大学公開講座 2022

大学公開講座 2022

2022年度公開講座は、全日程を終了しました。ありがとうございました。

講座の概要

 本学の公開講座は今年で30回目を迎え、今年度も「健康を考える」というテーマで計6回の講義を企画いたしました。昨年度は感染予防を万全に遂行する必要があるため、初の試みとしてオンライン(Web)配信で開催したところ、たくさんの方に受講していただきました。今年度もたくさんの皆様にご参加いただけるよう、受講料も無料で、定員も設けずに準備しておりますので、奮ってご参加ください。
 医療系総合大学である本学では「知と癒しの匠を創造し、人々の幸福に貢献する」を基本理念として掲げております。本学の最終⽬標は、優れた教育・研究の成果を上げるだけでなく、その成果を社会に還元することだと考えています。⼤学病院における診療はその直接的な表現ですが、それに留まらず、世界的にもレベルの高い価値のある「健康」に関する情報を社会の皆様に情報発信することも⽋かせない社会貢献と考えています。
 また、本学は2022年4⽉から指定国⽴⼤学法⼈となりました。国内で10しかない、世界最⾼⽔準の教育研究活動の展開が期待される国⽴⼤学、という⽴ち位置になりました。指定国⽴⼤学法⼈としての本学の⽬標は、「世代を超えた⼈類のトータル・ヘルスケア」の実現です。トータル・ヘルスケアには、すべての世代、すべての場所、すべての疾患を含めたヘルスケアを実現する意味を込めています。
 今回の公開講座では、本学で行われている最先端のトータル・ヘルスケアに関する研究成果や最新医療についてわかりやすく解説してまいりますので、皆様の健康増進にお役立ていただければ幸いです。

申込方法等

応募方法:QR コードを読み取り、応募フォームに必要事項をご記入の上、送信してください。
QR コードが読み取れない場合は、以下のURLにアクセスの上、お申し込みください。
https://www.ocans.jp/tmd?fid=qz4NdPWV
応募締切:各回開催日 前日16 時
参加方法: 応募者全員にオンライン(Web)配信の参加ページ情報(ZOOMのリンク等)をメールでお知らせします。そちらからご参加ください。感染対策上、大学内での講義は行いません。ご了承ください。
定 員: なし
受講料: 無料
※お預かりした個人情報に関しては、本学主催行事以外の目的には使用いたしません。
 

お問合せ

国立大学法人 東京医科歯科大学 
総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 
住所:東京都文京区湯島1-5-45
Eメール:kouhou.adm@tmd.ac.jp
電話:03-5803-4014
 

講座日程

開講日 時間 講 師 演 題


1月 18日
(水)

18:30

20:00
山口 大輔 先生
(スポーツサイエンス機構
スポーツサイエンスセンター)
室伏 広治 先生
(スポーツサイエンス機構)


自身の身体を理解し整える

1月 25日
(水)
18:30

20:00
島田 康史 先生
(う蝕制御学分野)
最新のう蝕(むし歯)の治療と診断 
う蝕で歯を失わないために

2月 1日
(水)
18:30

20:00
高地 雄太 先生
(難治疾患研究所
ゲノム機能多様性分野)
個人のゲノム情報に基づいた
精密医療の実現に向けて

2月 8日
(水)
18:30

20:00
田村 篤志 先生
(生体材料工学研究所
有機生体材料学分野)
超分子ポリマーによる
コレステロール代謝の改善

2月 15日
(水)
18:30

20:00
高木 俊輔 先生
(精神行動医科学分野)
アスリートのメンタルヘルス。
強いアスリートは心も強い?

2月 22日
(水)
18:30

20:00
山口 浩平 先生
(摂食嚥下リハビリテーション学分野)
“食べる”を分解する
-見て、噛んで、飲む、そして楽しく生きる-
 

第1回 1月18日(水)

自身の身体を理解し整える
山口 大輔 先生(スポーツサイエンス機構スポーツサイエンスセンター)
室伏 広治 先生(スポーツサイエンス機構)
 近年スポーツを始め,運動の実施が現代社会における健康問題を解決するための糸口として注されています。その一方で,私たちがスポーツや運動を行う以前に自身の筋肉や関節の機能が十分かどうかを確認する事なく運動を行えば,かえって怪我を引き起こしてしまう可能性もあります。そのような怪我のリスクを下げるため、「どこでも」「誰でも」身体機能の状態を把握し、改善できるようにと本センターはKOJI AWARENESS™(コージ・アウェアネス)という自己評価方法を開発してきました。本講座ではこの評価法を紹介し、実技を交えながら皆様の身体に関する「アウェアネス」=「気づき」を高め、身体機能をより高めるためのアイデアを紹介できればと思います。

第2回 1月25日(水)

最新のう蝕(むし歯)の治療と診断 う蝕で歯を失わないために
島田 康史 先生(大学院医歯学総合研究科 う蝕制御学分野)
 う蝕(むし歯)は21世紀の現代でも多くの人々が罹患する病であり、日本などの先進国では高齢者のう蝕が増加しています。う蝕は進行すると、細菌感染した歯質が崩壊し、歯には穴があいてしまいます。進行したう蝕では、痛みを取り除いてよく噛めるようにするために、細菌感染した歯質を除去して歯を修復する必要があります。しかしながら、う蝕は初期の段階であれば歯を削らないで再石灰させ、治療を行うことができます。う蝕は早期に発見して、適切な治療を受けることが大切です。光を使って歯の断層画像を撮影する光干渉断層計(OCT)は、放射線による被曝リスクがなく、妊娠された方や赤ちゃんにも安全に、繰り返し使用できる新しいう蝕の診断法です。OCTは画像解像度が高く、精度の高いう蝕の診断を行うことができます。OCTによるう蝕の診断と最新のう蝕の治療法についてご紹介したいと思います。

第3回  2月1日(水)

個人のゲノム情報に基づいた精密医療の実現に向けて
高地 雄太 先生(難治疾患研究所ゲノム機能多様性分野)
 ヒトゲノムのDNA配列は30億個の塩基対から成り立ちますが、その約0.1%が個人間で異なります。その違い(遺伝子多型といいます)が個人の病気のかかりやすさなどに影響を与えています。これまで世界中で行われてきたゲノムワイド関連解析や全ゲノムシークエンスという手法によって、様々な病気の原因となっている遺伝子多型が明らかになりました。たとえば、免疫の異常で起きる関節リウマチでは、100を超える遺伝子多型が疾患の発症に関わっています。これらの遺伝子多型情報を用いて、病気の発症や重症化を予測することができると考えられています。この個人のゲノム情報に基づいた精密医療の実現に向けて、ポリジェニックリスクスコア(PRS)の利用が有望視されていますが、最新の研究成果を紹介することでPRSの有用性について考えたいと思います。

第4回 2月8日(水)

超分子ポリマーによるコレステロール代謝の改善
田村 篤志 先生(生体材料工学研究所有機生体材料学分野)
 近年、抗体や核酸等の生体分子が医薬品として利用されており、コロナウイルスワクチンではメッセンジャーRNAが初めて用いられて大きな話題となりました。一方で、生体や天然には存在しない特殊な立体構造の“超分子”と呼ばれる分子が開発されています。その一つがポリロタキサンと呼ばれる数珠状の構造をした超分子ポリマーです。珠にあたる部分が動くことが特徴の分子であり、このような分子の動きに着目した材料応用が近年注目されています。珠を構成する分子であるシクロデキストリンを超分子ポリマーによって細胞内に導入することにより、細胞のコレステロール代謝機構に作用することを見出しました。このような超分子ポリマーの細胞内コレステロールに対する作用を利用し、コレステロール代謝変容が関連する様々な疾患に対する医薬応用を研究しています。

第5回 2月15日(水)

アスリートのメンタルヘルス。強いアスリートは心も強い?
高木 俊輔 先生(大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野)
 2021年には東京オリンピックがありましたが、そこでもアスリートのメンタルヘルスについて考えさせられる機会がいくつかありました。かつては、アスリートは一般の人よりも「根性がある」「粘り強い」とされ、アスリートのメンタルヘルスに注目が集まることはありませんでした。また、アスリートたち自身もメンタルヘルスの問題について考えることを避けたり、隠したりする傾向にあったとされています。しかし、アスリートには独特な心理特性があり、一概に一般の人たちよりも「メンタルが強い」という訳でもないことがわかってきています。また、アスリートに独特の精神疾患があることもわかってきました。さらに、最近はメンタルヘルスの問題があることを公開するアスリートも増えてきています。本講座では、アスリートのメンタルヘルスについてこれまでわかっていることや、取り組みなどをお話しします。

第6回 2月22日(水)

“食べる”を分解する -みて、かんで、のむ、そして楽しく生きる-  
山口 浩平 先生(大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野) 
 摂食嚥下は食物を認知し、口腔にとりこみ、胃に至るまでを指します。食認知は、食物の色や形だけではなく食環境からもさまざまな影響を受けます。例えば、ピンクで丸いものはより甘く感じ、ソースの有無だけで認知症高齢者の食事摂取量が変化します。歯の数が減れば当然噛みづらくなりますが、よく噛むには歯の数だけではなく舌などの口腔機能も重要です。そして、歯の数や口腔機能は全身の健康とも関連します。のむ、つまり嚥下はとても複雑な運動です。誤嚥や誤嚥性肺炎はよく耳にしますが、誤嚥したら必ず誤嚥性肺炎になるわけではありません。すぐにできる嚥下のための筋トレもあります。本講座では、みる、かむ、のむという視点で“食べる”を分解してより深く理解していただきながら、障害の有無にかかわらずおいしく食事し、楽しく生きるための我々の取り組みをご紹介いたします。