カンボジア・ラオス乳がん診断のための病理人材育成プロジェクト

カンボジア・ラオス乳がん診断のための病理人材育成プロジェクト

2024.03.21-25 カンボジア-ラオス-日本の3か国がカンボジアに集まり乳がんの免疫組織化学染色を行いました

2024年3月21-24日、カンボジアのクメールソビエト友好病院病理部のスタッフと、ラオス保健科学大学のThavisouk Hatthakone 技師、Vimala Keobounpheng技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学形態情報解析学分野 副島友莉恵で、乳がん検体でER,PgR,HER2に加えて、細胞増殖能マーカーであるKi67の免疫組織化学染色を初めて行った。以下、ラオスThavisouk Hatthakone 技師からの報告である。

              First of all, we would like to take this opportunity to thank the project that allowed us to participate in the immunohistochemistry (IHC) training on March 20th–24th, 2024, at Khmer Soviet Friendship Hospital in Cambodia. The training is organized under the Toyota Foundation for developing human resource capacity in Pathology for Breast Cancer Diagnosis in Cambodia and Lao PDR.
              Of course, this is our first visit to Phnom Penh and we have learned many things and were very impressed by this visit such as we learned how to manage the work in the hospital because they have a systematic way of working in the hospital, for example, rotating the work every month for the quality of the pathological examination and good diagnosis which this way of rotating the work each month will make the medical technologist have a very good understanding of the work.
              We were very impressed with everyone's hospitality, especially the technologists, who were very cooperative in explaining their work plan each day and the tasks of each room, it could be seen that they were handling the samples well, cleanly, and organized. On behalf of the two Lao technologists from the University of Health Science, we are happy to exchange knowledge on many aspects of technology pathology work, especially immunohistochemistry for Ki-67, ER, PgR and HER2, preparation for practical training in which we could try the sectioning with their microtome, learn the technique of the Pap smear for cytology testing, and even how to cover glass slides.
              We hope that in the future we will be able to visit and work with the Khmer Soviet Friendship Hospital again, especially at the department of pathological anatomy and cytology laboratory.

2024.2.28 カンボジアーラオスー日本の3か国でオンラインミーティングを開催しました

カンボジアのクメールソビエト友好病院のSophana Sam病理部長はじめスタッフ全員と、ラオスの保健科学大学医学部病理学教室のVimala Keobounpheng技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学形態情報解析学分野 副島友莉恵で3月の渡航時の活動に関するオンラインミーティングを行いました。
当初の予定では試薬はクメールソビエト友好病院がカンボジアの業者を通して購入する予定としていましたが、国立病院としてカンボジアの保健省に免税措置を取ってもらうための申請に時間がかかっており、3月には間に合わないこととなり、今回も必要な試薬を日本から持参することとなりました。
ただ、1年前に乳癌診療に関わる免疫組織化学染色を開始した当初は、自国で試薬や抗体を購入する手段すら分からなかったことを考えると格段の進歩です。また、今後持続的に安定してクメールソビエト友好病院で免疫組織化学染色を行うには、抗体や試薬をできる限り安価に納入する必要があることから、病院長名で保健省に免税措置を要求する書類を提出するという方法を調べて病理部長と技師長を中心に準備しており、承認されれば、少しだけ安く抗体や試薬の購入が可能になります。
また、3月の渡航の際には、クメールソビエト友好病院にラオス人技師だけでなく、カンボジア国内の他の病院の技師も招いて免疫組織化学染色を実施する予定としています。さらに、乳がん手術に携わる腫瘍医・婦人科医とのミーテイングも予定されています。
カンボジアで乳がん患者さんがスムーズに診断治療を受けることができるようになるためのクメールソビエト友好病院での取り組みが、ラオスでの活動のヒントになればと思います。

2023.08.10-18 カンボジア-ラオス-日本の3か国がラオスに集まり乳がんの免疫組織化学染色を行いました

2023810-16日、ラオス保健科学大学医学部病理学教室で、ER, PgR, HER2の免疫組織化学染色をラオスで初めて行った。
ラオス保健科学大学Soulideth Vilayvong 医師、Thavisouk Hatthakone技師、Vimala Keobounpheng技師、カンボジアクメールソビエト友好病院Sophana Sam部長、Kimsrun Yean副技師長、Sopheanarith Vong技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学形態情報解析学分野 副島友莉恵、大学院生 髙橋希、中堀未依子が参加し、自国での経験を共有しながら実習を行った。セタティラート病院乳がん手術検体のホルマリン固定から、脱水~パラフィン浸透、包埋、薄切の作業について、一つ一つ注意点や重要性を確認しながら行った。免疫染色の抗体試薬は、ラオスでは購入ルートがないため日本の試薬を使用した。ラオスで行う初めての免疫組織化学染色であったが、ラオス人技師らが日本人、カンボジア人技師からの助言を受けながら意欲的に取り組み、ラオスの検体で良好な免疫染色結果が得られた。8月15日には、国際医療福祉大学医学部 石川雄一教授による「乳がん病理診断における免疫組織化学染色の意義」について講義が行われた。現場にいた病理医・病理技師だけでなく、カンボジアとオンラインでつなぎ多くの病理医・病理技師が聴講し、3か国合同の貴重な学びの場となった。
 8月17日にカンボジアクメールソビエト友好病院Sophana Sam部長、Kimsrun Yean副技師長、Sopheanarith Vong技師は帰国し、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学形態情報解析学分野 副島友莉恵、大学院生 中堀未依子もプノンペンへ移動した。8月18日にはクメールソビエト友好病院で、ラオス保健科学大学での実習についての振り返りと、実習に参加した病理医・病理技師からの報告が行われ、参加できなかった病理医・病理技師と病理標本作製や免疫組織化学染色について熱い議論が交わされた。

 

2023.07.20 カンボジア―ラオス―日本の3か国でオンラインミーティングを開催しました

2023年7月20日に、ラオス側からSoulideth Vilayvong 医師、Thavisouk Hatthakone技師、カンボジア側からSophana Sam病理部長、Vitou Leang医師、Kimsrun Yean技師、Sopheanarith Vong技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学形態情報解析学分野 副島友莉恵、大学院生の髙橋希、中堀未依子、藤井奎称で8月の活動に関してのオンラインミーティングをもった。
ラオスでは免疫組織化学染色を行うのは全く初めてであるので、まずラオスと日本のチームで8月10日に乳がん手術標本を固定するところから手順を確認しながら標本作成を行い、8月14日に一度免疫組織化学染色を実施してみる。その上で、15日にラオスに到着するカンボジアからの3名とともに再度免疫組織化学染色を行ってみること、病理医の石川雄一先生にもラオスを訪問していただくので、病理診断に関するQ&Aセッションを設けるほか、石川先生に乳がん病理に関する講義を行っていただくことを確認した。
8月17日にカンボジアと日本のチームは共にカンボジアに移動し、18日にクメールソビエト病院で免疫組織化学染色を継続するための今後の方策を協議すること等話し合った。

2023.06.01 カンボジア―ラオス―日本の3か国でオンラインミーティングを開催しました

2023年6月1日に、ラオス側からThavisouk Hatthakone技師、カンボジア側からSophana Sam病理部長、Vitou Leang医師、Kimsrun Yean技師、Sopheanarith Vong技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、本学形態情報解析学分野 副島友莉恵でオンラインミーティングをもった。
カンボジア側から免疫組織化学染色に関しては、その後自分たちでも試みて特に問題なくできたとのことであったが、Facebookページに病理部や乳がん診断・免疫組織化学に関しての情報を掲載していくための担当になる予定の技師が産休に入ってしまい、クメールソビエト友好病院病理部の公式Facebookページの更新のためのアクセスが出来ないでいるとの報告があった。
8月のラオスでの活動に関して、Sophana Sam病理部長、Kimsrun Yean技師、Sopheanarith Vong技師の3人がラオスに8月14日~17日の予定で渡航することとなった。ラオスではラオス保健科学大学病理学教室で免疫組織化学染色をカンボジア人と共に8月15日に実施する予定であるが、今までラオスで免疫組織化学染色を実施したことがないため、検体採取・固定・標本作成から日本人と共に実施するとし、東京医科歯科大学の大学院生も一緒に渡航し、資源の乏しい環境での標本作成・免疫組織化学染色を学ぶこと計画とした。

具体的な準備は、7月のオンラインミーティングを行うこととした。
 

2023.02.13-18 カンボジア-ラオス-日本の3か国がカンボジアに集まり乳がんの免疫組織化学染色を行いました

2023213-15日、カンボジアのクメールソビエト友好病院病理部で、ラオスの保健科学大学医学部病理学教室のSoulideth Vilayvong 医師、Vanhnapha Theppehavongsa技師、Phetnakhone Philavong技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学分子病理検査学分野 副島友莉恵で、乳がんのがん細胞の内部に発現するホルモン受容体の有無をみるER, PgR、がん細胞の表面に発現するHER2 タンパク過剰発現の有無をみるHER2の免疫組織化学染色を実施した。
クメールソビエト友好病院の病理部スタッフとラオス保健科学大学医学部病理学教室のスタッフは、オンラインでは顔を合わせていたものの、今回初めて対面での会話であった。
クメールソビエト友好病院は以前、日本から抗体や試薬を持ち帰って、自分たちで免疫組織化学染色を行ったことがあったが、背景が染まってしまい、カンボジア人病理医たちが期待したほどきれいには染色できなかった。今回は、カンボジアでも購入可能な別の抗体を用いて、別の手順で染色し、きれいに染色された標本を見て、思わず歓声があがった。ラオス人病理医から、標本固定の重要性の指摘を受け、クメールソビエト友好病院病理部のスタッフ内でどのように臨床医や看護師に標本をきちんとホルマリンに入れて固定する手順を伝えるか、話し合いがもたれた。日本側より、SNSの利用に関して提案を受け、現在ほとんど使われていないクメールソビエト友好病院の公式Facebookページを用いて、病理部から臨床スタッフへの大切なメッセージを伝えることを試みようとの話になった。

次回は8月にラオスで免疫組織化学染色を実施しようと、ラオスでの再会を誓った。

217日には、日本人3人がラオスの保健科学大学医学部とミタパーブ病院を訪問し、18日にラオス保健科学大学医学部病理学教室で、Soulideth Vilayvong 医師、Phetsamone Arounlangsy医師とともに、現在の医学部病理学教室の現状で改善出来うる点と今後の展望について協議し、8月の免役組織化学染色実施に向けた準備を話し合った。
カンボジア・ラオスともに今後も月に1回程度オンラインでの情報交換を行っていくことを確認した。


2023.01.19 カンボジア―ラオス―日本の3か国でオンラインミーティングを開催しました!

カンボジアのクメールソビエト友好病院 Sophana Sam病理部長、Vitou Leang医師、Ros Vong病理技師長の3名とラオス保健科学大学医学部病理学教室 Soulideth Vilayvong 医師、Thavisouk Hatthakone技師、Phetnakhone Philavong技師、Vanhnapha Thepphavongsa技師の4名、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、分子病理検査学分野 副島友莉恵、卒研生 髙橋希、中堀未依子、藤井奎称で2回目のオンラインミーティングを開催しました。
ミーティングでは、2月のカンボジア渡航のスケジュールと活動の確認後、日本側から持参する抗体と試薬についての説明を行いました。
Soulideth医師から、日本に留学していた際に調べた各社の抗体の値段や染色の結果の知見の紹介があり、Vitou医師からは、今後持続的に安定してクメールソビエト友好病院で免疫組織化学染色を行うには、抗体や試薬をできる限り安価に納入することと患者さんに支払ってもらう検査料の設定が大切になるとの意見がありました。
Sophana部長からは、病理部として免疫組織化学染色を実施するにあたり、クメールソビエト友好病院の病理技師に技術があり、病理医に免疫組織化学染色の診断をする十分な能力があると日本人専門家から証明してもらいたい、その証明をもって病院幹部に病理部が新たに免疫組織化学染色を行うことの承認を得て、病院からの運営費も請求したいとの話がありました。
日本側からは、2月にクメールソビエト友好病院で免疫組織化学染色を行った際に、技師の技術に関して日本人病理技師が認定することは可能であるが、染色した標本の写真を送ってオンラインでの評価も可能であるので、今後方法を相談しましょうとの提案を行いました。
Soulideth医師とVitou医師はタイの学会が行ったオンラインセミナーで顔を合わせたことがあったものの、実際に会ったことはなく、2月にSoulideth Vilayvong 医師、Phetnakhone Philavong技師、Vanhnapha Theppehavongsa技師の3人と日本人3人がクメールソビエト友好病院で一堂に会するが待ちきれない様子でした。

2022.11.24「カンボジア・ラオス乳がん診断のための病理人材育成プロジェクト」初回オンラインミーティングを開催しました!

カンボジアのクメールソビエト友好病院のSophana Sam病理部長、Ros Vong病理技師長はじめとする病理医・病理技師8名とラオスの保健科学大学医学部病理学教室のThavisouk Hatthakone技師、つくば臨床検査教育・研究センター 小松京子、神戸大学グローバル教育センター 松本安代、東京医科歯科大学分子病理検査学分野 副島友莉恵、卒研生の髙橋希、中堀未依子、藤井奎称で初回のオンラインミーティングを開催しました。
ミーティングでは、まずクメールソビエト病院で実施した乳がん症例の免疫組織化学染色標本の検討を行い、改善点と今後の課題、特に試薬や抗体の調達についてどうするかを話し合いました。次にカンボジアでラオス人病理医・病理技師を招いて実施する免疫組織化学染色実習の日程や手順の打ち合わせを行いました。

Sophana部長からはクメールソビエト病院では新病棟建設が進んでおり、病理部も新病棟に移転する予定ではあるが、ラオスと日本からの訪問がある予定の2月は残念ながら今の古い病理部の場所ままかもしれないという報告もあり、一同が対面で会えることを楽しみに、次回オンラインミーティングの約束をして終了しました。

2022.10.20 2022年度トヨタ財団国際助成によるプロジェクトが始まりました。

<プロジェクト紹介>
日本、カンボジア、ラオスにおいて、女性のがんの中で罹患者が多いのは乳がんです、乳がんと乳がん検診の啓蒙、早期診断治療は3か国の共通の課題です。
しかし、カンボジア・ラオスでは乳がんの確定診断となる病理診断の体制が脆弱であり、治療法の選択に関わるホルモン受容体陽性かHER2陽性かの判定に用いる免疫組織化学染色が確実に行えていません。
当プロジェクトでは、病理技師が質の高い標本を確実にかつ迅速に作成し、病理医が適切な診断を行って臨床医にフィードバックできる体制確立を目的としてます。
カンボジア-ラオス-日本でオンラインミーティングを行いながらプロジェクトを進め、試薬や機材調達のノウハウも共有しながら、免疫組織化学染色等の標準作業手順書を作成して、一定の質の標本作成を目指します。
また、プロジェクト活動を3か国それぞれで広報することにより、乳がんの啓蒙にもつなげたいと考えています。