「COVID-19による保育所閉鎖が日本の未就学児における 非認知スキル(社会情動的スキル)に与える影響」【藤原武男 教授】
「 COVID-19による保育所閉鎖が日本の未就学児における
非認知スキル(社会情動的スキル)に与える影響 」
ポイント
- COVID-19拡大前と比べて、第1波中の保育園児の非認知スキル(社会情動的スキル)は、下がる傾向にあることがわかりました。
- 一方、園行事を中止しなかった保育園児の社会情動的スキルは、COVID-19拡大前より伸びている傾向にあることが明らかになりました。
- 園行事を行うことが、子どもの育ちに重要であることが示唆され、コロナ禍でも感染対策に十分注意しながら実施することが望ましいことがわかりました。
研究の背景
研究成果の概要
その結果、発表会を実施した園の子どもは、COVID-19拡大前から第1波中まで、社会情動的スキル得点が安定していたことがわかりました。一方で、発表会を中止した園の子どもは、COVID-19前と比べて第1波中の社会情動的スキル得点は低くなっていました。下図は、社会的情動スキル得点の変化を保育所ごとに表したものです。発表会を中止した保育所(園1、園2)は、COVID-19拡大前の2019年11月から2020年1月では社会情動的スキル得点は低下していませんが、2020年1月からCOVID-19第1波中の2020年3月では社会情動的スキル得点が低下していることがわかります。発表会をCOVID-19第1波中に実施した保育所(園3)はCOVID-19拡大前の2019年11月からCOVID-19第1波中の2020年3月まで、社会情動的スキル得点は上昇傾向にあることがわかります。
研究成果の意義
保育所での発表会といった園行事は、コミュニケーションスキル、子ども自身の感情をコントロールするスキル、問題解決をするスキルなど、子どもの社会情動的スキルに関連するスキルを発達させる重要な機会であることがわかっています。もちろんCOVID-19の感染から子どもたちを守ることも重要ですが、COVID-19拡大が長期化している現在では、COVID-19拡大による子どもの育ちへの長期的影響を検証していく必要があります。この論文から、コロナ禍でも感染対策に十分注意しながら園行事を行うことが子どもの育ちに重要であることを示唆していると考えられます。今後、COVID-19拡大時において園行事を実施するか、中止するかの判断に、この論文の結果が役立つことが期待されます。
用語解説
※1非認知スキル(社会情動的スキル):感情を管理する能力、長期的目標の達成、他者との協働の3つの側面に関する思考、感情、行動のパターンであり、学習を通して発達するもの。
論文情報
掲載誌:Frontiers in Psychiatry
論文タイトル:Impact of school closure due to COVID-19 on the social-emotional skills of Japanese preschool children
DOI:https://doi.org/10.3389/fpsyt.2021.739985
研究者プロフィール
藤原 武男 (フジワラ タケオ) Fujiwara Takeo
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野 教授
・研究領域
公衆衛生学、疫学(社会疫学、ライフコース疫学)
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野分野
日本学術振興会 特別研究員PD
・研究領域
臨床心理学、母子保健
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
国際健康推進医学分野 藤原武男(フジワラタケオ)
土井理美(ドイサトミ)
E-mail:doi.hlth[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
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