「COVID-19に関連した小児突然死の背景にある希少疾患の診断に成功」【鵜沼香奈 准教授、金兼弘和 教授】
東京医科歯科大学
広島大学
― 世界初の分子剖検によるLZTR1変異を有するNoonan症候群の診断例 ―
ポイント
- 基礎疾患が指摘されていなかったSARS-CoV-2 PCR陽性の未成年患者の剖検により、稀な冠動脈起始異常、小児B前駆細胞性急性リンパ性白血病の合併症を有するNoonan症候群が明らかになりました。
- 分子剖検により、LZTR1遺伝子変異を有するNoonan症候群患者であることを特定しました。
- LZTR1遺伝子変異を有するNoonan症候群の報告は少なく、今回の報告がこの遺伝子変異を有するNoonan症候群患者の病態解明の一助となることが期待されます。
- 本報告は、突然死における分子剖検の意義を強調するものであり、剖検で全エクソームシークエンスを用いることにより、突然死の診断や予防などへの応用が期待できます。
研究の背景
最近、全エクソーム検査(whole exome sequence; WES)※2によりユビキチン修飾関連分子であるLZTR1 (Leucine Zipper Like Transcription Regulator 1)変異※3がNoonan症候群と関連することが判明しましたが、現在までこの変異によるNoonan症候群患者は国内外で50例未満しか報告されておらず、遺伝子変異と臨床症状との関連などについては不明な点が多くあります。したがって、本遺伝子変異を有するNoonan症候群患者の正確な診断が、病態との関連性を知る上で重要な手がかりとなることが期待されています。また、臨床的にはWESによる網羅的遺伝子解析による診断が進んでいますが、剖検実務で導入している施設は皆無に等しいのが現状です。
研究成果の概要
研究成果の意義
用語解説
※2全エクソーム検査(whole exome sequence; WES)・・・・・・・・すべてのエクソン領域を含む範囲をシークエンスするゲノム解析
※3 LZTR1 (Leucine Zipper Like Transcription Regulator 1)・・・・・・・・BTB-Kelchスーパーファミリーに属するタンパクをコードするがん抑制遺伝子
論文情報
掲載誌:Frontiers in Immunology
論文タイトル: Molecular Autopsy Underlie COVID-19-Associated Sudden, Unexplained Child Mortality
DOI:https://doi.org/10.3389/fimmu.2023.1121059
謝辞
研究者プロフィール
鵜沼 香奈 (ウヌマ カナ) Unuma Kana
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
法医学分野 准教授
・研究領域
法中毒 法医病理 法医学一般
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
小児地域成育医療学講座 教授
・研究領域
先天性免疫異常症、小児感染症、血液・腫瘍学
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
人体病理学分野 講師
・研究領域
血液病理、病理学全般、ヘルスケアビジネス
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
法医学分野 鵜沼 香奈(ウヌマ カナ)
E-mail:unumlegm[@]tmd.ac.jp
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
小児地域成育医療学講座 金兼 弘和(カネガネ ヒロカズ)
E-mail:hkanegane.ped[@]tmd.ac.jp
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
人体病理学分野 山本 浩平(ヤマモト コウヘイ)
Email:yamamoto.pth2[@]tmd.ac.jp
広島大学大学院医系科学研究科
小児科学 岡田 賢(オカダ サトシ)
E-mail:sokada[@]hiroshima-u.ac.jp
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