プレスリリース

「神経変性が加速する分子メカニズムを解明」【岡澤均 教授】

公開日:2021.10.11
「神経変性が加速する分子メカニズムを解明」
―老化・変性の加速媒介分子を標的とする認知症治療の実用化へ期待 ―

ポイント

  • アルツハイマー病態の脳において神経細胞死が加速的に増加する分子メカニズムを解明しました。
  • 神経細胞死の加速的増加の主な原因が加速媒介分子HMGB1であることを示しました。
  • 細胞外HMGB1から惹起される細胞内リン酸化シグナルがKu70のDNA損傷修復機能を阻害し、神経細胞のTRIADネクローシス※1を誘導することを発見しました。
  • 細胞外HMGB1の誘導するTRAIDネクローシスは老化の神経細胞死そのものであることが示唆され、老化と神経変性の関係性に対して重要な知見を加えました。
  • 神経細胞一次繊毛のアルツハイマー病態への関与を示唆する結果を得ました。
 東京医科歯科大学難治疾患研究所/脳統合機能研究センター神経病理学分野の岡澤均教授の研究グループは、理化学研究所、産業技術総合研究所、東京都医学総合研究所、イタリア・サンラファエル科学研究所などとの共同研究で、アルツハイマー病態におけるHMGB1を介した神経変性加速の分子メカニズムを解明し、神経変性と老化に共通する細胞死メカニズム、ならびに細胞繊毛のアルツハイマー病態への関与を合わせて発見しました。これによって、神経変性と老化の関係性に重要な知見を加えるとともに、岡澤教授の研究グループが進めてきたHMGB1抗体によるアルツハイマー病等への認知症治療開発の科学的根拠がさらに固まりました。この研究は文部科学省科学研究費補助金(新学術領域・シナプス・ニューロサーキットパソロジーの創成)、日本学術振興会科学研究費補助金(基盤A)、 文部科学省「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」、日本医療研究開発機構「産学連携医療イノベーション創出プログラム」セットアップスキーム(ACT-MS)などの支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、Springer Natureが発行する国際科学雑誌 Communications Biologyにおいて、2021年10月11日にオンライン版で発表されました。

プレス通知資料全文

  • 「神経変性が加速する分子メカニズムを解明」
  • 論文情報

    掲載誌:Communications Biology
    論文タイトル: HMGB1 signaling phosphorylates Ku70 and impairs DNA damage repair in Alzheimer’s disease pathology
    DOI:https://doi.org/10.1038/s42003-021-02671-4