「近視の子供が将来病的近視により失明するリスクがあるかどうか眼底検査で診断できる」【大野京子 教授】

「近視の子供が将来病的近視により失明するリスクがあるかどうか眼底検査で診断できる」【大野京子 教授】

―学童近視の中で、眼鏡で良好な矯正視力を保てるタイプと将来病的近視で失明し得るタイプを鑑別―

大野 京子(オオノ キョウコ)教授 大学院医歯学総合研究科眼科学分野 (右)
横井 多恵(ヨコイ タエ)助教 同上 (左)

成人以降に病的近視による失明を来す患者では、小児期に、すでに通常の学童近視と異なる特徴的な眼底所見(視神経周囲びまん性萎縮)がみられることを突き止めました。
この所見により、病的近視による失明のリスクがある小児を早期に同定し、失明回避に向けた集中ケアが可能となります。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野の大野京子教授と横井多恵助教の研究グループは、主要な失明原因である病的近視を発症した患者では、小児期において、通常の学童近視と異なる特徴的な眼底所見を示すことをつきとめました。この研究は文部科学省科学研究費補助金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Ophthalmology (オフサルモロジー)に、2016年5月26日にオンライン版で発表されました。

研究の背景

病的近視では、眼球がいびつに変形することにより、網膜や視神経を障害され失明を来します。日本の疫学研究(多治見スタディ)でも、病的近視は失明原因の20%を占め最多です。
近年世界的に、特にわが国を含む東アジア諸国で学童及び若年の近視の頻度が急激に増加し、社会問題となっています。しかし、学童や若年において、近視の程度が進むと、将来、失明原因となる病的近視にまで至るのか、それともメガネなどを装用すれば、一生良好な矯正視力を維持できるのかは不明でした。

正常の小児の眼底写真

病的近視になる小児には視神経周囲
びまん性萎縮(→)がある

研究成果の概要

東京医科歯科大学眼科には、登録患者約4000名を擁する世界最大の強度近視専門外来があります。申請者らは、実際に成人以降に病的近視による失明をきたした患者において、小児期の眼底所見を後方視的に検討し、将来の病的近視発症を予測する小児期の特徴的な眼底所見を調べました。強度近視外来通院中の病的近視による視覚障害患者のうち、1) 初診時年齢15歳以下、2) 経過観察期間20年以上、を満たす35眼について調べたところ、成人以降に病的近視を発症した患者の83%では、小児期にすでに視神経周囲にびまん性萎縮病変がみられ、眼底所見が通常の学童近視と異なることを突き止めました。
以上の成果は、将来病的近視による失明に至る患者では、すでに小児期において一般の学童近視と異なる眼底所見の特徴を示し、「視神経周囲のびまん性萎縮」が将来の病的近視発症を予測する重要なサインであることを解明したものです。

研究成果の意義

本研究成果により、将来病的近視による失明を起こしうるハイリスク小児と、眼鏡矯正などを行えば良好な視力を維持できる通常の学童近視とを、早期に鑑別することが可能となります。
通常の学童近視に対しては、失明に対する過度な不安を取り除く指導ができるとともに、将来病的近視発症のハイリスクがある小児については、これらの小児を早期に的確に診断し、病的近視への進行を抑制する予防的介入を選択的に行うことが可能となります。

問い合わせ先

研究に関すること

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
眼科学分野 氏名 大野京子(オオノキョウコ)
      氏名 横井多恵(ヨコイタエ)
TEL:03-5803-5302 FAX:03-3818-7188
E-mail:k.ohno.oph(ここに@を入れてください).tmd.ac.jp

報道に関すること

東京医科歯科大学 広報部広報課
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
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