Ⅲ.治療の実際

Ⅲ.治療の実際

部分床義歯の治療の方法,実際に治療にかかる期間や費用に関してご紹介いたします.

部分床義歯の治療の実際とその期間

 部分床義歯の治療方法や設計,使用する材料などは,患者さんそれぞれの健康状態,残った歯の状態を慎重に検査して決められます.検査の結果,義歯を製作する前に口腔清掃やう蝕,歯周病の治療,抜歯などが必要となることも少なくありません.このため,治療期間は患者さんによって大きく違います.
 一般的には,歯の治療が終了して部分床義歯の最終的な型取り(印象)が開始されると,義歯装着までは4回以内で終了することがほとんどです.ただし,装着した後も問題なく使えるまでに何回かの調整が必要になります.

歯の調整(前処置)

 部分床義歯が患者さんの歯にぴったりと適合し,咀嚼しても動いたり外れたりしないためには,歯の表面をわずかに削って調整する必要があります.
 歯を調整する処置は通常,型取り(印象)を行う前に実施します.

図10

 図10は微調整した歯の一部(矢印)に金属の骨組みやとめ金(クラスプとレスト)が適合した状態を,模型の上で確認したところです.

費用

 部分床義歯の治療は健康保険で受診できます.
 しかし,患者さんのご希望に応じて保険外の診療も行っています.部分床義歯を保険外診療で製作するのは,主に以下のようなご希望がある場合です.

1.金属床義歯

 義歯の骨組みをアクリルレジンではなく,薄い金属で作りたい場合に適用されます.
 金属製の骨組みは薄くて強度が高く,長年の使用にも耐えることができます.幅も小さくできるので異物感が少ないほか,食べ物や飲み物の温度を感じやすい利点があります.
 20万円~約30万円の費用が必要です.

2.二重冠(テレスコープ冠)

 一般的なクラスプ(金属のばね)とは異なり,義歯を装着したときに金属が見えない装置です(図12).外観が良くなるだけでなく,義歯が安定して咀嚼しやすくなります.
 費用は設置する歯一本ごとに約15万円以上かかり,さらに金属床義歯と併用することが多いので,多くの場合は総額で数十万円以上になります.

3.磁性アタッチメント

 歯冠部がなくなり歯根だけが残った歯に設置する,根面アタッチメントの一種です.う蝕が大きかった歯にも適用でき,緩くて外れやすかった義歯が改善されます.
 設置する歯ごとに約8万円かかります.
 これらの他にも様々な保険外診療がありますが,いずれも担当医が診査を行った上で適用するべきかを診断します.患者さんの状態によっては適用できない場合があります.

メインテナンス

 部分床義歯は装着した後の管理が大切です.義歯と口腔内の清掃を適切に行わなければ,義歯に付着するプラークが原因となって口内炎となったり,間接的に歯周病やう蝕を誘発して残っていた歯をさらに失うことにもなります.
 義歯の管理や清掃については,担当医が患者さんそれぞれに適した方法をご説明しています.

 義歯装着後も,定期的な検査とメインテナンスを欠かさないことが大切です.