「 生体内の胎盤を模倣したヒト胎盤オルガノイドの作製に成功 」【梶 弘和 教授】

梶 弘和(かじ ひろかず) 生体材料工学研究所 診断治療システム医工学分野 教授(右)
堀 武志 (ほり たけし) 生体材料工学研究所 診断治療システム医工学分野 助教(左)
― 胎児に安全な創薬への利用に期待 ―

ポイント
- ヒトの胎盤幹細胞を用いて、ヒトの絨毛構造を模倣した胎盤オルガノイドモデルを世界で初めて作製。
- 胎盤オルガノイドモデルの作製条件をもとに、妊婦から胎児への物質移行を定量的に評価可能な胎盤バリアモデルを開発。
- ウイルスや細菌の胎盤を介した胎児への影響、胎盤で起きる物質輸送、胎盤の形成・成熟過程などを解明する上で、有用な細胞培養モデルとなるものと期待される。さらに、創薬、動物実験に頼らない医薬品安全性評価(動物実験代替法)の開発に貢献するものと期待される。
研究の背景
研究成果の概要

図1 医薬品の胎盤を介した胎児への移行
胎盤の絨毛表面には合胞体性栄養膜細胞があり、これが異物に対する主たるバリアの役割を果たしている。しかし、妊婦が服用した医薬品の中には、この胎盤バリアを透過し、胎児に好ましくない作用を及ぼすものがある。

図2 ヒト胎盤幹細胞から作製された胎盤オルガノイド(左)、胎盤バリアモデルの正面図(中央)、バリアモデルの側面図(右図, 上部の赤い細胞がバリア細胞)
研究成果の意義
用語解説
幹細胞などの自己組織化により形成される、組織様の細胞構造体。
※2 胎盤幹細胞または栄養膜幹細胞
高い増殖能をもち、かつ、胎盤を構成する全ての胎盤細胞(栄養膜細胞)へと分化する能力を備えた細胞。2018年に東北大学 医学部の有馬隆博名誉教授のグループにより樹立された。
論文情報
掲載誌:Nature Communications
論文タイトル:Trophoblast stem cell-based organoid models of the human placental barrier
DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-024-45279-y
研究者プロフィール

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
診断治療システム医工学分野 助教
・研究領域
生体模倣システム、薬物代謝

東京医科歯科大学 生体材料工学研究所
診断治療システム医工学分野 教授
・研究領域
生体模倣システム、ドラッグデリバリーシステム、生体医工学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 診断治療システム医工学分野
堀 武志(ホリ タケシ)
E-mail:hori.bmc[@]tmd.ac.jp
梶 弘和(カジ ヒロカズ)
E-mail:kaji.bmc[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
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