「体水分不均衡は、低舌圧、低握力と関連する」【山口浩平 助教】
―口腔機能と体組成の関連に新知見、一層の医科歯科連携を―
ポイント
- 体水分不均衡は、低舌圧の関連因子でした。一方で、舌断面積とは関連がありませんでした。
- 体水分不均衡は、低握力とも関連がありました。
- 歯科医療従事者も、低舌圧、低握力の患者では体水分不均衡など全身状態の些細な変化にも注意を向ける必要があるでしょう。
研究の背景

図1 体組成について
全身のおよそ60%は水分で構成されており、筋肉も多くの水分を含んでいます(図1)。体水分は細胞外水分と細胞内水分に分けられ、健康な状態ではその均衡が保たれています。体水分の不均衡は細胞レベルの機能低下を示し、筋量よりも早期に身体機能や筋力の低下を示す指標として期待されていますが、口腔機能との関連は一切不明でした。体水分均衡と口腔機能との関連が明らかになれば、口腔機能低下症の診断過程で、身体のわずかな変化も予測でき、歯科医療従事者がさらなる健康寿命増進に寄与しうるのです。臨床現場では、全身の浮腫が顕著な患者さんは舌も浮腫んでいることをよく経験します。そのため、本研究は特に舌に焦点を当てて、舌の筋力や筋肉量と体水分均衡の関連を明らかにすることを目的としました。
研究成果の概要

図2 舌圧、舌超音波検査、生体インピーダンス法
研究成果の意義
用語解説
※1口腔機能低下症・・・・・・・・噛みづらい、むせるなど口腔機能が低下した状態に対する病名。
※2生体インピーダンス法・・・・・・・・体内に微弱な電流を流すことで、筋肉量や脂肪量、体水分均衡など体組成を調べる手法。
※3体水分均衡・・・・・・・・体内水分量に対する細胞外水分量の割合、疾患などで増加する
※4ロコモティブシンドローム・・・・・・・・骨や筋肉の障害で移動機能が低下した状態
※5フレイル・・・・・・・・加齢による心身の衰え、適切な介入で改善しうる状態
論文情報
掲載誌:Journal of Prosthodontic Research
論文タイトル:Higher extracellular water/total body water ratio is associated with lower tongue and grip strength
DOI:https://doi.org/10.2186/jpr.JPR_D_21_00296
研究者プロフィール

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野 助教
・研究領域
高齢者歯科、摂食嚥下リハビリテーション

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授
・研究領域
高齢者歯科、摂食嚥下リハビリテーション
問い合わせ先
<研究に関すること>
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野
山口 浩平(ヤマグチ コウヘイ)
E-mail:k.yamaguchi.swal[@]tmd.ac.jp
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
E-mail:kouhou.adm[@]tmd.ac.jp
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