「 胎生期・発達期の栄養環境と唾液腺インクレチンの関連性をはじめて発見 」【渡一平 助教】
― 母体の高脂肪食摂取が唾液腺を介して子の糖代謝に影響を与える可能性 ―
ポイント
- インクレチンとは、食物摂取に伴い消化管から分泌され、膵臓に作用してインスリン分泌を促進する消化管ホルモンであり、GIP、GLP-1の2つが代表的なインクレチンとして知られていましたが、唾液腺におけるインクレチンの役割は不明でした。
- 高脂肪食摂取母体由来の出生仔(雄、10週齢)では、顎下腺GLP-1発現の有意な増加が認められました。一方、GIPについては、高脂肪食摂取の母体由来の出生仔(雄、3週齢)において、顎下腺GIP発現が有意に低下していました。
- 唾液腺インクレチン機能の解明は、糖尿病の新たな予防・治療法開発へとつながることが期待されます。
研究の背景
食物摂取に伴い消化管から分泌され、膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンであるインクレチンには、glucose-dependent insulinotropic polypeptide (GIP)とglucagon-like peptide-1 (GLP-1)の2つが存在し、GIPは十二指腸のK細胞、GLP-1は上部小腸のL細胞でそれぞれに産生・分泌され、血中に移行します。先行研究よりラット唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)においてGIPとGLP-1の双方が産生・分泌されることが報告されていますが、唾液腺におけるインクレチンの役割はまだよく知られていません。このような背景のもと、研究グループは、Wistarラットを用いた動物実験系において、妊娠・授乳期の母獣および離乳後の出生仔に高脂肪食を継続摂取させた際の顎下腺インクレチン発現への影響を、組織・生化学的解析手法によって検討しました。
研究成果の概要
研究成果の意義
用語解説
論文情報
掲載誌: Frontiers in Physiology
論文タイトル: Expression of glucagon-like peptide-1 and glucose-dependent insulinotropic polypeptide in the rat submandibular gland is influenced by pre- and post-natal high-fat diet exposure.
DOI: https://doi.org/10.3389/fphys.2024.1357730
研究者プロフィール
小野 卓史(オノ タカシ) Ono Takashi
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 教授
・研究領域
歯科矯正学、口腔生理学、睡眠医学
渡 一平(ワタリ イッペイ) Watari Ippei
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 助教
・研究領域
歯科矯正学、生化学、分子生物学
Pornchanok Sangsuriyothai(ポーンチャノク セーンスリヨータイ)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 大学院生
・研究領域
歯科矯正学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 小野 卓史(オノ タカシ)
E-mail:t.ono.orts[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。