「 胎生期・発達期の栄養状態が味覚に影響を与えることを発見 」【渡一平 助教、小野卓史 教授】
― 妊娠・授乳期の高脂肪食摂取が子の塩味嗜好性を増加させる ―
ポイント
- 疫学研究により、胎生期や発達期の健康・栄養状態が成人期以降の健康や各種疾病発症リスクに関連することが知られていますが、胎生期や発達期の栄養状態が『味覚』に影響を与えるか否かについては、これまで分かっていませんでした。
- 本研究では、動物実験系を用いて、妊娠・授乳期の母ならびに離乳後に高脂肪食を摂取させた出生仔の味覚を評価したところ、出生仔の塩味に対する嗜好性が増加し、舌表面において各種味受容体を有する味細胞のアンジオテンシンII受容体1型の発現が上昇することを初めて発見しました。
- 本研究結果は、2世代にわたる高脂肪食摂取が、子の味嗜好性に変化を引き起こすこと、ならびに口腔領域に存在する味覚受容体の変化を示唆したもので、塩味嗜好性の増加は食塩の過剰摂取や食行動の変調を引き起こし、生涯にわたる健康状態や各種疾病の罹患リスクを高める恐れがあります。
研究の背景
今回、研究グループは、Wistarラットを用いた動物実験系において、妊娠・授乳期の母獣ラットおよび離乳後の出生仔に高脂肪食を継続摂取させた際の味覚への影響を、行動学的、ならびに組織・生化学的解析手法によって検討しました。
研究成果の概要
研究成果の意義
用語解説
※1 AT1・・・・アンジオテンシンII受容体1型。塩味受容体として知られている上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)の発現・機能に影響を及ぼすことが報告されている。
※22瓶選択嗜好試験・・・・味の嗜好性を評価する行動アッセイで、水と味溶液の入った二つの瓶を提示し、それぞれの飲水量の比率から嗜好性を算出する試験。
※35基本味・・・・食物の味は甘味、酸味、塩味、苦味、旨味の5つの基本味から構成される。
論文情報
掲載誌:Scientific Reports
論文タイトル: Two-generation exposure to a high-fat diet induces the change of salty taste preference in rats
DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-023-31662-0
研究者プロフィール
小野 卓史(オノ タカシ) Ono Takashi
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 教授
・研究領域
歯科矯正学、口腔生理学、睡眠医学
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 助教
・研究領域
歯科矯正学、生化学、分子生物学
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 大学院生
・研究領域
歯科矯正学
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
咬合機能矯正学分野 小野 卓史(オノ タカシ)
E-mail: t.ono.orts[@]tmd.ac.jp
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