グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム  > 部分床義歯補綴学分野  > 研究課題

研究課題

研究課題への取り組み

部分床義歯補綴学分野では,すべての教員と医員がそれぞれ担当する研究課題に取り組んでいます.


現在,当分野で行われている研究課題は,おおまかに以下に挙げる項目に分類されます.

1.歯列部分欠損に対する補綴治療の効果の評価  
2.生体と義歯の応力解析による設計の最適化
3.義歯用材料の開発と臨床応用に関する研究
4.補綴治療に伴う口腔の変化の解明
5.補綴治療に影響を与える顎口腔系の様々な問題の解明

ここでは,現在取り組んでる課題の一部をご紹介いたします.

歯列部分欠損に対する補綴治療の効果の評価

う蝕や歯周病などにより歯が失われると,「よく噛めない」,「見た目が悪い」,「話しにくい」,「かみ合わせが不安定」など口腔の機能にさまざまな障害を生じます.部分床義歯を用いた補綴治療は,歯の喪失により低下した口腔機能の回復を目的の一つとしています.補綴治療の効果を評価するためには,口腔機能を客観的に測る必要があります.

義歯装着者の咀嚼能力の評価

J Oral Rehabil. 2011 Feb;38(2):86-94

J Oral Rehabil. 2011 Feb;38(2):86-94

私たちは,新たに開発した2色のワックスを用いて,義歯でどの程度噛めるかを簡単に測ることができるシステムを開発し,噛む能力にどのような因子が関わっているのか研究しています.その成果は,よく噛める部分床義歯の設計に役立てられます.
(研究代表者:笛木賢治)

短縮歯列の治療効果の評価

J Oral Rehabil. 2016;43:534-42.

臼歯(奥歯)を失うと咬む能力が低下することは知られています.しかし,失われた臼歯が1,2本程度に限局しているケース(SDA;短縮歯列)では,噛むことにそれほど困らない場合もあります.ヨーロッパでは,このようなケースに対して部分床義歯による治療を積極的にする必要はないという考え方が広く支持されていますが,日本では,本当に補綴治療が必要ないのかについて未だ議論がなされています.もしSDAの適応が妥当であるケースがあるならば,患者様に負担をかけること無く顎口腔系の健康維持を図れることになり,有益な治療の選択肢となることが期待されます.また,認知神経生物学分野のご協力をいただき,短縮歯列と脳活動の関連についてf-MRIを用いた評価を行っております.
(研究代表者:笛木賢治)

歯周炎に罹患した残存歯を義歯装着によって保護する試み

J Dent. 2017;63:8-13.

歯周炎に罹患すると,適切な歯周治療を行った後であっても,残存歯歯周組織は弱体化していることが少なくありません.一般的に,部分床義歯やブリッジのような残存歯を固定源とする補綴装置は,弱体化した残存歯に対してダメージを与えるものと考えられてきました.一方で,重篤な全身疾患を有する患者さんや,高齢の患者さんでは,インプラントのような侵襲の大きな治療を避けなくてはならないことも少なくありません.また,歯周炎とインプラント周囲炎の関連も指摘されており,歯周炎罹患者に対する部分歯列欠損の治療法は,様々な問題と向き合わなくてはなりません.当分野では,部分床義歯を装着することによる咬合支持の回復と,部分床義歯による残存歯列の固定(二次固定)によって,歯周炎で弱体化した残存歯を保護する,という観点で,基礎的検討および臨床研究を進めています.最新の報告では,中等度から重度の歯周炎に罹患した患者に対しても,適切に設計された部分床義歯を装着することで,健全な歯周組織を有する患者同様に,残存歯を維持することが可能であることが示唆されました.
(研究代表者:和田淳一郎)

義歯装着者の脳活動の評価

J Oral Rehabil. 2017 Oct;44(10):770-778.

義歯を装着すると,一時的に患者さんは不快症状を訴えることがありますが,多くの場合,義歯の調整と慣れで解消されていきます.この「慣れ」を評価することはとても難しいことで,様々なアプローチがなされてきましたが,当分野では,脳活動を評価することで,患者さんの「慣れ」に迫ろうと試みております.本研究では,認知神経生物学分野にご協力いただき,fMRIを用いて,脳活動の評価を行っています.
(研究代表者:稲用友佳)

義歯装着が患者の栄養状態に及ぼす影響

J Oral Rehabli.2018;45(8):618-626.

近年,オーラルフレイルという言葉が注目されています.特に高齢者において,寝たきりになってしまう前段階の状態の一つと位置付けられ,適切な医学的対応によって,健全な状態に回復させることも可能であると考えられています.義歯を装着し咀嚼機能が向上することで,患者の栄養状態が改善すれば,オーラルフレイルへの対応が可能です.本研究では,新しい義歯の製作前後で,患者の栄養状態がどのように変化するのかを,「栄養指導の有無」という観点で評価しました.
(研究代表者:笛木賢治)

義歯装着者の発語機能の評価

J Oral Rehabil. 2010 Aug;37(8):590-5.

Folia Phoniatr Logop. 2018;70(3-4):138-148.

部分床義歯をはじめとする補綴物が患者様の口腔内で十分機能するためには,咀嚼機能,発語機能,審美性といったヒトが生活する上で重要な口腔機能を適切に回復する必要があります.しかし,これらの機能回復の中でも,第一義的に重要とされる咀嚼機能の回復を優先するために,発語機能が障害されるケースが時折見受けられます.社会生活の中で会話は食事以上に頻度の高い行動であり,発語機能が障害されることで,患者のQoLの著しい低下が危惧されます.我々は,産学連携の取り組みの一環として,音声認識を用いた発語機能評価システムを開発し,チェアサイドで簡単に発語機能評価を行える手法を考案しました.本システムを用いて,可撤性義歯の装着が発語機能に及ぼす影響について詳細な解析を行っています.
(研究代表者:和田淳一郎)

生体と義歯の応力解析による設計の最適化

J Dent Res. 2011 May;90(5):590-5.

Int J Oral Maxillofac Implants. 2015;30(1):e10-6.

部分床義歯は,失われた歯の代わりに残っている歯や顎骨などと協調して働きます.しかし,咀嚼(そしゃく)機能の回復を十分に達成するためには,義歯が口腔内の様々な組織と良好な「力関係」を実現できるように設計されなければなりません.そうでなければ,一部の歯や粘膜に大きな「負担過重」を生じたり,義歯の破損を引き起こします.生体と生体材料にかかる力の負担は,それぞれの内部に生じる「応力」や「歪み」を分析することで正確に推定できます.この分析は,三次元的な力学モデルを用いたシュミレーション解析(FEM)により行います.私たちは,特にモデルによる演算が困難な接触問題,粘弾性,疲労,材料非線形など,難度の高い非線形解析に重点的に取り組んでおり,複雑な歯の動きや粘膜内部の微小歪みの分析を世界に先駆けて発表しています.
(研究代表者:若林則幸)

義歯用材料の開発と臨床応用に関する研究 

従来の鋳造法に替わる新たな歯科補綴物作製プロセスの開発

J Mech Behav Biomed Mater. 2013 May;21:67-76.

J Mech Behav Biomed Mater. 2017;78:1-9.

メタルフレーム(金属の骨組み)は部分床義歯の重要な構成要素です.歯科に用いられる金属構造物の多くは,鋳造法によって製作されます.現状の歯科鋳造法は技工操作が煩雑で,品質は術者の技術に依存しやすく,新たな歯科補綴物製作プロセスが求められています.そこで,Computer Aided Design / Computer Aided Manufacturing(CAD/CAM)技術の一つであり,制御のもと任意形状を比較的短時間で安定的に加工できるレーザー積層造形法に注目しました.レーザー積層造形法により作製したコバルトクロム合金の機械的性質は同組成の鋳造体より優れた伸び,引張強さを示しました.また,溶出試験の結果,鋳造体より優れた耐食性を示すことが明らかとなり,機械的性質および耐食性の観点よりレーザー積層造形法はコバルトクロム合金に対して有望な歯科補綴物製作プロセスであることが分かりました.更に,積層造形法で部分床義歯用のメタルフレームを製作する際に必要な,サポート構造の部位や構造がフレームワークの強度や精度に及ぼす影響等,臨床応用に向けて検討を続けています.
(研究代表者:高市敦士)

破折しにくい義歯床用レジン重合法の歯科応用への取り組み

J Mech Behav Biomed Mater. 2013 Apr;20:98-104.

J Mech Behav Biomed Mater. 2013 Apr;20:98-104.

義歯の破損は義歯を快適に使用するにあたり大きな問題です.私たちは,義歯床の破折強度を向上させる方法として,超高圧重合という新たな手法の歯科応用を試みています.1万気圧という超高圧は,室温で氷を作る事を可能とする特殊な環境です.このような特殊な環境で義歯床の材料であるMMAの重合を行うと,常圧では得られない高靭性かつ高分子量のPMMAの合成が可能である事が明らかとなりました.超高圧下での各条件の最適化を行い,臨床応用を目指しています.
(研究代表者:村上奈津子)

インプラントと骨の接触状態に関する基礎的研究

J Biomed Mater Res B Appl Biomater. 2018 Jan;106(1):73-79.

近年急速に普及しているインプラントは,部分床義歯の支台としても非常に有効な選択肢であると考えられています.とくに高齢者に対しては,なるべく骨をつくる性能が高いインプラントサーフェスが求められます.本研究は,チタン表面にガンマ線照射をすることによる,生物学的活性の変化を検証しました.ガンマ線は波長が短い電磁波で,放射線治療の他に歯科では滅菌に用いられています.インプラント材料であるチタン表面にガンマ線を照射すると,表面形状に変化はないものの,親水性や表面化学組成など,物理化学的な要素に変化が認められることが知られています.こうした生体親和性への影響因子と生体の反応との関係を基礎的に理解することは,より生体に適した材料の応用や開発に寄与することに繋がります.最新の報告では,組成変化させたインプラント用チタン‐ジルコニウム合金の耐食性の評価を行いました.
(研究代表者:上野剛史)

チタン表面の化学的因子と生物学的活性の関連

J Dent Res. 2014 May 27;93(7):698-703.

チタン表面と骨の接触率は治癒を長期間待っても30-60%程度であり,理想的な100%には遠く及ばないことが報告されています.臨床的な成功率は高いインプラント治療ですが,患者の高齢化や潜在的なリスクを考えると,どのような条件下でもインプラント周囲によく骨が形成されることが重要であると考えられます.チタン表面の生物学的活性には表面化学組成が影響することが知られていますが,本研究では炭素に着目しました.この炭素(炭化水素-有機物)のチタン表面への付着は,いくら容器に密封されていても避けることはできず,実際に多種類のインプラントの表面を元素分析すると,15-75%もの炭素が表面を覆っていることが報告されています.このような状況を実験的にシミュレートし,骨芽細胞の親和性を評価したところ,炭素が多く付着すると,細胞活性が低下することがわかりました.この結果は,今後インプラント表面の化学的なコントロールが必要になることを示し,より骨結合能を向上させる技術の応用や開発に寄与すると考えられます.
(研究代表者:上野剛史)

歯科用CAD/CAMシステムの臨床応用に関する研究

Oper Dent. 2013 May-Jun;38(3):309-15.

J Prosthodont Res. 2018 Jul;62(3):347-352.

歯冠修復物・補綴物(詰め物や被せ物)の製作においてCAD/CAMの利用は一般的になっています.特に近年,小型のカメラを使用して口腔内で直接,光学的に印象および咬合採得をすることが可能になりました.これにより従来,技工物を製作する際に必要であった技工所との印象材,石膏模型,咬合採得材をやり取りする代わりに口腔内で採得した光学的な印象および咬合のデジタルデータを送信することで技工物の製作が可能になりました.しかしながら,その客観的な性能について不明な点が多く残っています.私たちは光学的な咬合採得法の再現性について検証を行っています.その成果はより再現性の高い光学的咬合採得法•CADソフトの開発に役立てられます.また,部分床義歯による治療においては,支台歯の前処置付き歯冠修復物(もしくはアタッチメント)と高精度に適合する義歯側の支台装置をCAD/CAMを用いてチェアサイドで同時に製作することで,より不自由な期間を短縮し効果的な治療が実現できると考えられます.
(研究代表者:若林則幸,笛木賢治)

補綴治療に伴う口腔の変化の解明

部分床義歯を装着することで,失われた口腔の機能を回復できる反面,義歯の支えに用いられている残存歯や顎堤には経時的な変化が生じます.また,近年,インプラントを支えとした補綴治療が普及してきましたが,埋入したインプラントと周囲骨にも変化が生じることも知られています.これらの変化には生理的な変化と,病的な変化があり,病的な変化が生じると口腔の健康を維持することが困難となります.このような口腔の変化のメカニズムを解明することは,補綴治療後のトラブルを未然に防ぎ,口腔健康の維持・安定させるために極めて重要です.

義歯床下顎堤の吸収のメカニズムの解明

Eur J Pharmacol. 2016;782:89-97.

義歯による過度の荷重負担が床下顎堤の吸収の一因と考えられています.これまで,力によって骨吸収が生じることは,動物による実験研究でも示されています.しかしそのメカニズムは,骨内部に生じる歪みと破骨細胞との活性との関係からは明らかにされていません.私たちは,骨内部の破骨細胞の出現とローカルストレインとの関係を明らかにし,生体の変化と骨内部の力学的変化の関係を研究しています.今後,細胞活性と歪みの関係の基礎的基盤を確立していくことで,個々の患者の画像診断の結果をもとにした補綴設計のリスク評価に役立つことが期待されています.
(研究代表者:新井祐貴)

補綴治療に影響を与える顎口腔系の様々な問題の解明

欠損補綴治療は,残存歯や顎堤の条件の他に,筋肉や顎関節の状態,噛む力や年齢・性別,全身的既往など様々な要因に影響を受ける可能性があります.また,歯ぎしりや食いしばりといった非機能的な運動(パラファンクション)も治療の経過に大きく影響を与えることが知られています.日中のパラファンクションや夜間の歯ぎしりへの対応としてマウスピースを作製することがありますが,この他に睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対してもマウスピースの一種を作製することがあります.症例によっては,このようなマウスピースが噛み合わせや顎口腔諸組織に対して影響を及ぼすことがあり,当分野では医学部呼吸器内科と連携して,補綴専門の立場から治療・研究にも参加しています.

抜歯やインプラント埋入等の外科的侵襲に伴う炎症に関する基礎的研究

J Biomed Mater Res A. 2011 Dec 15;99(4):523-31

抜歯やインプラント埋入など,外科的侵襲が生体に加わると,多かれ少なかれ必ず炎症性の反応を伴います.このような炎症状態下には多くの活性酸素種が発生することが知られており,これが生体の抗酸化閾値を上回ると,酸化ストレスとなって組織の治癒不全や遅延を引き起こすといわれています.本研究は,この酸化ストレスの骨芽細胞に対する負の影響と,抗酸化物質によるリカバリー効果を検証しました.
(研究代表者:上野剛史)

筋肉の痛みと咀嚼能力の関連性の解明

J Oral Rehabil. 2016;43(9):683-691.

筋肉の痛みが咀嚼能力(物をかみ砕く能力)にどのように影響を与えるかを解明することは,筋痛を伴う歯科治療,とりわけ咀嚼能力を回復することを目的の1つとする,入れ歯や被せ物の治療の一助となります.今回は遅発性咀嚼筋痛の,主観的・客観的咀嚼能力への影響を明らかにすることを目的としました.一般的な歯並びの女性を対象に,課題運動直前(ベースライン)/24時間後/1週間後に,閉口筋の疲労および痛み,主観的咀嚼能力,客観的咀嚼混合能力を評価しました.その結果,課題運動により閉口筋に誘発された遅発性筋痛は客観的咀嚼混合能力を低下させるものの,主観的な咀嚼能力への効果は小さいことが示唆されました.また,部分床義歯における床下粘膜疼痛に関連する因子の解明にも取り組んでいます.
(研究代表者:河野英子)