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「 多彩な役割をこなすトリアゼニル基を導入したアライン前駆体の開発 」【細谷孝充 教授】
「 多彩な役割をこなすトリアゼニル基を導入したアライン前駆体の開発 」
― 医薬品開発などに有用な多置換ベンゼンの簡便合成法を確立 ―
ポイント
- トリアゼニル基※1を有するアライン※2前駆体を出発原料とした多置換ベンゼン類の簡便合成法を開発しました。
- トリアゼニル基が、それ自体の他の官能基への変換や、隣接位への置換基導入に利用できるだけでなく、アライン部位における反応相手との位置選択的な反応を制御することを明らかにしました。
- 本手法は、医薬品や機能性材料の開発に重要な、多様性に富んだ多置換ベンゼン類の合成を可能とします。
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 生命有機化学分野の細谷孝充 教授らの研究グループは、トリアゼニル基を有するアライン前駆体を出発原料として用いる多彩な多置換ベンゼン類の簡便合成法の開発に成功しました(図1)。一般にアラインの反応で問題となる位置選択性に関して、反応点近傍にトリアゼニル基を導入した前駆体を用いることで、アライン部位において様々な反応相手と位置選択的に反応することを見出しました。トリアゼニル基は、それ自体を他の様々な官能基に変換することができるほか、トリアゼニル基の隣接位に置換基を導入することもできることから、これらの手法を組み合わせることで、今回開発したアライン前駆体から多彩な多置換ベンゼン類を簡便に合成することができます。本手法により、従来法では選択的な合成が困難であった多置換ベンゼン類の合成が可能となることから、ライフサイエンスや材料科学など幅広い分野に役立つことが期待されます。この研究は、文部科学省科学研究費補助金ならびに国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)等の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、2023年9月15日に、アメリカ化学会の有機化学専門誌Organic Lettersのオンライン版で発表されました。
研究の背景
アラインは様々な反応相手と反応し、多置換ベンゼン類を与える有用な化学種であり、生物活性分子や機能性分子の合成などに広く利用されています。しかし、その反応では、2種類の生成物が位置異性体混合物として生じてしまうことがあり、その選択性の制御が課題となります。一般に、選択性制御のためには、反応点近傍に特定の置換基を導入しておく必要があり、この置換基がアラインを経る多置換ベンゼン類の合成における制限となることから、アライン部位における反応の選択性を制御しつつ、反応後に他の様々な官能基に変換できる置換基の探索が行われてきました。
研究成果の概要
本研究グループは、一般にアラインの反応で問題となる位置選択性に関して、反応点近傍にトリアゼニル基を導入したアライン前駆体を用いることで、高い選択性が発現することを見出しました。アライン部位での選択的な反応に加え、トリアゼニル基自体の他の様々な官能基への変換と、トリアゼニル基の隣接位への官能基の導入とを組み合わせることで、今回開発したアライン前駆体を出発原料として高い選択性で多彩な多置換ベンゼン類を簡便に合成することに成功しました。
研究成果の意義
今回開発した手法は、官能基許容性が高いため、出発原料であるアライン前駆体に対して、反応相手や反応条件を変えて各段階の変換を行うことで、幅広い多置換ベンゼン類の合成が可能となります。今後、本手法をもとに、創薬研究などに役立つ化合物ライブラリーの構築や、機能性分子の創製など、幅広い分野に役立つことが期待されます。
用語解説
※1トリアゼニル基:窒素原子が3つ連なった、–N=N–NRR’で表される置換基。トリアゼニル基を持つ芳香族化合物である芳香族トリアゼンは、対応するアニリンから簡単に合成することができ、安定に取り扱い可能である。一方、芳香族トリアゼンは、酸との反応や光照射により高反応性のジアゾニウム塩を生じ、様々な化合物へ変換することができる。
※2アライン:ベンゼン環の一部が三重結合になった高反応性の化学種。「ベンザイン」とも呼ばれ、幅広いベンゼン類の合成に役立つ中間体として利用されている。
論文情報
研究者プロフィール
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
生命有機化学分野 細谷 孝充(ホソヤ タカミツ)
E-mail: thosoya.cb[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。
関連リンク
プレス通知資料PDF
「多彩な役割をこなすトリアゼニル基を導入したアライン前駆体の開発」