プレスリリース

集中治療室(ICU)入院患者のADLとQOLの 維持・向上が期待される収納式トイレを設置

公開日:2023.10.11

トイレ収納時(左)、トイレ使用時(右)

 東京医科歯科大学は株式会社LIXILと共同研究を行う収納式トイレを、10月に稼働を開始した東京医科歯科大学病院集中治療室に設置しました。既存の高機能トイレを壁面ユニット内に収納可能としたトイレ設備で、病室の環境整備や患者の身体機能維持、ADL(日常生活動作) とQOL(生活の質)の低下を防ぐ効果が期待されます。

 東京医科歯科大学病院(病院長:藤井靖久)は、2023年10月1日に稼働を開始した新しい集中治療室のベッドサイドに、株式会社LIXIL(取締役 代表執行役社長兼CEO:瀬戸欣哉)と共同研究を行う収納式トイレを設置しました。

 重症患者さんの排泄ケアはICUにおける一つの課題で、多くの方がおむつやポータブルトイレを使用してもらっているという現状があり、これがICU入院中の患者のQOL低下を引き起こしている可能性があります。また濃密な治療や観察の必要性から、ベッドから離れたところにあるトイレへ安全に歩いて行ける状況にあるICU患者さんは限定的であり、一方で病室のすぐ近くに水洗トイレを設置するという環境を整備することは非常に困難でした。今回、ICUにある8つの患者個室のベッドサイドに収納式トイレを設置し、ベッドから2メートル程度の移動でトイレが使える環境を整備しました。この収納式トイレによって、ICUにおける衛生や感染制御的側面が改善することに加えて、排泄行動・身体機能の維持・向上のためのリハビリテーションが期待されます。また、病室内に水洗トイレが整備されることにより排泄物そのものや臭いの処理が容易になり、しかも収納可能である特徴から日常のICU診療の妨げにもならないことから、より快適なICU環境の構築も期待されます。

 集中治療医学の進歩に伴い、近年ではより多くの重症患者さんをICUで救命することができるようになりました。しかし、晴れてICUを退室した患者さんの多くが、筋力低下や持続する痛みなどのカラダの症状や、不眠や不安などのココロの症状を患い、元の生活に戻れていないことがこの10~20年で分かってきました。このようなカラダの症状やココロの症状は「集中治療後症候群(PICS)」と呼ばれ、全国の集中治療に関わる医療従事者は、重症患者さんが退院したあとの生活を見据えつつ、日々のICU診療の中でこのPICSの予防に取り組んでいます。特に、音や光・匂いといったICU空間環境の整備や早期リハビリテーション介入はPICS予防に重要だと考えられており、今回の新たなトイレの設置はPICS予防にも有用であることが期待されます。

 当院集中治療部はPICS予防に取り組むフロントランナーとして活動しています。PICSの予防には、まずPICSを知っていただくことが大切です。当院集中治療部はクラウドファンディングによる支援を受け、PICSを紹介するマンガパンフレットを作成しました。ご興味のある方は合わせてぜひご覧ください。
https://www.tmd.ac.jp/medhospital/topics/projects_icu2/index.html

※注:共同研究品につき、本製品の他施設への設置は現時点で想定しておりません。
 

問い合わせ先

<新しい集中治療室に関すること> 
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生体集中管理学分野
教授    若林 健二 (わかばやし・けんじ)    
E-mail:wakabayashi.ccm[@]tmd.ac.jp 

<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp

※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。

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