就任にあたって

就任にあたって

寺田 純雄
大学院医歯学総合研究科認知行動医学系専攻システム神経医学大講座
神経解剖学分野(現 神経機能形態学分野)・教授
(東京大学医学部医学科平成元年卒)

この度大学院医歯学総合研究科神経解剖学分野教授を拝命致しました。

私は平成元年に東京大学を卒業後、埼玉医科大学第一外科にて尾本良三教授の下二年間の研修医生活を送りました。その後平成3年に東京大学大学院医学系研究科第一基礎医学専攻に進み廣川信隆教授に実験の手解きを受けて以降、現在に至る迄基礎研究に従事しております。専門は細胞生物学で、特に神経細胞を舞台とした細胞質性蛋白質の輸送現象の解明を目指して参りました。今般ご縁によりまして、萬年・中村両教授の良き伝統を誇る本学神経解剖学分野を担当させて頂く光栄に浴することとなり、責任の重さを痛感しております。

ここ数年の間に大学医学部を取り巻く環境は大きく変化しました。初期研修の義務化や様々な医学教育改革の方向性は、明らかによき臨床医を育成する方向を向いています。その流れの中で基礎医学系の大学人としてどうあるべきか、考え直す必要性を感じております。研修医としての経験とその後の研究者生活から私が学んだことの一つは、本当に優れた臨床医の現場における議論は、優れた研究者の議論に相通じるものがある、ということです。単によき臨床医を育てる為ならばその為に特化した基礎医学教育で十分ですが、本当に優れた臨床医を育てるには研究者としての訓練も必要と考えます。

本学の様に大学院大学を宣言し次世代の医学を創り出す人材育成を目指す大学では、まず自らが新たな基礎医学を開拓する仕事を進めること、そしてその過程を通じて新しい医学を切り開く目をもつ仲間を増やしていくことが、私に課せられた何よりの責務だと考えております。皆様方のご叱正とお力添えをお願い申し上げる次第です。

東京医科歯科大学お茶の水会医科同窓会会報228号(2005年11月25日)所収