不整脈センターのご紹介

不整脈センターのご紹介

はじめに
不整脈センターは、不整脈の患者さんに対して高度先進技術を駆使して不整脈を治癒、不整脈による症状緩和、生命予後の改善、心不全の改善、生活の質の改善をもたらすことを目的として平成23年2月に医学部附属病院に新設されました。

不整脈センターについて

本センターは、不整脈で苦しむ患者さんの中で薬が効かない、効果が不十分、生命の危機がある場合に、<カテーテル治療>や<植込み型デバイス治療>などの治療をより専門的、より効率的におこなうためのものです。そのために、附属病院の循環器内科を中心に、小児科、心臓血管外科の3つの診療科の不整脈診療の専門家がセンターのスタッフとして協力して診療にあたります。

カテーテル治療

不整脈に対しては長い間、薬物療法とペースメーカー植え込み術のみが主たる治療法でありました。1990年代に入ってから、脈が異常に早くなる頻脈に対して心臓の特定の部分にカテーテルを介して熱を加えることにより頻脈を根治する治療法(=カテーテル焼灼術)が確立されました。これによって国内外で頻脈に苦しむ多くの患者さんの不整脈の根治治療がなされてきました。1990年後半になりますと、それまで治療できなかった心房細動を治癒させる画期的なアブレーション方法がフランスの施設等で開発されました。その後日本には2000年はじめからその方法が導入され、先進器機を用いることにより治療成績が向上し、実施数が毎年10-20%という高い割合で増加しております。国内に100万人以上という最も患者数の多い心房細動が、カテーテル焼灼術で治療可能となった訳ですが、高度の技術と多くの経験を要する治療法であることより実施可能な施設は限られます。当院では2001年より着手し、この数年の心房細動アブレーションは年間約100件、特に大きな合併症なく診療をおこなってきました。心房細動以外にもWPW症候群、上室頻拍、心室頻拍など多種の頻脈がありますが,それらに対しても年間約100件実施しております。カテーテルアブレーションが困難な不整脈の患者さんには、開胸手術療法を含めた治療法も実施します。

植込み型デバイス治療

もともと脈が異常に遅くなった場合に、心臓を一定数で電気刺激をして脈拍を正常化する植込み型ペースメーカーが、最初の生命維持の植込み型デバイスです。この他に比較的新しく開発された植込み型デバイスが2つあり、それぞれ心室細動、心不全の治療に威力を発揮します。心室細動や心室頻拍と呼ばれる異常に脈が速くなる病気では、心臓の拍動異常によって血液が全身に送る能力が著しく阻害されます。そのためにショック状態に陥り、10分以内に死に至る恐れのある危険な不整脈です。ペースメーカーに似た器機(植込み型除細動器といいいます)をそのような不整脈をもつ患者さん(あるいはその危険性の高い患者さん)の皮下に植込むと、その後心室細動などが発生した時に自動的に電気ショックなどの治療がなされます。
 もう一つは、脚ブロックという不整脈をもつ心不全のある患者さんに対して、心室の左右の2箇所から刺激を与える(両室ペーシングといいます)ことによって、脚ブロックが原因の心室収縮のズレを改善することで心臓の収縮力を高める心臓再同期療法です。心臓の収縮力の低下を改善することによって、息切れや疲労感などの心不全症状が軽減可能です。また、植込み型除細動機能を併せ持つ器機を植込めば、心不全からくる心室細動による突然死の予防も可能です。

不整脈センター長 挨拶

平成23年2月に新設されましたセンターのセンター長としてご挨拶を申し上げます。
 1990年初頭から新しい治療法が登場して不整脈の治療は大きく変化しました。第1は、不整脈(脈が速くなる頻脈)の原因となる心臓のごく一部を加熱することによって頻脈を治してしまうカテーテル心筋焼灼術の登場です。海外はもとより国内の主要施設で実施され、現在の不整脈非薬物治療の根幹をなすに至っております。今後、日本においても心房細動の症例のアブレーション数の大きな増加が予想されています。第2は、突然死の原因である心室細動に対して体内植込み型救命的治療器機が開発されたことです。植込み型除細動器は日本では1996年に保険適用化されました。第3は心不全治療用ペースメーカー(心臓再同期治療)です。左右の心室を同時にペーシングすることにより、心拍出量を増加させる治療法です。日本では2004年に保険適用になりました。これらの植込み型デバイスの全体の植込み数は、海外に比べてまだ多くはありませんが、増加率が著しくその有用性が注目されています。
 このように不整脈(と心不全)を薬以外で治療する対象患者数が著増した結果、これらの治療に特化した専門医師を集中させ、不整脈解析装置など最新器機をそろえてセンター化し、より大規模かつ効率的な医療をめざすことになった訳です。欧米ではすでに不整脈センターを併設している大学病院が少なくありませんが、国内ではその数は未だ少ないのが実情です。
 本学では不整脈の臨床・研究の長い伝統を背景に、都内大学附属病院の不整脈診療では有数の患者数・診療実績を得てきました。不整脈センター新設は心房細動のようにますます増加していく不整脈患者さんの数が増加していく時代の要請であり、また社会・地域の要請であると考えております。
 本センターにおきましては患者さんの生命を救い、症状を消失(あるいは軽減)させることによってより質の高い生活が送れます様、スタッフ一同患者さん一人一人に対して治療効果が高く安全で、専門的な不整脈診療を親身になって実施する所存です。

不整脈センタースタッフ

合屋雅彦(副センター長)
水野友裕(心臓血管外科)、細川奨(小児科)、川端美穂子、笹野哲郎、佐々木毅、滝川正晃、田尾進、白井康大、西村卓郎

不整脈センター概要

施設名称東京医科歯科大学医学部附属病院
所在地〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45
連絡先電話:03-3813-6111FAX:03-5803-0133
設立2011年2月
設置者国立大学法人 東京医科歯科大学 学長 吉澤靖之
センター長平尾見三

診療実績

(件数)
2013年2014年
経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)277308
ペースメーカー7254
植込み型除細動器(ICD)/心臓再同期療法(CRT)15/1025/5