研究のご紹介

研究のご紹介

当教室の研究テーマは、統合失調症や気分障害、依存症をはじめとする精神疾患の脳科学に基づく病態研究、客観的な診断法および新規の治療法の開発。および、客観的・科学的手法やエビデンスに基づいた心理社会学的治療法の開発です。

fMRIや核医学的検査法などを用いて精神疾患の脳を調べ、それを様々な手法で解析していくことで病態を明らかとしていく試みを行うとともに、ニューロフィードバックを用いて精神疾患を治療していく研究も行っています。さらに、機械学習や計算論的精神医学の手法を用いて大量の脳データを処理していき新しい発見につなげていくことやモデリングを行って病態を予想していくことにも挑戦しています。
また、臨床から生まれる日常的な疑問を解決していくアプローチでの研究立案も積極的に行なっています。

1) 生物学的精神医学研究

(i) 精神神経疾患の病因 · 病態の解明に向けた分子生物学的研究:
患者 DNA、血清、髄液、死後脳などから精神疾患に関連した病態を検索し、それらを精神疾患の動物モデルを用いて、分子レベル · 神経細胞機能レベル · 行動レベルで、実際に病態に関連するかを明らかにする、トランスレーショナル · リバーストランスレーショナル研究を行っている。

(ii) 精神神経疾患の睡眠研究:
独自に開発した睡眠ポリグラフィー自動解析装置を用いた研究、fMRI を用いた睡眠研究を行っている。

(iii) 精神神経疾患の脳画像研究:
人工知能技術も積極的に取り入れ、精神疾患の病態解明、サブタイプの同定、治療反応性予測のため MRI や PETを用いて脳構造、脳機能、分子イメージング研究を行う。

(iv) 電気けいれん療法(ECT)に関する多施設共同による後方視観察研究:
日本総合病院精神医学会の認定する多施設の「ECT 研修施設」から実績報告として提出される ECT に関する情報を後方視的に調査、解析する観察研究である。わが国の精神科臨床において ECT は長い歴史があるにもかかわらず、実臨床における ECT の実施状況がなかなか明確にされていない問題があったが、本研究によって一定の実績のある全国の医療施設における ECT の実態を明らかにすることができる。

2) 精神病理学的研究

精神障害について現象学的、人間学的、言語論的方法等によって心理学的側面から本態の解明に当たり、同時に精神療法的アプローチを行っている。また精神医学の基本概念の検討及び今日の課題である精神障害の分類と診断の基礎づけも試みている。対象とする主要な精神障害は統合失調症、躁うつ病のいわゆる内因性精神病であるが、更に、神経症、現在関心をひいている境界例などについても精神分析的指向の研究および精神療法が行われている。

3) リエゾン精神医学 · 精神腫瘍学に関する研究

(i) リエゾン精神医学領域:
歯学部附属病院と協働して、術後せん妄の予防に関する研究を行っている。また、他施設との協働で、身体科に入院している患者を対象としたせん妄の予防研究も行っている。今後は、周産期メンタルヘルスに関する研究を行う予定である。

(ii) 精神腫瘍学領域:
がんの疾病概念は、子どもが本人や家族のがん罹患を受容し適応する過程で重要な要素である。そこで、がんの疾患概念の形成に影響があると考えられる小中学校の教科書の分析し、それに基づいて精神腫瘍学の視点から学校教育を補完する親向けの家庭用がん教育教材を開発し,その効果を検証する研究を進めている。

4)司法精神医学的研究

犯罪精神医学をはじめとする司法精神医学の領域の研究を行っている。たとえば、刑事責任能力判断のための公正な精神鑑定の方法論に関する研究、心神喪失者等医療観察法における治療の効果検証研究、司法精神医療におけるリスク · アセスメント、リスク · マネジメントの手法の開発研究、成年後見制度における鑑定のための行為能力の評価方法の開発研究など多岐にわたる研究を進めている。