研究紹介・リンク
研究プロジェクト~グローバルリサーチを目指して~
1. シェーグレン症候群の病態解明に関する研究
私たちの体の中では、絶えず細菌やウイルスなどの外来の病原体を排除する免疫システムが正確に作動しています。免疫システムは決して自分自身の組織や細胞を攻撃することは無いはずなのですが、様々な原因で免疫システムの機能異常が生じると、自身の体を自身の免疫システムによって攻撃してしまう「自己免疫疾患」が発症します。ドライアイ、ドライマウスを主な症状とするシェーグレン症候群は涙腺や唾液腺などの外分泌腺を標的とする全身性自己免疫疾患です。私どもの研究室では シェーグレン症候群の疾患モデルを中心として、その病態機序に関して多角的なアプローチで研究を進めています。病因に基づいた新たな診断法や治療法を開発 することで、免疫難病に苦しむ世界中の多くの患者様が少しでも健康を取り戻すお手伝いができればと願っております。
2. 自己免疫疾患におけるT細胞シグナルに関する研究
免疫システムにおける自己、非自己の認識はT細胞が主役を担っています。骨髄由来のT細胞前駆体は胸腺において非自己にのみ反応するような教育を受けることによって、正常なT細胞が中心となって私たちの末梢の免疫システムを維持しています。末梢のT細胞に様々な刺激が伝わり、多様なシグナルカスケードが作動することによって、T 細胞を中心とした免疫反応が引き起こされます。T細胞の複雑なシグナルに少しでも異常が生じると、正常な免疫反応を維持することができなくなります。私どもの研究室ではT 細胞における様々な受容体分子、シグナル分子、転写因子などの発現や機能に異常が生じることによって発症する自己免疫疾患の病態機序を解明しようとし ています。T細胞を標的とした新たな治療薬の開発が期待されています。
3. 自己免疫疾患におけるマクロファージの役割に関する研究
免疫システムは自然免疫と獲得免疫の相互作用によって維持されている。自己免疫疾患の発症にはT細胞あるいはB細胞の役割が重要視されてきたが、マクロファージなどの自然免疫系の病態への関与が近年報告されてきました。シェーグレン症候群の標的臓器においてもマクロファージが病態の発症に重要な役割を果たしていることが明らかにされてきました。
4. 自己免疫疾患における性差のメカニズムに関する研究
シェーグレン症候群や関節リウマチなど多くの自己免疫疾患は閉経期以降の女性に発症することが知られています。生体のホルモン環境が大きく変化する 時期に、免疫システムに何らかの異常が生じることによって自己免疫疾患がこの時期に発症するものと考えられてきましたが、詳細な分子機序に関してはよく分かっていませんでした。最近の私どもの研究によって性ホルモンと標的臓器の関係が少しずつ解明されてきましたが、まだまだ性差の謎は不明な点が多いのが現状です。あらゆる角度から自己免疫疾患における発症の性差のメカニズムを探求することによって、女性の健康維持機構を明らかにすることができます。
5. 腫瘍免疫に関する研究
腫瘍の発生、進展には腫瘍間質における免疫系との関係が重要視されています。腫瘍免疫の実態を解明することが新たな癌治療の展開につながるものと考えられています。口腔がんにおける腫瘍免疫の詳細な分子機序は未だ不明のままです。我々は、がんモデル、臨床サンプルなどを用いて多角的な側面からアプローチしています。
6. 免疫系におけるナノマテリアルおよび環境ホルモンの影響に関する研究
免疫システムは様々な外的因子によって大きく影響を受けることが知られています。ナノマテリアルや環境ホルモンの暴露によって、免疫系がどのように反応し、免疫疾患にどのように影響するのかは十分に理解されていません。各臓器での外的因子に対する免疫反応の分子機序を知ることが、現代人の健康維持機構を理解することにつながるものと考えられます。