SDGsに向けた東京医科歯科大学の取組

「 矯正歯科治療で歯を動かせる範囲を広げる新たな方法を開発 」【小野卓史 教授、松本芳郎 講師】

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東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 咬合機能矯正学分野の小野卓史教授、松本芳郎講師、斉佳大学院生らの研究グループは、口腔基礎工学分野の青木和広教授らとの共同研究で、青木教授らが開発した骨形成タンパク質(BMP)-2※2とOP3-4ペプチド※3から成る骨同化作用薬を局所に留めるゼラチンハイドロゲルとともに注入する骨形成促進法に着目し、新たに開発したマウスの上顎臼歯に加える矯正力で歯槽骨の裂開を起こす実験モデルに応用しました。その結果、骨同化作用薬を局所に投与して歯に矯正力を加えた場合、局所投与しないで矯正力を加えた場合に比べて歯根膜※4内の骨吸収と歯根膜外の骨形成双方の活性が高まることで歯槽骨の裂開※1を防げることを初めて明らかにすると同時に、骨量不足による歯の移動期間の遅延が改善する可能性と、これまで矯正歯科治療で歯の移動が難しかった部位にまで歯を移動できる可能性を新たに示しました。この研究は文部科学省科学研究費補助金の支援のもとで行われたもので、その研究成果は、国際科学誌Scientific Reports に、2024年7月10日にオンライン版で発表されました。

※1歯槽骨の裂開・・・・・・・・歯を支える周囲の歯槽骨辺縁の吸収と歯肉の退縮が生じ、歯冠寄りの歯根が露出することである。主に歯周病や外傷性の嚙み合わせなどに伴って生じるが、歯槽骨の量が不十分な部位への歯の移動によっても生じることがある。
※2骨形成タンパク質(BMP)-2・・・・・・・・Bone morphogenetic proteins(BMP)の一種でTGF-βスーパーファミリーに属する分泌型シグナル伝達分子である。もともと軟骨や骨形成の制御因子として発見され、胚形成や組織・器官の形態形成において様々な働きを持つ一方、局所骨形成を強力に誘導する成長因子で、既に欧米では骨形成促進薬として臨床応用され、優れた骨再生・骨癒合促進作用が報告されている。しかし、良好な骨再生を得るための高用量のBMP使用により、投与箇所の炎症反応や目的としていない部位にも骨が形成される異所性骨化などの副作用も報告されている。安全に使用するため、低用量のBMPでシグナルを効率的に伝える方法が模索されており、各種RANKL結合ペプチドを併用する方法もそのうちの一つである。
※3 OP3-4 ペプチド・・・・・・・・分子量1400ほどのRANKL結合ペプチドの一種である。RANKLとは核因子κB活性化受容体リガンド(Receptor activator of nuclear factor-kappa B ligand )の略称で、骨芽細胞・骨細胞などの骨芽細胞系の細胞に多く認められる。破骨細胞に存在するRANK に結合して、破骨細胞の分化・成熟を刺激するリガンド分子である。一方、OP3-4 ペプチドなどの新しい骨同化作用薬である RANKL結合ペプチドは、この骨芽細胞系の細胞のRANKLに結合することで骨吸収を阻害するだけでなく、骨芽細胞系の細胞を活性化することにより、BMP-2 が誘導する局所骨形成などを促進することが知られている。
※4歯根膜・・・・・・・・歯と歯根周囲を支える歯槽骨の間に存在し、歯と歯槽骨をコラーゲン線維で結合する軟組織で、食物を咀嚼する際の歯のクッション機能がよく知られている。この歯根膜が持続的に圧迫や牽引されることにより、歯根膜に面する歯槽骨の吸収や形成が生じ、生理的な歯の移動や矯正歯科治療による歯の移動が生じる。


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