プレスリリース

「細胞-細胞間結合を強くする超分子バイオマテリアルの開発」【由井伸彦 教授】

公開日:2021.10.05
「細胞-細胞間結合を強くする超分子バイオマテリアルの開発」
―ポリロタキサンの分子可動性を活用した上皮組織修復に期待―

ポイント

  • 超分子ポリロタキサンを被膜した細胞培養表面を作製し、ポリロタキサンの分子可動性が上皮細胞内における転写共役因子の局在に影響を与えることを明らかにしました。
  • これをもとにして、ポリロタキサン表面の分子可動性調節による上皮細胞間接着の亢進に成功しました。
  • 本研究で作製したポリロタキサン表面により、損傷した上皮組織を細胞間接着の亢進によって修復する応用が期待されます。
 東京医科歯科大学生体材料工学研究所有機生体材料学分野の有坂慶紀助教・由井伸彦教授と、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野の三神亮大学院生・岩田隆紀教授の研究グループは、上皮細胞※1の細胞-細胞間接着の亢進に有用なバイオマテリアル表面を設計しました。これまでに多数の環状分子の空洞部を直鎖状の高分子鎖が貫通したインターロックト構造の超分子ポリロタキサン※2を基盤とした細胞接着器材を開発しており、この環状分子の動きやすさ(分子可動性)を調節することによって様々な細胞種の機能が規定できることを明らかにしています。本研究では、上皮細胞の細胞間接着におけるポリロタキサン表面の分子可動性の効果を明らかにしました。上皮細胞はポリロタキサン表面の分子可動性を認識し、転写共役因子の細胞内局在が変化していました。特に分子可動性の高い表面は接着した細胞における転写共役因子Yes-associated protein(YAP)※3の細胞質局在の促進に伴って細胞間接着関連遺伝子の発現を増加させ、細胞-細胞間の接着を亢進しました。この研究は文部科学省科学研究費補助金の支援のもとに行われたもので、その研究成果は国際科学誌Biomaterials Science(バイオマテリアルズ サイエンス)に2021年10月4日にオンライン版で発表されました。

プレス通知資料全文

  • 「細胞-細胞間結合を強くする超分子バイオマテリアルの開発」
  • 論文情報

    掲載誌:Biomaterials Science
    論文タイトル:Improved Epithelial Cell-Cell Adhesion Using Molecular Mobility of Supramolecular Surfaces
    DOI: 10.1039/D1BM01356D