「暑すぎても寒すぎても赤ちゃんが早く産まれる」 【藤原武男 教授】
公開日:2023.11.29
「暑すぎても寒すぎても赤ちゃんが早く産まれる」
― 10年間190万件の全国規模の出産データの解析から ―
― 10年間190万件の全国規模の出産データの解析から ―
ポイント
- 地球温暖化の影響で暑すぎる日や寒すぎる日が増えることで、人々の健康に悪い影響が及ぶ可能性がありますが、妊娠中のお母さんや赤ちゃんへの影響は十分にわかっていません。
- 研究グループは、妊娠中にお母さんが寒さや暑さにさらされると、赤ちゃんが妊娠37週より早く生まれる「早産」のリスクが上がることを、10年間190万件の全国規模の出産データから明らかにしました。
- 特に、早く生まれる赤ちゃんのうち約2.3%は寒い気温によって早く生まれていることがわかりました。
- 妊娠中の女性が暑すぎたり寒すぎたりする気温にさらされないようにすることが、早産を予防するための有効な対策になる可能性があります。
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 国際健康推進医学分野の藤原武男教授、西村久明助教、寺田周平大学院生、および生殖機能協関学分野の宮坂尚幸教授らの研究グループは、妊娠期の女性が寒さや暑さにさらされると早産のリスクが上昇することを明らかにしました。この研究成果は、国際科学誌BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology (ビージェーオージー)に、2023年11月20日にオンライン版で発表されました。
研究の背景
早産(赤ちゃんが妊娠37週より早く生まれること)は、5歳未満の子どもたちの最も多い死亡原因であり、世界的に深刻な問題です。また、地球温暖化の影響で暑すぎたり寒すぎたりする日が増えることは、人々の健康に悪い影響を及ぼすことがわかっていますが、それが早産にどのように影響するかはよくわかっていませんでした。日本は、全国どこでもほぼ同じような周産期医療を受けることができ、かつ国土が南北に長く四季がはっきりしているため気温の変動が様々です。その特徴をうまく利用し、妊娠中のお母さんが寒さや暑さにさらされると早産が増えるかどうか明らかにするために、この研究が行われました。
研究成果の概要
この研究では、2011年から2020年までの10年間にわたり、日本の46都道府県(沖縄県を除く)を対象に、一日の平均気温と早産の発生件数の関連を調べました。調査には、日本産科婦人科学会の周産期登録データベースと気象庁の気象データを活用し、気温の影響が現れるまでの時間差(ラグ効果※1)を考慮しました。
その結果、妊娠中のお母さんが寒さや暑さにさらされると、赤ちゃんが早産になるリスクが高くなることがわかりました。
【一日の平均気温が0.8℃(寒さの上位1%)の場合】
早産のリスクが15%増加 (95%信頼区間: 5%~29%)
【一日の平均気温が30.2℃(暑さの上位1%)の場合】
早産のリスクが8%増加 (95%信頼区間: 0%~17%)
※気温16℃を基準としています。
今回調査した中に含まれる早産の赤ちゃん21万人のうち約5000人は、妊娠中にお母さんが16℃未満の寒さにさらされたことにより早く生まれたと考えられ、それは早産全体の2.3%に及びました。(95%信頼区間0.6%~4.0%)
また、寒さや暑さによる早産への影響は、35歳未満の若いお母さんや、妊娠34週以降の後期早産において、より強く見られました。
その結果、妊娠中のお母さんが寒さや暑さにさらされると、赤ちゃんが早産になるリスクが高くなることがわかりました。
【一日の平均気温が0.8℃(寒さの上位1%)の場合】
早産のリスクが15%増加 (95%信頼区間: 5%~29%)
【一日の平均気温が30.2℃(暑さの上位1%)の場合】
早産のリスクが8%増加 (95%信頼区間: 0%~17%)
※気温16℃を基準としています。
今回調査した中に含まれる早産の赤ちゃん21万人のうち約5000人は、妊娠中にお母さんが16℃未満の寒さにさらされたことにより早く生まれたと考えられ、それは早産全体の2.3%に及びました。(95%信頼区間0.6%~4.0%)
また、寒さや暑さによる早産への影響は、35歳未満の若いお母さんや、妊娠34週以降の後期早産において、より強く見られました。
研究成果の意義
この研究により、妊娠中のお母さんが寒すぎたり暑すぎたりする気温にさらされると赤ちゃんが早く生まれやすくなることがわかりました。これは、早産を予防する方法を考えるときには、気温にも留意することが重要であることを示唆しています。将来的には、例えば熱中症警戒アラートのように、早産の予防対策として妊娠期の女性に対して気温に関する情報を提供し、暑すぎたり寒すぎたりする日は外出を控えるなどの予防行動を促すことが有効かもしれません。地球温暖化の影響をますます身近に感じるようになる中、極端な暑さや寒さが健康に与える影響を最小限にするために、医療機関は一層の取り組みが求められます。これによって、妊娠中のお母さんや赤ちゃんの健康を守り、社会全体の健康促進につながることが期待されます。
用語解説
※1ラグ効果
極端な低温や高温の健康への影響は同日に留まらず一定期間持続することが知られ、その遷延性をラグ効果と呼ぶ。
極端な低温や高温の健康への影響は同日に留まらず一定期間持続することが知られ、その遷延性をラグ効果と呼ぶ。
論文情報
掲載誌:BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology
論文タイトル:Ambient temperature and preterm birth: A case-crossover study
DOI:https://doi.org/10.1111/1471-0528.17720
論文タイトル:Ambient temperature and preterm birth: A case-crossover study
DOI:https://doi.org/10.1111/1471-0528.17720
研究者プロフィール
藤原 武男 (フジワラ タケオ) Fujiwara Takeo
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野 教授
・研究領域
公衆衛生学、疫学(社会疫学、ライフコース疫学)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野 教授
・研究領域
公衆衛生学、疫学(社会疫学、ライフコース疫学)
寺田 周平 (テラダ シュウヘイ) Terada Shuhei
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野 大学院生
・研究領域
公衆衛生学、周産期医学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野 藤原 武男 (フジワラ タケオ)
E-mail:fujiwara.hlth[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
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E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。