研究のご紹介

意思決定における海馬リップル波の役割解明に向けた双方向性トランスレーショナルリサーチ

我々東京医科歯科大学精神行動医科学では「意思決定における海馬リップル波の役割解明に向けた双方向性トランスレーショナルリサーチ」研究を当学の脳神経外科学教授前原健寿先生細胞生理学教授磯村宜和先生と共同で行なっています。

この研究は武田科学振興財団の特定研究助成(https://www.takeda-sci.or.jp/assist/specific.html)を受けて行われます。

本研究の目的は、げっ歯類とヒトに対して共通のコンセプトの意思決定課題で実施し、意思決定や高次脳機能における海馬リップル波の機能を明らかにすることです。

現在、脳神経外科ではてんかん患者さんに対する手術療法を行なっています。手術療法を行うにはてんかんの焦点を正確に同定する必要があり、そのため手術前に検査のための手術をして脳の表面に脳波電極を取り付けることがあります。この深部電極と呼ばれる電極では、頭皮上に取り付ける脳波電極よりも圧倒的に精密な脳波活動を捉えることができます。この深部電極を海馬に取り付けた患者さんに協力していただき、深部電極を取り付けた後に記憶に関連した意思決定課題を行なう計画です。これによって意思決定課題に関連してどのような脳波変化が出現するかを特に高い周波数でのリップル波やHigh frequency oscillationと呼ばれる脳波活動に注目して解析を行い、それらの脳波活動の生理学的な意味を解明します。

また、細胞生理学教授磯村宜和先生はこれまでラットを用いて、リップル波を測定する研究を行っています。細胞生理学教室ではラットの脳に電極を挿入して直接脳波活動を測定しながら、報酬を与えたり、報酬を与えるパターンを変えたりする実験を行なってきました。こういった実験で脳波がどのように変化するかを解析し、脳の生理的な神経活動を解明しようとしています。今回の研究では前述のてんかん患者さんに行う課題と共通性のある課題をラットに行なって、トランスレーショナルに研究を行い、海馬リップル波の生理的な役割の解明を目指します。

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