「生物進化の観点からみる骨再生と骨粗鬆症」【中村美穂 非常勤講師】

ポイント
- バイオインフォマティクス手法を用いて、骨マトリックス非コラーゲン性タンパク質についてのデータベースを構築しました。
- 本データベースは、30種類の脊椎動物から同定した255種類の骨マトリックス非コラーゲン性タンパク質を含みます。
- 骨再生、骨粗鬆症および関連する分野の研究において貴重な情報源となることなり、分子メカニズムと新しい薬物標的の特定に大きく貢献することが期待されます。
研究の背景
骨マトリックス※2は構造的および調節的な役割を果たすため、非コラーゲン性有機成分は骨の調節において重要な機能を持ちます。現在、オステオポンチンなどのごく一部の非コラーゲン性タンパク質が骨形成において重要な役割を果たすことが知られています。骨マトリックスには数百の非コラーゲン性タンパク質が含まれていますが、それらがどのように骨再生と骨粗鬆症に関連しているかは明らかにされていません。
研究成果の概要
研究成果の意義

生物進化の系統学的手法を用いた骨の研究
PhyloBoneプロジェクトは、骨細胞外マトリックスの255のタンパク質グループ(28はコラーゲン性、227は非コラーゲン性)のデータベースを構築しました。このデータベースは、骨形成と骨再生の研究においてロバストなツールを提供し、新たな疾患メカニズムを標的とした新規療法開発に寄与し、将来的には骨粗鬆症の新たな治療戦略を提供することを目指します。
用語解説
骨量(骨密度)が減る、または骨の質が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。いま現在、骨折や、腰・背中の痛みがなくても、骨が弱っていると骨粗鬆症と診断されます。(公益財団法人骨粗鬆症財団HPより)
※2骨マトリックス
骨を構成する細胞外成分で、ビルに例えると、鉄筋に相当するコラーゲン線維とコンクリートに相当するミネラル成分から構成される複合マテリアルです。
※3生物進化
生物が長い時間をかけ、何度も世代を経る間に変化すること。生物の遺伝的特徴に伴い、形態・生理・行動が変化し、生息する環境に適応する。
論文情報
掲載誌:Bone Research
論文タイトル: Phylobone: A comprehensive database of bone extracellular matrix proteins in human and model organisms
https://www.nature.com/articles/s41413-023-00281-w
DOI:https://doi.org/10.1038/s41413-023-00281-w
データベース
研究者プロフィール

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 非常勤講師
トゥルク大学 グループリーダー・非常勤教授(フィンランド)

senior researcher at Eurecat, Technology Center of Catalonia
Rovira i Virgili University (ルビラ イ ビルジリ大学) 准教授(スペイン)
University of Turku (トゥルク大学) 非常勤教授(フィンランド)
・研究領域
骨再生
バイオマテリアル
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 非常勤講師
トゥルク大学 グループリーダー・非常勤教授
中村美穂(ナカムラ ミホ)
E-mail:miho.bcr[@]tmd.ac.jp, miho.nakamura[@]utu.fi
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。