東京医科歯科大学血管内治療科は、脳梗塞やくも膜下出血などの脳の血管の病気に対し、頭を直接開ける手術ではなく、より患者さんの負担が少ない、カテーテルを用いた血管内治療を専門に行う診療科です。
 
脳にある動脈瘤が破裂することで起こるくも膜下出血という病気に対しても、カテーテルを用いた血管内治療を積極的に行っています。日本では1年に1万人以上の方がくも膜下出血により亡くなっています（厚生労働省 人口動態統計より）。また、患者さんの命を助けるための手術で血の塊「血栓」ができてしまい後遺症が残る可能性があるなど、重要な合併症のリスクも考えられます。

破裂した脳動脈瘤のカテーテル治療がうまくいっても、手術中や術後に血栓ができてしまうことで血管が詰まり大きな脳梗塞につながることもあります。それによって患者さんが寝たきりになってしまうという不幸なできごとを今までに何度も経験しています。
しかし血栓は、コントロールすることが難しく防ぎようのないトラブルです。この血栓によるトラブルをできるだけ少なくすることが、カテーテル治療における大きな課題と考え、今回のプロジェクトでは、血栓によるトラブルを防ぐため、血液をサラサラにする「抗血小板剤（アスピリン）」をカテーテル手術の前に投与することで、くも膜下出血の患者さんの血栓によるトラブルをどこまで防ぐことができるかを科学的に調べる臨床研究にチャレンジします。
 

・プロジェクトタイトル：「くも膜下出血の手術中に起こる合併症「血栓」を防ぐため臨床研究実施を」
・ページURL：https://readyfor.jp/projects/ASTOP
・実行者    ：東京医科歯科大学血管内治療科　壽美田一貴 / 平井作京
・目標金額    ：第一目標金額500万円、最終目標金額1,000万円
・形式    ：寄付金控除型／All in 方式
* All in方式は、目標金額の達成の有無にかかわらず実行者が寄付金を受け取れる仕組みです。
・公開期間    ：2022年3月1日（火）10時～2022年5月30日（月）23時
・資金使途    ：臨床研究で使用する薬剤費用、薬剤配送費用、参加医師の登録にかかる経費、臨床研究の保険費用、画像読影にかかる費用など 
・実施背景    ： 
くも膜下出血の治療中の合併症の一つに、カテーテル治療の手術中にできてしまう血栓があります。ヒトの体に、カテーテルやコイルなどの、いわゆる“異物”をいれておくと、血液の塊である「血栓」ができてしまうことがあります。とくにくも膜下出血の患者さんは、全身の血液が固まりやすい状態になっているので、血栓ができやすくなります。1, 2）手術を行うくも膜下出血の患者さんのうち、13.3％が血栓塞栓性合併症を発生し、そのうち4.2％が重度であったと報告されています。3）
今回のプロジェクトでは、術前に抗血小板剤の投与をすることでくも膜下出血の患者さんの血栓のトラブルをどこまで防ぐことができるかを科学的に調べる臨床研究を行います。


1）Fujii Y, Takeuchi S, Sasaki O, Minakawa T, Koike T, Tanaka R. Hemostasis in spontaneous subarachnoid hemorrhage. Neurosurgery. 1995 Aug;37(2):226-34. 
2）Juvela S, Siironen J. D-dimer as an independent predictor for poor outcome after aneurysmal subarachnoid hemorrhage. Stroke. 2006 Jun;37(6):1451-6.
3）Cognard C, Pierot L, Anxionnat R, Ricolfi F; Clarity Study Group. Results of embolization used as the first treatment choice in a consecutive nonselected population of ruptured aneurysms: clinical results of the Clarity GDC study. Neurosurgery. 2011 Oct;69(4):837-41; discussion 842.