【用語集】【注】

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【用語集】

● リスク分析関係

ISO 14971 Medical devices — Application of risk management to medical devices では次のように定義されています.
harm: physical injury or damage to the health of people, or damage to property or the environment
hazard: potential source of harm
severity: measure of the possible consequences of a hazard
risk: combination of the probability of occurrence of harm and the severity of that harm
risk estimation: process used to assign values to the probability of occurrence of harm and the severity of that harm
risk analysis: systematic use of available information to identify hazards and to estimate the risk
risk evaluation: process of comparing the estimated risk against given risk criteria to determine the acceptability of the risk
safety: freedom from unacceptable risk

上記ISOの翻訳規格であるJIS T 14971, リスクマネジメントの医療機器への適用,では次のようになっています.
危害 harm: 人の受ける身体的傷害若しくは健康障害,又は財産若しくは環境の受ける害.
ハザード hazard: 危害の潜在的な源.
重大さ severity: ハザードから生じる可能性のある結果(危害)に対する尺度.
リスク risk: 危害の発生確率とその危害の重大さとの組合せ.
リスク推定 risk estimation. 危害の発生確率とその危害の重大さに対して重み付けをするために用いるプロセス.
リスク分析 risk analysis: 利用可能な情報を体系的に用いてハザードを特定し,リスクを推定すること.
リスク評価 risk evaluation: 判断基準に照らして推定したリスクが受容できるかを判断するプロセス.
安全 safetey: 受容できないリスクがないこと.

GHTF SG5/N2R8; Clinical Evaluation では次のように定義されています.
Clinical Investigation: Any systematic investigation or study in or on one or more human subjects, undertaken to assess the safety and/or performance of a medical device.
Clinical Evaluation: The assessment and analysis of clinical data pertaining to a medical device to verify the clinical safety and performance of the device when used as intended by the manufacturer.
Clinical Evidence: The clinical data and the clinical evaluation report pertaining to a medical device.
Clinical Performance: The ability of a medical device to achieve its intended purpose asclaimed by the manufacturer.
Clinical Safety: The absence of unacceptable clinical risks, when using the device according to the manufacturer's Instructions for Use.

GHTF SG5/N2R8; Clinical Evaluation文書の公式な翻訳は存在しません.
臨床試験:
臨床評価:
臨床的根拠:
臨床的有効性:
臨床的安全性:

● 臨床経済学関係

臨床経済学では,治療の効果について効果,効用,便益など測定される尺度により違う用語が使われます.
効果: 特定の治療方法について適用され,生存年数の増加など直接的な尺度により測定されもの
効用: すべての治療方法について適用可能な質調整生存年などに換算された効果
便益: すべての治療方法について適用可能な金銭に換算された効果

● 雑

一般に効果と効能と言う用語は次のように使い分けられます.
効果 effectiveness: ある医療技術が通常状態でもたらす結果
効能 efficacy: ある医療技術が理想的な状態の下でもたらす結果



【注1】統計学的な解析結果の解釈について

リスクを扱う際には,統計学的な扱いに馴染まないところがあると書きましたが,これは誤解を招く表現ですのでもう少し詳しく説明しましょう.1つにはライオデュラの例にも出したように,例数が少なくて統計の対象にならない場合です.またよくある問題としては,平均値に意味があるのか,それともワーストケース的な値に意味があるのか,ということもあります.

例えば部品Aと部品Bがあったとします.強度を測定してみると,
部品A: 平均強度 大, 分散 大
部品B: 平均強度 小, 分散 小
であったとします.また,それぞれ正規分布にしたがっていることも分かったとします.

このとき部品Aと部品Bでどちらが強いかを検討するには,どうすれば良いでしょうか.平均値の大きいAが強いと直観的に思われ,さらに統計学的に分析することになります.さて分散が等しくない両側t検定を使うとして,次のようになったとします.
p<0.05でAの平均強度がBの平均強度より大きい.
この結果から,AはBより強いと結論して良いでしょうか.

事故防止のために設計をする場合には,この結論は早急すぎて誤りの可能性があります.事故を防止するには強度を保証する必要がありますので,例えば製品全数のうちその95%の個数が満足する強度で比較する必要があります.正規分布ですので,全体の95%が入る区間は
[平均値 ー 2x 標準偏差, 平均値 + 2x 標準偏差]
となります.ですから直観的には,この 平均値 ー 2x 標準偏差 の値の大小で強さを比較するべきです.Aは分散が大きいのでこの95%保証値がBより小さくなる可能性があり,もしそのような結果を得た場合には,BはAより強いと判断するべきです.(すいません,ここで言う95%保証値について2群の差を厳密に解析する方法は調査中です.ご存じの方はお教え下さい.)

わけが分からなくなったと思いますので,この状況を整理して書きますと,次のようになります.
100個の製品群同士からサンプルをそれぞれ1個ずつ抽出したとき,そのサンプルは95%の確率でAがBより強い,
しかし
100個の製品群のうち97.5個以上の製品で安全を保証できる強度としては,BがAより強い.
(両側ですので 平均値 ー 2x 標準偏差 より弱いのは2.5個になります.)

どちらの結論を採用するかは解析の目的により異なります.部品が強いか弱いかといった,一見単純なことでさえ客観的に決めることは出来ません.どういう目的で解析をするのかという,統計学的解析の外にある状況的もしくは主観的なものが入らないと結論を導き出せないのです.

またもう一つ記憶しておいて頂きたいことは,事故のリスクを議論するときには平均値だけを使うことはないということです.分散は製品のばらつきを意味しますので非常に重要です.実際には,工業製品ではばらつきが大きいこと自体で不良品ということになります.平均値だけでは事故の防止には役立ちません.むしろはずれ値が問題になりますので,ワイブル分布などを利用して議論することになるのです.