プレスリリース

M&Dデータ科学センター 宮野 悟特任教授が、第32回(2023年度)大川賞を受賞

公開日:2023.12.1
M&Dデータ科学センター 宮野 悟特任教授が、第32回(2023年度)大川賞を受賞することが決定しました。

【賞の概要】
 大川賞とは情報・通信分野における研究、技術開発および事業において顕著な社会的貢献をされた方の労に報い、その功績を表彰すると共に、情報・通信分野のさらなる発展と啓蒙に寄与することを目的とした国際賞です。
 原則として日本人の研究者1名、海外の研究者1名の2名を表彰します。
*2023年度の海外の研究者からは、海外研究者からは、Yoshua Bengio博士(モントリオール大学 計算機科学・オペレーションズリサーチ学科 教授、Mila-ケベック人工知能研究所 創設者・科学ディレクター)の受賞「人工知能における深層学習の基礎技術における先駆的研究とその応用」が決定しています。


【受賞理由】
スーパーコンピュータを活用した全ゲノム解析、がんゲノム研究の先進的な研究
For cutting edge research using supercomputers to conduct whole-genome analysis and cancer genome studies
 

プロフィール

東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターSHIROKANEの前にて

宮野 悟 (みやの さとる) Satoru Miyano
東京医科歯科大学 特任教授・M&Dデータ科学センター長
東京大学 名誉教授
Specially Appointed Professor and Director, M&D Data Science Center, Tokyo Medical and Dental University
Professor Emeritus, The University of Tokyo


【略歴】

1977    九州大学 理学部 数学科 卒業
1979    九州大学 大学院 理学研究科 数学専攻 修士課程修了
1979    同 博士後期課程 中退
1979    九州大学 理学部 助手
1984    理学博士(九州大学) 
1985    アレクサンダー・フォン・フンボルト財団 研究員
1987    九州大学 理学部 助教授
1993    同 教授
1996    東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 教授
2014    同 センター長
2015    神奈川県立がんセンター 総長(兼務)
2020    東京医科歯科大学 特任教授・M&Dデータ科学センター長
東京大学 名誉教授

主な受賞歴
1994    日本IBM科学賞
1994    坂井特別記念賞
2013    Fellow, International Society for Computational Biology
2016    上原賞
2020    ヘルシー・ソサエティ賞
 

宮野悟特任教授コメント

 数学出身の私が1991年旧文部省の科研費の重点領域として始まったヒトゲノム計画に入れていただいてから30数年の時間が経ちました。2003年に発表されたヒトゲノムの解読終了には3000億円ほどの費用がかかったと推定されています。
 一方、がんは1970年代ころからゲノムの異常が原因で発症することが知られており、ゲノムの異常に起因するがんの病態の理解には、その発症に関わるゲノムの異常とその機能的な帰結の解明が不可欠であるとの認識でした。日本が、ゲノム研究の「忘れられた10年」(2014年ごろまで)の真っただ中の2008年ごろ、シーケンス技術に革新が起こりました。いわゆる次世代シークエンサーの登場で、がんゲノムの全読解・がんゲノムの異常を網羅的に同定することが可能になり、同時に大規模データの高速・高精度な解析が求められるようになりました。
 そんな状況にあるとき、私は前職の東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターで現在SHIROKANEとよんでいるスーパーコンピュータ(スパコン)を国際がんゲノムコンソーシアムなどのデータ解析に活用していました。そして、数学とスパコンをがん研究に融合するという着想を得て、日本におけるがん研究のトップランナーたちと共に集結し、文部科学省新学術領域「システムがん」(2010~2014年度)「システム癌新次元」(2015~2019年度)を創設し研究を展開しました。小川誠司氏(現・京都大学医学研究科教授)と取り組んだ「骨髄異形成症候群(MDS)の原因遺伝子の解明」(Nature2011)は、MDS病態解明におけるランドマーク研究であるのみならず、ヒト発がんにRNAスプライシングの体細胞変異が関与することを世界で初めて示したもので、がんゲノミクス研究の歴史に刻まれる発見として紹介されました。東日本大震災の真っただ中、限りある電力利用の制約下でスパコンを運用してゲノムデータを解析し、世界競争の中、タッチの差で論文の発表ができたときには、小川氏を落胆させないですんだと安堵しました。この研究を皮切りに、スーパーコンピューティングに基づく大量のがんゲノムシーケンスデータ・遺伝子発現データの解析拠点、解析グループを編成し、がん病態解明の分野で世界をリードする多数の顕著な成果をあげることができました。また同時に、「次世代スパコン」プロジェクトの中で大規模コンピューティングを用いた細胞内ネットワークの解析をはじめとする計算生物学の分野に身を埋没させていました。そして2013年には、アジア系の研究者としては初となる国際計算生物学会フェローに選出され、背負っているものの重さを感じました。全ゲノム解析の象徴的結果では、免疫チェックポイントを構成するPD-L1遺伝子の3’-UTRを含む構造異常とこれに基づくPD-L1の過剰発現が、広範なヒトのがん種にわたって認められるメカニズムを解明しました(Nature 2016)。大規模な全ゲノム解析でなければ解明されなかったことです。スパコンを全投しました。小川氏とのこうした研究が認められ2016年度上原記念生命科学財団上原賞を小川氏と共に受賞しました。「京」、「富岳」も活用しました。そして、スパコンの活用に関して、2020年ヘルシー・ソサエティ賞(パイオニア部門)が授与されました。今回の受賞は、新たな研究を生み出すために捨て石となって働いた私どもの活動をねぎらって下さったものだと考えています。

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<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
TEL:03-5803-5018 FAX:03-5803-0272
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