「原始線条形成制御因子としてセラミドを同定」【小藤智史 講師、仁科博史 教授】
― ノックアウトマウスデータベースとin vitro細胞分化誘導系の活用 ―

ポイント
- ノックアウトマウスデータベースを活用し、原始線条形成を正や負に制御する812種類の候補遺伝子を見出しました。
- 脂質であるセラミドが胚発生初期に重要な原始線条の形成を抑制することを明らかにしました。
- 試験管内で組織・器官形成を目指す再生医学の細胞培養法の開発に貢献することが期待されます。
研究の背景
研究成果の概要

図1 ㏌ vitroでの初期胚分化誘導系
マウスのES細胞を用いて胚様体を形成させることで、㏌ vitroで初期胚分化を解析できる。原始線条様構造を介して心筋細胞へと分化する。原始線条形成が阻害されると神経細胞へと分化する。

図2 セラミドの初期胚分化への影響
セラミドで胚様体を処理すると、濃度依存的に心筋への分化が阻害された一方、逆に神経細胞への分化が促進された。

図3 セラミドの細胞内代謝物への影響
原始線条形成期に胚様体をセラミドで処理することにより、細胞内代謝が大きく変化した。

図4 セラミドによる原始線条形成制御のモデル図
研究成果の意義
用語解説
※1原始線条
胚発生の初期に観察される一過的な線状構造の組織である。中内胚葉形成の基となり、心臓、筋肉、肝臓、膵臓などの組織・器官形成に至る。
※2セラミド
脂質の一つである。スフィンゴシンと脂肪酸から成り、脂肪酸の長さにより様々な種類がある。細胞膜の構成成分の一つであるとともに、細胞分化、増殖、細胞死などを制御するシグナル分子としても機能する。
論文情報
掲載誌:Stem Cells
論文タイトル: Lethal phenotype-based database screening identifies ceramide as a negative regulator of primitive streak formation
DOI:https://doi.org/10.1093/stmcls/sxad071
研究者プロフィール

Jing Pu (ジン プー)
東京医科歯科大学 難治疾患研究所
発生再生生物学分野 特任助教
・研究領域
幹細胞

東京医科歯科大学 難治疾患研究所
発生再生生物学分野 講師
・研究領域
物質代謝

東京医科歯科大学 難治疾患研究所
発生再生生物学分野 助教
・研究領域
分子細胞生物学

東京医科歯科大学 難治疾患研究所
発生再生生物学分野 教授
・研究領域
分子細胞生物学、発生再生生物学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 発生再生生物学分野
仁科博史(ニシナヒロシ)
E-mail:nishina.dbio[at]mri.tmd.ac.jp
小藤智史(コフジサトシ)
E-mail:kofuji.dbio[at]mri.tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[at]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[at]の部分を@に変えてください。