「 HIV-1潜伏感染再活性化剤としての高活性DAG-ラクトン誘導体の創出 」【玉村啓和 教授】
― HIV-1の根絶を目指して ―
ポイント
- ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)感染者の体内からHIV-1を根絶することを目的として、高いHIV-1潜伏感染再活性化※1能を有するジアシルグリセロール(DAG)-ラクトン誘導体※2を創製しました。
- 今回見出したDAG-ラクトン誘導体は、以前同グループより報告されている化合物と比べて、HIV-1潜伏感染再活性化作用や生体内安定性、タンパク質リン酸化酵素C(PKC)※3の膜への移動作用等に優れていました。
- HIV感染症/AIDSの根治を目指した治療法開発の可能性があります。
研究の背景
研究成果の概要
研究成果の意義
用語解説
※1 HIV-1潜伏感染再活性化: HIV-1の感染者は、いくつかの治療薬を併用することにより、体内で産生されるウイルス量を検出限界以下に減らすことができるが、患者の体内の細胞の中に組み込まれたHIV-1(遺伝子)を排除することはできず、潜伏感染が続いている。この潜伏感染細胞を特有の薬剤により再活性化し、プロウイルスDNAからの転写を促進して、新しいHIV-1粒子を放出する。潜伏感染細胞を根絶しないと、HIV-1感染症/AIDSは根治できない。
※2 ジアシルグリセロール(DAG)-ラクトン誘導体: ジアシルグリセロール(DAG)はタンパク質リン酸化酵素C(PKC)の天然のリガンドである。しかし、DAGはホルボールエステルよりPKCに対する結合活性が格段に低いので、Marquezらは、コンフォメーションを固定化するために直鎖状のDAGをガンマ-ラクトン環へ環化したDAG-ラクトンを創出した。DAG-ラクトンは、ホルボールエステルに匹敵するPKC結合活性を有するPKCリガンドである。
※3 タンパク質リン酸化酵素C(PKC): タンパク質リン酸化酵素C(PKC)は、西塚らによって1977年に発見された、リン脂質とカルシウム依存性のセリン、スレオニンリン酸化酵素である。PKCは、ジアシルグリセロール(DAG)やホルボールエステル等によって特異的に活性化され、さまざまな情報伝達に関与する。
論文情報
掲載誌: ACS Infectious Diseases
論文タイトル: Discovery of potent DAG-lactone derivatives as HIV latency reversing agents
DOI: https://doi.org/10.1021/acsinfecdis.4c00194
研究者プロフィール
玉村 啓和 (タマムラ ヒロカズ) Tamamura Hirokazu
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
メディシナルケミストリー分野 教授
・研究領域
創薬化学、ペプチド化学、ケミカルバイオロジー、有機化学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
メディシナルケミストリー分野 玉村 啓和(タマムラ ヒロカズ)
E-mail:tamamura.mr[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
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