「 歯が少ないことで日常生活機能が低下しやすい人の特徴が明らかに 」【松山祐輔 准教授】
―高齢・男性・社会経済状況が低い・配偶者がいない・健康状態の悪い人は歯の健康に注意―

ポイント
- 高齢者約1万6千人の6年間の追跡データを分析した研究により、現在歯数(残っている自分の歯の本数)が20本未満の人は、20本以上の人に比べて、6年後の日常生活機能が低いことが明らかになりました。さらに、機械学習をもちいた詳細な分析の結果、高齢・男性・低い社会経済状況・配偶者なし・健康状態の悪い人で特にその影響が大きいことがわかりました。
- 自分の歯を多く保つことが日常生活機能の低下を防ぐ可能性が示されるとともに、重点的な対策が必要な人の特徴が明らかになりました。
研究の背景
研究成果の概要
分析の結果、45.2%が現在歯数20本未満でした。現在歯数20本未満の人は、20本以上の人に比べ、高齢、平均所得が低い、配偶者がいない、健康度が悪い傾向がありました(表1)。ベースラインの日常生活機能などの複数の要因を統計的に考慮してもなお、歯の喪失は日常生活機能の低下に統計学的に有意※3に関連していました(得点の差:-0.14;95%信頼区間:-0.18, -0.09)(図1)。さらに、機械学習を用いた詳細な分析により、歯の喪失と日常生活機能の関連の大きさは個人特性で異なることが明らかになりました(図2)。影響の大きい10%の人は、影響の小さい10%の人に比べて、高齢、男性、社会経済状況が低い、配偶者がいない、健康状態が悪いなどの傾向がみられました。
研究成果の意義


図1. 現在歯数20本未満の人の6年後の日常生活知機能得点(基準:現在歯数20本以上)

図2. 対象者16,553人のうち歯の影響が大きい10%(約1,600人)と小さい10%(約1,600人)の特性の比較
用語解説
※1機械学習:たくさんのデータの複雑な組み合わせから健康状態などを予測する分析手法。
※2老研式活動能力指標:高齢者の高次生活機能を測定する指標。手段的自立(5項目)、知的能動性(4項目)、社会的役割(4項目)の13項目からなり、0点から13点の値をとる。点数が高いほど自立していることを表す。
※3統計学的に有意:データで見られた差が偶然では説明できず、何か理由があるということ。
論文情報
掲載誌: Journal of Dental Research
論文タイトル: Heterogeneous Association of Tooth Loss with Functional Limitations
DOI: https://doi.org/10.1177/00220345241226957
研究者プロフィール
松山 祐輔 (マツヤマ ユウスケ) Matsuyama Yusuke
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
健康推進歯学分野 准教授
・研究領域
疫学
歯科公衆衛生学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
健康推進歯学分野 松山祐輔 (マツヤマ ユウスケ)
E-mail:matsuyama.ohp[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
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