プレスリリース

「β-catenin活性化型肝がんの免疫回避機構を解明」【田中真二 教授、島田周 助教】

公開日:2021.08.24
「 β-catenin活性化型肝がんの免疫回避機構を解明 」
― 新規多重ゲノム編集技術を用いて内在性β-catenin活性化を実現 ―

ポイント

  • CTNNB1(β-catenin)活性化型変異は肝がんの約30%の症例で認められ、β-catenin 活性化型肝がんの微小環境内では腫瘍免疫が抑制されていることが知られています。しかし、そのメカニズムは十分には解明されていません。
  • 研究グループは、新規開発したCRISPR/Cas9 システム※1を基盤とする多重ゲノム編集技術を用いて、β-catenin のエクソン3※2をスキップすることで内在性β-catenin を活性化させた肝がん細胞を作製し ました。β-catenin 活性化型肝がん細胞では、CCL20 やCXCL2 などのサイトカイン※3の発現低下が認められ、免疫監視の回避に寄与している可能性が示唆されました。
  • 近年、がん免疫療法の有効性が注目されていますが、その代表である免疫チェックポイント阻害剤※4はβ-catenin 活性化型肝がんには無効であるという報告があります。本研究はβ-catenin 変異肝がんに対する新規がん免疫療法の開発への一助となります。
 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子腫瘍医学分野の田中真二教授、島田周助教、新部彩乃助教、下川雅弘非常勤講師、秋山好光講師、赤須雅文大学院生の研究グループは、ウイルス制御学の山岡昇司教授、肝胆膵外科学の田邉稔教授との共同研究で、新規多重ゲノム編集技術を用いてβ-catenin 活性化型肝がんの免疫監視の回避機構を解明しました。この研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん医療創生研究事業(P-CREATE)、肝炎等克服緊急対策研究事業、文部科学省科学研究費補助金、高松宮妃癌研究基金研究助成金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)に、2021 年8 月24 日にオンライン版で発表されました。

プレス通知資料全文

  • 「β-catenin活性化型肝がんの免疫回避機構を解明」
  • 論文情報

    掲載誌: Scientific Reports
    論文タイトル:Intrinsic activation of β-catenin signaling by CRISPR/Cas9-mediated exon skipping contributes
    to immune evasion in hepatocellular carcinoma
    DOIhttps://doi.org/10.1038/s41598-021-96167-0