プレスリリース

「AI及びリモートテクノロジーを用いた心房細動の早期発見により清水区を 脳梗塞の少ないまちにする地域医療プロジェクト(略称SPAFS)」

公開日:2022.6.6
東京医科歯科大学
静岡市
静岡市清水医師会

「AI及びリモートテクノロジーを用いた心房細動の早期発見により清水区を脳梗塞の少ないまちにする地域医療プロジェクト(略称SPAFS)」


 東京医科歯科大学(田中雄二郎学長)、静岡県静岡市(田辺信宏市長)、静岡市清水医師会(望月篤会長)は3者の共同事業として、2021年度より「AI及びリモートテクノロジーを用いた心房細動の早期発見により清水区を脳梗塞の少ないまちにする地域医療プロジェクト、英語名Stroke prevention by early detection of AF in Shimizu、略称SPAFS(エスパフス)」を展開しています。
 このプロジェクトは、不整脈の一種である心房細動を発見するものです。心房細動は加齢と共にその発症率が上昇し、日本における患者数は約100万人と報告されています。心房細動の合併症として、最も重篤なタイプの脳梗塞である心原性脳塞栓が知られています。脳血管疾患は日本における寝たきりの主要な原因であり、日本における寝たきり患者さんの5人に1人は心原性脳塞栓が原因という報告もあります。重篤な脳梗塞を予防するためには、心房細動を早期に発見し、脳梗塞予防の治療を行うことが重要です。
 心房細動は、発作時の心電図によって診断可能であり、診断されれば脳梗塞予防の治療が可能です。しかし、心房細動は、発症初期には発作性であり、心電図検査の際に発作が出ていなければ診断されません。また、心房細動発作時に動悸などを自覚して病院を受診する方もいますが、約40%では自覚症状がないため、気づかないうちに心房細動を発症していることがあります。このような状態を、“隠れ心房細動”と呼びます。隠れ心房細動の患者数は少なくとも100万人と推定されています。隠れ心房細動では、治療を受ける機会がないまま、ある日突然重症の脳梗塞を発症し寝たきりになってしまうおそれがあり、その早期発見がアンメット・ニーズとなっています。
 

SPAFS概要図

 東京医科歯科大学では、通常の健康診断で行う心電図や血液検査から、隠れ心房細動を発見する手法を研究してきました。その成果をもとに、静岡市・清水医師会・東京医科歯科大学の共同事業としてSPAFSを開始しています。清水医師会健診センターで健康診断を受ける方の中で研究参加を希望された方に、通常の12誘導心電図検査を受けて頂き、AI解析によって非発作時の心電図から隠れ心房細動の有無を予測します。続いてリストバンド型脈波センサーや1チャンネル(1Ch)心電図モニターといったウェアラブル機器を用いて脈拍や心拍の遠隔モニタリングを行い、AIによる自動検出を用いて心房細動を発見します。心房細動が発見されれば、治療の必要性を評価して脳梗塞予防の治療を行います(SPAFS概要図参照)

 SPAFS事業は2022年1月より本格運用を開始しました。まず2021年7月に開催した公開市民講座を聴講し参加ご希望を頂いた14名の方、続いて清水医師会健診センターで健診を受けた中でご協力頂いた69名の方に本研究に参加して頂きました(2022年3月31日時点)。その結果、3名の方において、今まで未診断だった隠れ心房細動を発見し、脳梗塞予防の治療を開始することができました。
 なお、本プロジェクトにおける12誘導心電図検査のAI解析は、東京医科歯科大学とフクダ電子株式会社(白井大治郎社長)・理化学研究所革新知能統合研究センター(浅田健研究員)・国立がん研究センター研究所(浜本隆二分野長)の共同研究として行っています。また、リストバンド型脈波センサーによる心房細動検出は、東京医科歯科大学とTDK株式会社(社長執行役員・齋藤昇)・株式会社トーカイ(小野木孝二社長)の共同研究として行っています。さらに、1Ch心電図モニターによる隠れ心房細動検出は、東京医科歯科大学と株式会社ZAIKEN(開発本部長・岡庭貴志)の共同研究として行っています。また、本研究の一部はAMED(日本医療研究開発機構)の支援を受けて行われました*1。
 2022年度も本プロジェクトは継続しており、清水医師会健診センターで健診をお受けになる静岡市民の方を中心に研究への参加をお願いしております。未診断の心房細動を早期発見して脳梗塞予防の先制医療を行うため、研究参加をご希望の方は清水医師会健診センターに御連絡ください。

*1 医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業 基盤技術開発プロジェクト「インテリジェント心房細動予防・検出インフラの構築」
 

問い合わせ先

<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 循環制御内科学教授 笹野哲郎
E-mail:sasano.cvm[@]tmd.ac.jp

<研究参加に関すること>
清水医師会健診センター
〒424-0053 静岡市清水区渋川2-12-1
TEL:054-348-0515 FAX:054-348-7734

<自治体としての取組に関すること>
静岡市保健福祉長寿局保健衛生医療部保健衛生医療課
〒420‐8602 静岡市葵区追手町5‐1
TEL:054‐221-1339 FAX:054-221-1162
    
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp

※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。

プレス通知資料PDF

  • 「AI及びリモートテクノロジーを用いた心房細動の早期発見により清水区を脳梗塞の少ないまちにする地域医療プロジェクト(略称SPAFS)」