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第5回 若手インスパイアシンポジウム(2013.02.23)

全体代表者の総括

 脳統合機能研究センター(CBIR)が主催するCBIR若手インスパイアシンポジウムが今年も開催されました。第5回大会となる本年度シンポジウムの目玉は全て口頭発表にする初めての試みでした。例年、シンポジウムでは前半の口頭発表と後半のポスター発表に分けて行われていましたが、スケジュールの過密さにより発表時間が不十分であるという指摘を受けていました。シンポジウムの準備にあたり、「学会等での学生の口頭発表の機会がほとんどないので、ポスター発表よりも口頭発表を増やしたらどうでしょう」というご提案をいただきました。これを新しい試みとして実行したことにより、本年度のシンポジウムでは十分な時間のなかでの発表と参加者との活発な議論を行うことができました。大会は「異なる領域の研究者との交流を積極的に推進し、研究の新たな展開を図る」という趣旨に沿った集合活動になることがガイドラインにより推奨されています。今回の新しい試みが本会の趣旨を達成するための一助になることをここに報告します。
 シンポジウムにはCBIRのメンバーを中心に教員、ポスドク、医員、大学院生、医学部生など80名以上に参加していただきました。臨床部門と基礎部門から20演題、内容は多岐にわたる発表が行われました。脳統合機能研究は本会のテーマですが、発表された研究課題、方法、材料のどれをとっても一様ではなく、それゆえに自分が今までに知らなかった知識を習得する良い機会になります。実際、臨床部門の先生からは基礎研究に対して質問され、逆に、基礎部門の先生から臨床研究について質問されている光景を何度も見かけました。大会の趣旨である「異なる領域の研究者との交流」が行われた瞬間です。シンポジウムで最大の盛り上がりを見せたのは、優秀賞が発表されたときでした。優秀賞は優れた研究成果を発表した若手研究者のために設けられたもので、参加者全員による投票で決められます。数々の発表が行われたなか、ひときわ聴衆の関心を惹く素晴らしい内容を発表された4名が選出されました。優秀賞受賞者には表彰式が懇親会の席で行われました。受賞者にはそれぞれ挨拶の言葉をいただきました。少し気恥ずかしそうな、しかし、皆が自信に満ちた表情をされているのが印象的でした。以下、優秀賞演題を含めた発表のいくつかを紹介させていただきます。
最初の演者は発光バイオイメージ技術について発表していただいた神経機能形態学分野の齋藤健太先生でした。発表では、従来のルシフェラーゼよりも10倍以上明るく光るハイブリッド発光タンパク質Nano-lanternの開発と応用について解説していただきました。その革新的技術は新しい解剖学の幕開けを期待させるものでした。事実、成果は昨年のNature Communicationsに掲載され、各方面で評価されています。CBIRシンポジウムのトップバッターに相応しい発表でした。光を用いたバイオイメージ技術に関する発表は他の演者によっても行われ、この技術は脳神経を解析するうえでの一つの潮流になる、すでになっていると感じました。細胞生物学分野の角元利行先生には、神経細胞の機能制御に重要な細胞内伝達分子のバイオイメージ化の成功、明らかにされた分子動態について発表していただきました。
脊椎小脳変性症1型発症マウスは病態モデルとして研究されていますが、残念ながら、我々はこのマウスですら治癒する術を持ち合わせていません。本シンポジウムでは、脊椎小脳変性症1型発症マウスに治療効果をもたらす核内タンパク質についての発表が神経病理学分野の伊藤日加留先生によって行われました。病態の抑制効果が期待される核内分子を過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し、病態マウスと交配させた結果、病態を有意に改善したという結果を報告していただきました。また核内タンパク質のウイルス療法の解析についても触れ、脊椎小脳変性症1型の新しい治療の可能性を提示していただきました。
一般に、脳虚血に対する内科的治療には血液を固まりにくくして血栓形成を防ぐための薬物療法が行われています。しかし、脳虚血をより効果的に治療するためには、さらに脳虚血病態を解明する必要があります。血管内治療科の有村公一先生には、脳虚血における脳血管周皮細胞による神経保護作用、それが成長因子の傍分泌を介した効果であることを報告していただきました。脳虚血の研究では直接関わる神経や血管に焦点をあてたものが多いなかで、脳血管周皮細胞に着目された研究は新しく、また一歩、脳虚血病態の解明に近づいた印象を受けました。
アミノ酸には生体内の調節を積極的に行うものが存在し、特に、脳内神経伝達物質にはアミノ酸が多く関与しています。本シンポジウムでは、脳内神経伝達アミノ酸であるD-セリンに着目した研究成果を精神行動医科学分野の石渡小百合先生に発表していただきました。ラット内側前頭葉皮質のD-セリンをin vivoで丁寧に観察した結果、D-セリンの細胞外濃度の調節に重要な役割を果たす分子が明らかになりました。D-セリンの調節異常と精神疾患との関連性が指摘されていることから、D-セリンの細胞外濃度の調節に関わる分子を標的とした新規治療薬の開発が期待されます。
本シンポジウムで優秀賞を受賞された4名はいずれも次世代を担う若手研究者です。特筆すべきことは、後日、受賞者の中のある方が来年度CBIR若手インスパイアシンポジウムの担当者代表を務めたいと申し出ていただいたことです。将来を見すえて、責任ある立場の役職を経験してみたいとのことです。本シンポジウムがこのようなモチベーションを鼓舞したのならば、会は大成功したといっても過言ではありません。優秀賞の受賞、シンポジウムによる刺激が若手研究者の成長を促したと私は信じています。
CBIRは、発足以来、着実に発展し多くの成果をあげています。CBIRの基礎部門では味岡逸樹准教授が2009年に着任され、現同志社大学の高森茂雄教授はCBIRから栄転されております。CBIRの臨床部門 として脳神経・血管制御センターに血管内治療学(血管内治療科)が2010年に新設されました。CBIR若手インスパイアシンポジウムにあたっては、今年で5回目を行うまでになりました。今回のシンポジウム後の懇親会でのことです。シンポジウムの新しい試みとして、CBIRから栄転されたOB・OGに参加していただくのはどうかとのご提案をいただきました。本学外でご活躍されているOB・OGのご参加により、本学研究者による対外的な交流および研究の活性化が期待されます。さらに、大山喬史学長をシンポジウムにご招待してはどうかとのご提案をいただきました。本学ホームページにて、大山喬史学長からのご挨拶に以下の文章があります。本学が目指す人材養成にあたって、そこに求める人間像は未知なるものへのチャレンジ精神を持ち、真理の探究に努力を惜しまぬ科学者像です(大山喬史学長のご挨拶より抜粋)。本シンポジウムはまさにこの目的に沿った人材養成を行うものではないでしょうか。シンポジウムにて本学が目指す人材が育まれている様子を大山喬史学長に直接見ていただくことは大変素晴らしく、若手研究者にとっても大きな励みになることは間違いありません。次回シンポジウムでは二つのご提案を実現していただき、CBIRが今後ますますご発展いたしますことをお祈り申し上げます。最後に、CBIRセンター長の水澤英洋教授、同センターの味岡逸樹准教授をはじめ各分野担当の先生にお力添えをいただきました。この場をお借りして、お礼申し上げます。

担当者代表 岩佐宏晃(病態代謝解析学)

優秀賞受賞者(50音順)

 有村公一(血管内治療科)
「脳虚血におけるPDGF-Bシグナルを介したペリサイトの神経保護作用」

 石渡小百合(精神行動医科学分野)
「ラット内側前頭葉皮質における細胞外D-セリンの多様な調節」

 伊藤日加瑠(神経病理学分野)
「HMGB1を用いた脊椎小脳変性症1型モデルマウス治療の試み」

 角元利行(細胞生物学分野)
「PIP3産生の光制御と神経細胞への応用」

参加者の声

 石渡小百合(精神行動医科学分野)
 私は現在博士課程の第3学年として、西川教授のもとで「細胞外液中のD−セリン調節機構の解明」というテーマでご指導いただいております。本シンポジウムに参加させて頂くのは今年で3回目となりましたが、毎年参加させて頂く度に新鮮な刺激を頂いています。様々な分野の研究成果に触れることができる、臨床・基礎の両面からの視点での議論を経験できる、という学術的な刺激はもちろんのこと、先生方や自分と同世代の人達の研究に対する情熱、ひたむきさなどを直接感じることができ、精神的な面でも刺激を頂いています。また、普段なかなか接する事ができない異なる分野の先生方とのディスカッションでは、新たな知識や、自分の研究の盲点を知ることができ、とても貴重な機会となっています。
 今年度、私は口演発表をさせていただき、優秀賞を頂く事ができました。始めて参加した時から、いつかは自分も…と目標の一つにしていた優秀賞を頂けると分かったときは、本当に嬉しかったです。今後は、この賞に恥じないよう、一層精進して研究に励んでいこうと気持ちを新たにしました。

 角元利行(細胞生物学分野)
 CBIRシンポジウムでは、多岐にわたる分野の成果の発表を聞くことができ、毎年大変勉強になっております。今回は口頭発表のみということでしたが、学会等で私のような学生が口頭発表するような機会はほとんどなく、貴重な経験を積むことができました。また、様々なバックグラウンドを持った研究者の方々からコメントを頂きまして、広い視野から自分の研究を眺める良い機会にもなりました。やはり日々実験を行なっていると、どうしても袋小路に迷い込んでしまい、なかなか先に進めないことも多くあります。多様な研究者が集まって議論を行う場は、多角的な視点から道を切り拓くヒントをもらえる場でもあり、1年に一度このような会があることは大変ありがたいことだと思っています。これを励みに、CBIRから価値のある成果を発表できるように、研究に邁進していきたいと思います。