「 ヘテロ核酸による活性化ミクログリア・中枢神経浸潤マクロファージの制御 」【横田隆徳 教授、永田哲也 プロジェクト准教授】
― 多発性硬化症の新規治療薬開発へ期待 ―
研究成果のポイント
- 研究グループがこれまでに独自に開発した核酸医薬である「DNA/RNAヘテロ2本鎖核酸 (HDO)」を用い、従来困難であった非侵襲性投与ルート(全身投与)からの活性化ミクログリア・中枢神経浸潤マクロファージの内在性遺伝子制御を達成しました。
- ヘテロ核酸には、従来のアンチセンス核酸※1とは異なる特有の送達機構がある事を示しました。
- 多発性硬化症動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウス※2に、CD40※3遺伝子を標的としたヘテロ核酸を全身投与し、表現型の改善を認めました。
- ヘテロ核酸は多発性硬化症の新規治療法を開拓する医薬技術として期待できます。
概要
研究背景
研究の概要
研究成果の意義
用語解説
※1 アンチセンス核酸(ASO)
細胞内に存在する RNA等を標的とする核酸医薬で、1本のDNA鎖を基本構造として様々な化学修飾が施されている。既存の低分子医薬や抗体医薬では標的にできない細胞内のRNAを標的として結合することが可能で、標的RNAから翻訳される疾患に関わるタンパク質を一過性に低下、機能を抑制したり、発現上昇させたりと、これまで治療法のなかった疾患の治療薬の主流となりつつある。主な国内での承認薬としては、脊髄性筋萎縮症に対するヌシネルセン、家族性ポリアミロイドニューロパチーに対するイノテルセン、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するビルトラルセンなどがあり、現在も複数の臨床試験が進行中である。
※2 実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウス
多発性硬化症は、リンパ球などの白血球が中枢神経系へ移行して髄鞘が破壊される脱髄により、脳・脊髄といった中枢神経系が障害される炎症性疾患で、その症状は視覚障害、高次機能障害や四肢の麻痺など多彩である。EAEマウスは多発性硬化症の動物モデルで、神経由来のペプチドとフロイントアジュバントを免疫することで神経炎症と脱髄が誘発される。
※3 CD40(cluster of differentiation 40)
抗原提示細胞表面に発現する共刺激分子の一つであり、多発性硬化症の病変部ではミクログリアやマクロファージに多く発現する。病原性T細胞表面のCD40リガンド(CD40L)と作用し、T細胞の活性化に必要な共刺激分子の発現や炎症誘発性因子の産生を促進する。ミクログリアやマクロファージのCD40を欠損させるとEAEマウスが軽症化することが知られている。
※4マクロファージスカベンジャーレセプター1(MSR1)
スカベンジャー受容体の一つであり、コレステロールを含む様々な分子を認識する。中枢神経系において主にミクログリアとマクロファージに発現し、多発性硬化症の病変部で発現が増加することが報告されている。
論文情報
掲載誌:Molecular Therapy
論文タイトル:Regulation of activated microglia and macrophages by systemically administered DNA/RNA heteroduplex oligonucleotides
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ymthe.2022.02.019
研究者プロフィール
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
脳神経病態学分野(脳神経内科) 大学院生
・研究領域:神経内科学、核酸医薬
慶應義塾大学医学部 微生物学免疫学教室
特任助教
・研究領域:神経内科学、神経免疫学
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
脳神経病態学分野(脳神経内科) プロジェクト准教授
・研究領域:神経内科学、核酸医薬
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
脳神経病態学分野(脳神経内科) 教授
・研究領域:神経内科学、核酸医薬
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
脳神経病態学分野
横田 隆徳 (ヨコタ タカノリ)
永田 哲也 (ナガタ テツヤ)
E-mail: tak-yokota.nuro[@]tmd.ac.jp t-naga.nuro[@]tmd.ac.jp
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創薬事業部 医薬品研究開発課 先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業担当
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