東京医科歯科大学が足立区と共同で虐待・DV予防研究を実施―医学部長、区長が協定書に調印12月28日

東京医科歯科大学が足立区と共同で虐待・DV予防研究を実施―医学部長、区長が協定書に調印12月28日

 子ども虐待やドメスティック・バイオレンス(DV)は増加傾向にあります。しかし、その効果的な予防対策はいまだ確立されていません。その理由として、市区町村保健センターなどで登録する妊娠届けや健診データなどの情報が電子化されておらず、誰が、誰に、どんな支援を届けたのかについて効果検証ができないことがあげられます。そのために、届けるべき支援内容も標準化されていません。
 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授は、この問題を解決すべく、科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JST RISTEX)「安全な暮らしをつくる新しい公/私空間の構築」研究開発領域(https://ristex.jst.go.jp/pp/outline/index.html)の研究開発プロジェクトの一つとして足立区において共同研究を開始しました。
 そのための協定書がこの度まとまり、平成28年12月28日、近藤やよい足立区長と江石義信医学部長が調印式を執り行いました。
 このプロジェクトでは、妊娠届けを電子化し、そこから虐待・DVのリスクを同定するためのアルゴリズムを同定。また、妊娠期からの保健師による家庭訪問においてアプリを搭載したデバイスを用いて支援内容や妊婦の状況をビッグデータ化し、どのような支援が効果的に虐待やDVの予防につながったのか等を科学的に検証する予定となっています。足立区のみならず、広く社会実装できる保健師支援システムの創出が期待されます。
 このプロジェクトの詳細は科学技術振興機構社会技術研究開発センター(JST RISTEX)のホームページ(https://ristex.jst.go.jp/pp/project/h28_3.html)に詳しくありますが、概要が以下の通りです。
■ 妊娠届け・健診データを用いた子ども虐待・DVハイリスク妊婦の予測
足立区及びこれまで協力してきた愛知県における妊娠届及び健診データを元にどんな妊婦さんにより手厚い支援が必要なのかをさまざまな角度から検討します。
■ 保健師・NPO支援アプリの開発・虐待予防パッケージ教材を用いた保健師研修
保健師および母子支援を行うNPOが支援を行うための内容をモバイルデバイスに搭載、また、保健師の支援内容データについても記録できるアプリを開発し、訪問先で活用できるようにします。さらに、これらを元にパッケージ教材を作成し研修を実施、研修の効果検証をして、妊婦さんが日本のどこにいても同じような効果的支援が受けられることを目指します。
■ 子ども虐待予防のための個人情報共有及び同意に関する国際比較
子ども虐待防止のために行政・福祉・医療機関など関係機関が個人情報をどのように共有するのか、主に英・米圀との国際比較を通じて、日本における共有のあり方について検討します。
■ 子ども虐待の医療的・社会的コスト試算
わが国における入院治療に至った重度の子ども虐待症例について、DPCなどのデータを用いてその医療的コストがどのくらいかかっているのか調べます。また、社会的コストも推計します。

都内の大学医学部と行政が連携してこのような研究を進めることは珍しく、大きな成果が期待されています。

左から 江石医学部長、近藤やよい足立区長、藤原教授