研究のご紹介

脳とこころの研究推進プログラム(領域横断的かつ萌芽的脳研究プロジェクト)」に採択され、「精神疾患の神経自己免疫病態の包括的解明と治療法の開発」という研究を行っています

 統合失調症は遺伝的にも症候学的にも異種性のある疾患群と考えられており、その中の様々な病態を明らかにすることが重要です。その病態候補の一つは自己免疫で、HLA領域の変異や疫学的な観点から統合失調症との関連が指摘されてきました。しかしその具体的な詳細の病態は不明でした。

 近年、脳炎患者から新しい自己抗体がシナプス分子に対する新しい自己抗体が発見されてきたのを受けて、当研究室では統合失調症患者さんから新規の自己抗体を見いだす系を確立してきました。その結果、統合失調症で脳炎でも報告のないシナプス自己抗体である抗NCAM1抗体を世界に先駆けて発見し、患者さんから精製した抗NCAM1抗体をマウスに投与するとNCAM1を介したシグナル伝達を阻害し、シナプスの減少や統合失調症関連行動につながることを示しました(Shiwaku et al. Cell Rep Med 2022)。本研究成果はプレスリリースを行い、NHKニュースなど多くのメディアに取り上げられました。

 本研究を皮切りに、さらに様々な新規シナプス自己抗体を統合失調症やその他の難治性の精神疾患で見い出しており、本研究課題ではそれらの病態への関与を示すと同時に、自己抗体の除去により難治性の症状が改善していく新しい治療戦略につなげていくことを目標としています。

 さらに、当研究室では統合失調症に関連した様々な遺伝子改変マウスを保有しており、それらを利用した病態解明を行い、本研究課題との協調で統合失調症の自己抗体による病態から、自己抗体によらない難治性の分子病態まで幅広くターゲットにしています。

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