「頸椎変性疾患術後に起こる嚥下障害の要因を検討」【中川量晴 准教授、吉井俊貴 准教授】
「頸椎変性疾患術後に起こる嚥下障害の要因を検討」
― 頸椎疾患に対する前方・後方アプローチ術前後の嚥下動態解析 ―
ポイント
- 頸椎変性疾患患者を対象に、手術前後の嚥下動態と嚥下障害の有無を調べました。
- 手術(前方/後方アプローチ)後の舌骨運動は、前方への移動量が減少していました。
- 前方アプローチの手術部位、時間そして出血量は、術後嚥下障害に強く関わります。
- さらに、後方アプローチ術前後の嚥下動態を報告したのは本研究が初めてです。
研究の背景
今まで発表されている術後嚥下障害の発生頻度は、前方からアプローチする手術(前方アプローチ)で1.7-60.0%、後方からアプローチする手術(後方アプローチ)で9.4-21.0%と言われ、頻度に偏りがありました。また、嚥下障害を起こすメカニズムについても詳細に報告されていません。今回、当大学整形外科と摂食嚥下リハビリテーション科が連携を取り、頸椎疾患術後の嚥下障害の要因を明らかにすることを目的としました。
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研究成果の概要
解析の結果、41名の前方アプローチ術後のうち、26名(63.4%)が食事形態の調整を要し、12名(29.3%)に誤嚥所見を認めました。一方、44名の後方アプローチ術後のうち、18名(40.9%)が食事形態の調整を要し、4名(9.1%)に誤嚥所見を認めました。嚥下動態の結果は、前方アプローチ術後で前方、上方舌骨運動量、UES開大量、咽頭残留量および嚥下回数が術前と比較して悪化しました。一方、後方アプローチ術後は前方舌骨運動量と咽頭残留量のみ悪化しました。前方アプローチ術後の嚥下障害のオッズは、第3頸椎より上位の術野が有ると14.40、手術中に100ml以上の出血が有ると9.60、200分以上の手術時が8.18、3椎間以上の術野が有ると6.72という結果になりました。特に、「上位の術野」が嚥下障害のオッズが高いことから、手術部位が高いほど飲み込みに重要な舌骨運動を司る筋肉および神経との距離が近くなり、舌骨運動が妨げられる可能性が高まると考えられました。
研究成果の意義
用語解説
※1 Functional Oral Intake Scale, FOIS・・・・・・・・Level.1「経口摂取なし」からLevel.7「正常(制限なく通常の食事ができる状態)」の7段階で経口摂取の状態を評価する方法。
※2 Videofluorography, VF・・・・・・・・飲み込みの過程や状態を正確に評価するための検査。
※3 Dysphagia Severity Scale, DSS・・・・・・・・DSS1「唾液誤嚥」からDSS7「正常範囲」の7段階で嚥下障害の重症度を評価する方法。
※4 Upper Esophageal Sphincter, UES・・・・・・・・のどと食道の境界にある筋肉。
※5 咽頭残留量・・・・・・・・嚥下後の、のどでの食物の残留量。残留量が多いと誤嚥のリスクが高い。
※6 誤嚥・・・・・・・・唾液や飲食物が気管に入ること。
※7 オッズ・・・・・・・・ある事象が起きる確率のその事象が起きない確率に対する比。
論文情報
掲載誌:The Spine Journal
論文タイトル: Analysis of swallowing function after anterior/posterior surgery for cervical degenerative disorders and factors related to the occurrence of postoperative dysphagia
DOI:https://doi.org/10.1016/j.spinee.2022.12.010
研究者プロフィール
![](/files/topics/59420_ext_05_24.jpg)
吉澤 彰 (ヨシザワ アキラ) Yoshizawa Akira
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野 大学院生
・研究領域
摂食嚥下リハビリテーション
![](/files/topics/59420_ext_05_48.jpg)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野 准教授
・研究領域
摂食嚥下リハビリテーション
![](/files/topics/59420_ext_05_49.jpg)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授
・研究領域
摂食嚥下リハビリテーション
![](/files/topics/59420_ext_05_28.jpg)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
整形外科学 大学院生
・研究領域
整形外科
![](/files/topics/59420_ext_05_44.jpg)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
整形外科学 講師
・研究領域
整形外科
![](/files/topics/59420_ext_05_13.jpg)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
整形外科学 准教授
・研究領域
整形外科
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野
吉澤 彰 (ヨシザワ アキラ)
中川 量晴 (ナカガワ カズハル)
E-mail:a.yoshizawa.swal[@]tmd.ac.jp
k.nakagawa.swal[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
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