プレスリリース

「 サルコイドーシスと悪性リンパ腫を鑑別するAIモデルを開発 」【宮崎 泰成 教授】

公開日:2023.8.29
サルコイドーシスと悪性リンパ腫を鑑別するAIモデルを開発
Deep Learningを用いた画像鑑別

ポイント

  • これまで不明であった18F-FDG PET/CTにおけるサルコイドーシスと悪性リンパ腫の病変分布に違いがあることが分かりました。
  • 18F-FDG PETの画像を用いて深層機械学習によるモデル化を行いました。
  • この開発により、全身に病変を形成する疾患の鑑別をより迅速かつ高精度で行えることが期待できます。
 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 統合呼吸器病学分野の宮崎泰成教授と青木光特任助教の研究グループは、同放射線診断学分野、同血液内科分野、同M &Dデータ科学センター生物統計学分野と共同で、サルコイドーシス56例、悪性リンパ腫62例の18F-FDG PET/CT※1のMIP画像を用いた深層機械学習モデルを開発しました。その研究成果は、国際科学誌European Radiologyに、2023年8月3日にオンライン版で発表されました。

研究の背景

 サルコイドーシスは、全身臓器(肺・心臓・肝臓など)やリンパ節に非乾酪性肉芽種を形成する良性疾患であり、経過観察や免疫抑制療法が行われます。悪性リンパ腫は同様に、全身臓器やリンパ節に病変形成する造血器腫瘍の一種であり、治療として化学療法や放射線療法が行われます。治療方法が異なるため両疾患を鑑別することは非常に重要ですが、高感度に病変を検出できる18F-FDG PET/CTであっても鑑別が困難とされていました。
 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は深層学習Deep Learningの一種であり、多層の畳み込み層とプーリング層を組み合わせて入力画像から特徴マップを抽出するAIの手法です。CNNは医用画像研究で用いられており、従来手法よりも高い精度を示す報告が多数されています。

研究成果の概要

 本研究グループは、治療前に18F-FDG PET/CTが撮影されたサルコイドーシス症例56名、悪性リンパ腫症例62例を後方視的に収集しFDG異常集積部位を比較検討しました。サルコイドーシスでは縦隔リンパ節および肺により顕著なFDG集積がみられましたが、悪性リンパ腫では頸部リンパ節により顕著な集積がみられました(表1)。縦隔リンパ節では、サルコイドーシス患者は#2、#4、#7、および#10リンパ節に有意なFDG集積を認めました(すべてp<0.01)。悪性リンパ腫では、#1のリンパ節に集積する傾向がありました(p = 0.08)。

表1. 核医学専門医により読影されたPET/CTでの異常FDG集積部位

 続いて、FDG集積部位がわかりやすいMIP画像※2を用いてCNNモデルを作成しました。モデルは正面像と側面像をData Augmentationした後に入力し、モデル性能は5-fold cross validationで評価しました。正面および側面のMIP画像を用いたCNNモデル(図1)は、平均精度0.890(95%信頼区間(CI):0.804-0.977)、感度0.898(95%CI:0.782-1.000)、特異度0.907(95%CI:0.799-1.000)、AUC 0.963(95%CI:0.899-1.000)を達成しました。

図1. CNNモデルの構造

 さらに、Grad-CAM※3を用いてモデルの注目している部分を可視化しました(図2)。赤色で示されている部位が特に注目された部位です。FDG集積がある部位に着目していることが分かります。
 

図2. 正答例におけるGrad -CAMによるMIP画像のヒートマップ

研究成果の意義

 入力された画像から病変部を特定し、その特徴を把握することで画像診断は行われます。このプロセスは人間でも機械学習でも変わりがありません。従来の機械学習の手法では病変部の特定や、必要な特徴量の選択は人の手で行われており、時間を要しました。しかし、近年注目されている深層機械学習ではその手間は必要なく自動化される利点があります。
 本研究では、サルコイドーシスと悪性リンパ腫という鑑別が重要な疾患に対して、18F-FDG PET/CTが撮影された症例で、そのFDG集積部位に差異があることを明らかにしました。また、深層機械学習の手法を用いることで従来よりも迅速かつ高性能なモデルを提唱しました。本研究をもとに将来的には、全身に病変を形成するさまざまな疾患に対して応用することにより、画像診断を発展させる可能性を秘めています。

用語解説

※1 18F-FDG PET/CT・・・グルコースアナログである18F-FDGが細胞に取り込まれることにより、代謝が活発な細胞を可視化することができる核医学検査の種類である。

※2 MIP(Maximum intensity projection)・・・3次元画像において任意の断面における最大値を描出する方法である。

※3 Grad-CAM(Gradient-weighted class activation mapping)・・・CNNモデルの判断根拠を可視化する手法の1つである。注目している部位をヒートマップを用いて描出する。

論文情報

掲載誌European Radiology

論文タイトル:Deep convolutional neural network for differentiating between sarcoidosis and lymphoma based on [18F]FDG maximum‑intensity projection images

DOI:https://doi.org/10.1007/s00330-023-09937-x

研究者プロフィール

宮崎 泰成 (ミヤザキ ヤスナリ) Miyazaki Yasunari
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
統合呼吸器病学分野 教授
・研究領域
呼吸器内科学

問い合わせ先

<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
統合呼吸器病学分野 氏名 宮崎 泰成 (ミヤザキ ヤスナリ)
TEL:03-5803-5954 FAX:03-5803-0119
E-mail:miyazaki.pilm[@]tmd.ac.jp

<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp


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  • 「サルコイドーシスと悪性リンパ腫を鑑別するAIモデルを開発」