腹腔鏡下膵体尾部切除術

 膵臓は腹部の中心にあって、大動脈にまたがるように右側に膵頭部、左側に膵体部尾部が存在します。膵臓の切除術式として、左側にできた腫瘍には膵体尾部切除。右側にできた腫瘍に対しては膵頭十二指腸切除を行います。腹腔鏡下膵頭十二指腸切除は未だ保健収載されておらず、現在先進医療の範囲で行われていますが、腹腔鏡下膵体尾部切除は保険診療の範囲で行う事ができます。

 膵臓がんの手術では膵臓そのものを取り除くだけではなく、周囲の膜・リンパ節もいっしょに切除しなければならないので、私共は開腹手術を第一選択としております。

 膵臓にできる腫瘍は色々な種類があり、悪性度の低い膵体尾部の腫瘍に対して腹腔鏡下膵体尾部切除を行っております。膵体尾部切除の腹腔鏡下切除は、剥離をする場所が体の奥深くの方なので、キズが小さいとメリットだけでなく、開腹で行うよりも腹腔鏡で観察した方が手術しやすいというメリットがあります。ただし、膵臓を触診(よく触る)したり、精密な超音波を行う必要があったり、膵臓を離断するときに微妙な判断が必要な場合、など腹腔鏡のみでは不十分な手術になると判断された場合は、必要な分だけ最小限の開腹創を加える腹腔鏡補助手術も積極的に取り入れています。補助手術でも手術創は十分に小さくなりますし、患者さんにとって十分なメリットがあると思います。

腹腔鏡下膵体尾部切除の成績

 これまで27例(2015年3月まで)に行い、合併症(膵液瘻POPF GradeB)は2例(7.4%)に発症しました。手術関連死亡はございません(0%)。この膵体尾部切除の主な合併症は膵臓を切った切り口から膵液が漏れてくる「膵液瘻」という合併症です。膵体尾部切除の膵液瘻は10~40%と一般的に報告されておりますので、十分に良い成績であると思っております。術後の在院日数は11日(中央値)でした。

 とくに若い女性の方に多い低悪性度腫瘤に対して本術式はよい適応と考えます。下記の症例呈示のように、通常よりも細径の道具と、お腹の中に入れる道具の本数を減らすことでトロカールを減らし、よりキズの小さな手術を行うことができます。

実際の腹腔鏡下膵切除術手術の様子

【症例*】30歳台女性。膵体部の6cm大の膵粘液嚢胞性腫瘍(MCN)。

術式:腹腔鏡下膵体尾部切除術

手術時間:267分 出血:50mL

  • 腹腔鏡下膵切除術手術
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術後特に問題なく、9日目で退院されました。

術後1ヶ月

術後創の様子
*御本人の承諾を得ております。

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