プレスリリース

「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(RNA標的創薬技術開発)」【横田隆徳 教授】

公開日:2021.10.25
「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(RNA標的創薬技術開発)」
革新的次世代核酸医薬の開発について

要旨

 東京医科歯科大学(研究開発代表者 横田隆徳教授)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)と、「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(RNA標的創薬技術開発)」に関わる委託研究開発契約を締結しました。本事業は東京理科大学の和田猛教授を総代表研究者として、東京医科歯科大学、千葉工業大学の3つの代表研究機関からなる複合型の大型研究プロジェクトとなっており、研究課題名「革新的次世代核酸医薬」の英語名「Innovative Next Generation of Oligonucleotide Therapeutics」の頭文字をとり、「INGOTプロジェクト」と呼称しています。
 本プロジェクトでは、従来の核酸医薬よりも優れた⽣体内安定性と有効性を⽰し、かつ副作⽤が低減された新規の人工核酸や化学修飾を有する革新的次世代核酸医薬の製造・精製・分析技術を総合的に開発し、その産業化を確立することにより高性能で安全な核酸医薬を患者さんに届けることを目指します。
 本プロジェクトの研究課題のひとつである「キラリティ制御ボラノホスフェート核酸の合成と安全性評価」に関しては、東京医科歯科大学は代表研究機関として、レナセラピューティクス、日本触媒、東京理科大学は分担機関として、核酸のリン原子の立体化学(キラリティ)が最適に制御されたボラノホスフェートアンチセンス核酸(PB-ASO)の開発を行います。さらに、PB-ASOの実用化に向けた大量合成法や安全性の確立を目指します。

【研究の背景とプロジェクトの体制】

 核酸医薬1)は、疾病に関連するDNA、RNAおよびタンパク質を標的とし、従来の医薬品では治療できなかった疾病にも有効な治療薬を生み出せることから、近年世界的に開発が進められています。核酸医薬は、作用機序が明確で副作用も少ないという特徴がありますが、生体内での安定性やデリバリー技術の確立、コストの高騰など解決すべき課題も多く残されています。
 INGOTプロジェクトを行うにあたり、和田猛教授(東京理科大学)を総代表研究者として、横田隆徳教授(東京医科歯科大学)、坂本泰一教授(千葉工業大学)などのアカデミアグループと、一般財団法人バイオインダストリー協会に加え、6つの関連企業を含めた全11機関の産官学連携による共同研究連合体を形成し、産業化の実現性の高い研究実施体制を構築している点が本プロジェクトの大きな特徴となっています。
 

【研究概要と分担】

 INGOTプロジェクトの中核事業として、東京医科歯科大学は、原倫太朗プロジェクト講師を中心として、東京医科歯科大学発のバイオベンチャー企業であるレナセラピューティクス株式会社(代表取締役社長:登利屋修一)とその親会社である株式会社日本触媒(代表取締役社長:五嶋祐治朗)、および東京理科大学を分担研究機関として、リン原子の立体化学(キラリティ)が最適に制御されたボラノホスフェートアンチセンス核酸(PB-ASO)2),3) の化学合成技術の開発に取り組みます。さらにその生物学的な特性の評価を行い、大量合成法を確立して、医学的な応用研究に発展させます。
 リン原子修飾核酸は、通常多くの立体異性体の混合物として化学合成されますが、立体異性体の制御技術の確立により医薬品としての有効性や安全性が向上されます。従来の全てのアンチセンス核酸医薬に用いられているホスホロチオエートアンチセンス核酸(PS-ASO)はその立体制御研究が急速に進行していますが4)、立体制御PB-ASOはPS-ASOを凌駕する次世代の新規核酸医薬として期待されています。
 

【今後の展望】

 本プロジェクトで革新的次世代核酸医薬が創製されれば、核酸医薬の毒性の軽減と飛躍的な活性の向上が期待できます。また、革新的製造・分析技術が開発されることにより、核酸医薬の生産コストの削減、安全性や品質管理の改善が可能となり、核酸医薬の産業化に大きく貢献することが期待されます。

【関連リンク】

令和3年度 「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(RNA標的創薬技術開発)」の採択課題について
・リンク先:https://www.amed.go.jp/koubo/11/01/1101C_00004.html
 
用語
 1.核酸医薬:化学合成されたDNAやRNA誘導体からなる医薬
 2.アンチセンス核酸(ASO):生体内のRNAに結合してタンパク質の合成などを制御する核酸医薬
 3.ボラノホスフェートアンチセンス核酸(PB-ASO):リン原子にホウ素原子が結合した人工核酸で構成されるアンチセンス核酸 
 4.ホスホロチオエートアンチセンス核酸(PS-ASO):リン原子に硫黄原子が結合した人工核酸で構成されるアンチセンス核酸
 
【本研究内容に関するお問合せ先】

■国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 
 教授 横田隆徳
   Tel: 03-5803-5234
  e-mail:tak-yokota.nuro@tmd.ac.jp


【報道に関するお問合せ先】

■国立大学法人東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
  〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
 Tel: 03-5803-5833
 e-mail:kouhou.adm@tmd.ac.jp
 

プレス通知資料全文

  • 「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(RNA標的創薬技術開発)」