プレスリリース

「 医師主導治験の結果により適応拡大の製造販売承認事項一部変更承認を取得 」

公開日:2024.5.7
国立大学法人東京医科歯科大学
学校法人聖マリアンナ医科大学

「 医師主導治験の結果により適応拡大の製造販売承認事項一部変更承認を取得 」
― RSウイルス感染症の重症化リスクの高い疾患を有する乳幼児に対する発症抑制 ―


 Respiratory Syncytial Virus(以下、「RSウイルス」)は、乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占め、乳幼児の感染症による入院の原因として最も多いことが知られています[1]。RSウイルス感染症に対する治療薬はなく、疾患管理の観点では感染後の重症化を抑えることが重要です。特異的ヒト化モノクローナル抗体であるパリビズマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする「シナジス®筋注液」(以下、「本剤」)は、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制薬であり、アストラゼネカ株式会社が製造販売しています。
 本剤は2002年1月に承認されて以降、早産児や気管支肺異形成症をはじめとしたRSウイルス感染症の重篤化リスクの高い児に対し投与されてきました。その一方で、既に本剤の投与対象として承認されている疾患以外にも、同様にRSウイルス感染症の重症化による重篤な下気道疾患が発症するリスクを有する基礎疾患があることが指摘されていました。日本周産期・新生児医学会が中心となり、関連する日本先天代謝異常学会、日本小児神経学会、日本小児呼吸器学会、日本小児外科学会から広く要望を聞いた結果、「肺低形成」、「気道狭窄」、「先天性食道閉鎖症」、「先天代謝異常症」、および「神経筋疾患」に対する適応拡大が必要であることがわかりました。
 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科学(現・東京医科歯科大学 生涯免疫難病学講座兼任)の森 雅亮教授が日本医療研究開発機構(AMED)の平成31年度「臨床研究・治験推進研究事業」の採択(課題管理番号:19lk0201097h0001)を受けて、研究開始当時に唯一薬事承認を取得しているRSウイルス感染症の重症化抑制薬であった本剤による上記疾患に対する適応拡大を目的とする、多施設共同医師主導治験を実施しました(治験実施計画書番号:TMD18-PHV-301、臨床研究実施計画番号:jRCT2080224862)[2]。この医師主導治験には、東京医科歯科大学医学部附属病院(当時。現・東京医科歯科大学病院)、九州大学病院、倉敷中央病院、東京女子医科大学東医療センター(当時。現・東京女子医科大学附属足立医療センター)、日本大学病院、名古屋大学医学部附属病院、および長野県立こども病院が参画して2019年から2022年まで行われ、研究計画期間内に目標被験者数の登録を達成しました。また東京医科歯科大学内のARO(アカデミア研究推進支援組織)である医療イノベーション推進センター(当時。現・ヘルスサイエンスR&Dセンター)が治験調整事務局を担当し、治験の実施を支援しました。
 医師主導治験では有効性、安全性、および血中薬物動態を検討した結果、対象となる乳幼児にはRSウイルス感染による入院は認められませんでした。また安全性についても特段の懸念はなく、血中薬物動態も過去の試験と同様の結果が得られました[3]。この結果を受けてアストラゼネカ株式会社が適応拡大を目的とした製造販売承認事項一部変更承認申請をおこない、2024年3月26日に同承認を取得しました。
 本治験を主導した森 雅亮教授は、承認取得を受けて以下のようにコメントしました。
「AMED研究で、これまで薬事承認のなかった、換気能力低下または喀痰排出困難のためにRSウイルス感染症による重症化リスクが高い疾患群(肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患)に対する適応拡大を目的として、医師主導試験を実施しました。その結果をもって、今回薬事承認まで取得できたことは誠に光栄に思っています。これから、該当する患者さんに対して、臨床の場で広く本剤パリビズマブが役立つことを願って止みません。」


参考文献
[1] 国立感染症研究所ホームページ「RSウイルス感染症とは」 
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html
[2] Mori M et al. BMC Pediatr. 2021; 21: 106. 
[3] Mori M, et al. Lancet Reg Health West Pac. 2023;39:100847. 
 

問い合わせ先

<研究に関すること>
森 雅亮
E-mail:mori.phv[@]tmd.ac.jp

<医師主導治験の実施に関すること>
ヘルスサイエンスR&Dセンター 研究相談お問い合わせ窓口
ホームページ:https://tmdu-herd.jp/

<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
 

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