高等研究院の烏山一特別栄誉教授が「野口英世記念医学賞」を受賞しました

本学、高等研究院の烏山一特別栄誉教授が令和5年度第66回野口英世記念医学賞を受賞しました。この賞は野口英世博士の遺徳偉業を顕彰するために昭和3年に設立された公益財団法人野口英世記念会の記念事業のひとつとして設けられたものです。受賞式は、本年11月11日(土)に野口英世至誠館(猪苗代町)にて執り行われました。

医学賞授与

烏山一博士受賞記念講演

ガーナ大使、八子野口英世館館長と烏山博士ご夫妻

授賞式会場

田中学長と烏山一特別栄誉教授

野口英世記念医学賞

野口英世記念医学賞は、野口英世が生前行った研究に関係の深い優秀な医学研究に対して、その功績を讃えて表彰するものである。

受賞研究課題概要

希少血球細胞である好塩基球の生体内での存在意義と
病態形成における役割解明
受賞者 医学博士 烏山 一

 好塩基球は、今から140年以上も前にドイツの細菌学・免疫学者パウル・エールリッヒによって発見された血球細胞です。この細胞は末梢血白血球のわずか0.5%を占めるに過ぎず、また末梢組織中に常在する肥満細胞といくつもの類似点があるため、血中を循環する肥満細胞の前駆細胞であると誤解され、長い間免疫学的研究の対象とはなりませんでした。そのような状況の中、烏山博士は世界に先駆けて最先端の好塩基球解析ツールを開発し、これまで謎とされてきた生体内での好塩基球の存在意義と病態形成における役割を次々と明らかにしてきました。まず、独自に開発した遺伝子改変アレルギーモデルマウスの解析を通じて、肥満細胞とは明らかに異なる好塩基球のユニークな役割を発見しました。それを起点にして、好塩基球がアトピー性皮膚炎や全身性アナフィラキシーなどのアレルギー病態をひきおこす「悪玉細胞」として機能する一方で、本来の「善玉細胞」としての機能を発揮してマダニや消化管蠕虫などの寄生虫感染に対する生体防御ならびに炎症反応鎮静化に重要な働きをしていることを突き止めました。さらに研究を発展させ、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)や急性呼吸促迫症候群 (ARDS)、自己免疫疾患などアレルギー以外の病態形成にも好塩基球が関与しているという予想外の研究成果を次々に発表して、好塩基球研究の新たなパラダイムを創出しました。それにより世界中の免疫・感染症・アレルギー研究者が好塩基球に注目するようになり、これまで停滞していた好塩基球研究が一気に花開きました。
このように烏山博士の業績は、基礎免疫学の進歩に多大な貢献を果たすと共に、開発途上地域における寄生虫感染症ならびに先進諸国におけるアレルギー疾患をはじめとする難治疾患の克服につながる社会的にも有意義なものであり、野口英世記念医学賞に相応しい独創的な研究成果であります。

第66回野口英世記念医学賞受賞者略歴

医学博士 烏山 一  (1954年1月3日生)

所属
 東京医科歯科大学 高等研究院
 電話 03-5803-4609  FAX 03-5803-4609
 電子メール karasuyama.mbch@tmd.ac.jp

略歴
 1978年   東京医科歯科大学医学部卒業
 1978-1980    筑波大学医学専門学群付属病院医員(研修医)
 1980-1984    東京大学大学院医学系研究科博士課程 医学博士1984         
 1984-1987    スイス・バーゼル免疫学研究所研究員
 1987-1990    東京大学助手(医学部免疫学教室)
 1990-1995    スイス・バーゼル免疫学研究所研究員
 1995-2000    東京都臨床医学総合研究所免疫研究部・部門長
 2000-2019  東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科
        免疫アレルギー学分野 教授
 2008-2014    東京医科歯科大学 副理事
 2014-2020    東京医科歯科大学 理事・副学長
 2019-   東京医科歯科大学 高等研究院 卓越研究部門 特別栄誉教授

受賞歴
 1996年 持田記念医学薬学振興財団学術奨励賞
 1997年 上原記念生命科学財団研究助成
 1998年 東京都職員表彰(学術) 
 2008年 武田科学振興財団生命科学研究助成
 2008年 三菱財団自然科学研究助成
 2009年 上原記念生命科学財団研究助成
 2009年 内藤記念科学振興財団研究助成
 2014年 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 研究部門

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