようになりました。
また、この新しい方法の最大の特徴点は、重合による収縮が完成した入れ歯の精度へ及ぼす影響が少ないところにあります。入れ歯の素材であるレジンは重合する際に収縮するのですが、この方法では重合後に入れ歯を削りだしているため、その収縮によって起きる形態の変化などの影響を受けず、より精度よく入れ歯を製作することが可能になりました。
これらの結果、より短時間で精度の良い入れ歯を作れるようになり、患者さんへより良いものを提供できるようになるだけでなく、歯科医師・歯科技工士の労働環境の改善にもつながることが期待されます。
また、この新しい方法の最大の特徴点は、重合による収縮が完成した入れ歯の精度へ及ぼす影響が少ないところにあります。入れ歯の素材であるレジンは重合する際に収縮するのですが、この方法では重合後に入れ歯を削りだしているため、その収縮によって起きる形態の変化などの影響を受けず、より精度よく入れ歯を製作することが可能になりました。
これらの結果、より短時間で精度の良い入れ歯を作れるようになり、患者さんへより良いものを提供できるようになるだけでなく、歯科医師・歯科技工士の労働環境の改善にもつながることが期待されます。
用語解説
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※1レジン:樹脂のこと。入れ歯のピンク色の部分の素材。
※2既製人工歯:歯の形態に沿わせて作られた、入れ歯用の既製の歯。
※3重合:化学的に二つ以上の物質を結合させ、化合物を作ること。ここでは、レジンの粉と液を混ぜ、加温加圧することで硬化させる一連の流れのことを指す。
論文情報
掲載誌:Journal of prosthodontic research
論文タイトル: Fabrication of milled removable partial dentures using a custom plate with prefabricated artificial teeth
DOI:https://doi.org/10.2186/jpr.JPR_D_22_00100
研究者プロフィール
金澤 学 (カナザワ マナブ) Manabu Kanazawa
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
口腔デジタルプロセス学分野分野 教授
・研究領域
デジタルデンティストリー,補綴歯科学,高齢者歯科学
水口 俊介 (ミナクチ シュンスケ) Shunsuke Minakuchi
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
高齢者歯科学分野 教授
・研究領域
高齢者歯科学,補綴歯科学
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
高齢者歯科学分野 教授
・研究領域
高齢者歯科学,補綴歯科学
秋山 洋 (アキヤマ ヨウ) Yo Akiyama
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
高齢者歯科学分野 大学院生
・研究領域
デジタルデンティストリー,補綴歯科学
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
高齢者歯科学分野 大学院生
・研究領域
デジタルデンティストリー,補綴歯科学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
口腔デジタルプロセス学分野 金澤 学(カナザワ マナブ)
E-mail:m.kanazawa.gerd[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。