「 自己免疫疾患全身性エリテマトーデス(SLE)の発症抑制の仕組みの解明 」【鍔田武志 名誉教授】
― 副作用のない新規治療法開発に道 ―

ポイント
- 代表的な全身性自己免疫疾患である全身エリテマトーデス(SLE)の発症を疾患特異的に抑制する仕組みの解明に成功しました。
- SLEの副作用のない新規治療法開発への道が開かれました。
研究の背景
SLEは厚生労働省の指定難病で、代表的な自己免疫疾患の1つです。わが国での患者数は6-10万人とされています。慢性の疾患で継続的な治療が必要であり、主にステロイド剤や免疫抑制剤による治療が行われていますが、これらの治療法は免疫の全般的な抑制や代謝の異常などの種々の副作用をきたすため、疾患の病態に則した副作用のない治療法の開発が待ち望まれています。
SLEでは核酸や核酸を含む自己抗原に対する自己抗体が産生され、この自己抗体により腎臓など種々の臓器の障害をきたします。Sm/RNP※1はRNAとタンパク質からなる自己抗原で、この中のSm分子への自己抗体はSLEの疾患特異的な自己抗体です。動物モデルを用いた研究からもSm/RNPのようなRNAを含む自己抗原への抗体産生がSLEの発症で重要なことが示されています。以前、研究グループは、Bリンパ球が発現する抑制性の膜分子CD72が、Sm/RNPに結合し、自己抗体の産生を抑制することを明らかにしました。SLEではSm/RNP以外のRNAを含む自己抗原への自己抗体も産生されますが、このような自己抗体の産生抑制の仕組みは明らかではありませんでした。

研究成果の概要
研究成果の意義
用語解説
※1Sm/RNP: Smタンパク質複合体、RNPタンパク質とRNAからなる複合体で、主に細胞の核内に存在し、RNAのプロセッシングに関わる。Smタンパク質複合体への自己抗体はSLEでのみ検出され、他の疾患ではみられない。
※2リボソーム:多数のタンパク質とリボソームタンパク質からなる複合体で、mRNAの翻訳の場である。抗リボソーム抗体はSLEの疾患特異的な自己抗体として知られる。
論文情報
掲載誌: Journal of Autoimmunity
論文タイトル: CD72 is an inhibitory pattern recognition receptor that recognizes ribosomes and suppresses production of anti-ribosome autoantibody
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jaut.2024.103245
論文へのリンク: https://authors.elsevier.com/a/1j5UT3BwmOdRGV
研究者プロフィール

鍔田 武志 (ツバタ タケシ) Takeshi Tsubata
東京医科歯科大学 名誉教授
難治疾患研究所 分子構造情報学分野 非常勤講師
日本大学歯学部 客員教授
・研究領域
免疫学、生化学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子構造情報学分野
日本大学歯学部病理学講座
鍔田 武志 (ツバタ タケシ)
E-mail:tsubata.imm[@]mri.tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
※E-mailは上記アドレス[@]の部分を@に変えてください。