診療のご案内潰瘍性大腸炎・クローン病先端医療センター(IBDセンター)

検査について

1. 血液検査・便検査

血液検査・便検査は患者さんの病気の状態を客観的に把握する上で大切な検査法の1つです。具体的には
・患者さんへの問診、診察ではわからない病気の活動性を把握すること
・使用している薬剤などによる副作用の確認
を主な目的として採血をしていただいています。以下のような項目を中心に検査します。

採血検査

白血球(WBC):炎症の程度を示す指標です。腸の炎症が多いと、この数値は上がります。患者さんによって数値のばらつきが非常に大きいので、患者さんそれぞれの基準値を知ることが重要です。また免疫調整剤を飲んでいるときは、この数値は用量を決めるためにとても重要です。

Hb(ヘモグロビン):貧血の程度を示す指標です。出血の量が多いと、この数値は下がります。貧血が続く方は鉄剤(サプリ)や鉄分の多い食事を取っていただくことが大事です。

Alb(アルブミン):栄養の程度を示す指標です。炎症が強いと、この数値は下がります。

CRP:炎症の程度を示す指標です。炎症が強いと、この数値は上がります。風邪や帯状疱疹など炎症を起こす他の病気でも、上がることに注意する必要があります。

LRG:炎症の程度を示す指標です。炎症が強いと、この数値は上がります。風邪や帯状疱疹など炎症を起こす他の病気でも、上がることに注意する必要があります。新しい評価項目として上記のCRPと比べ、腸の炎症をより正確に評価できることが期待されています。

AST/ALT (GOT/GPT):肝臓の機能を示す指標です。多くの薬は肝臓で分解されるので、肝臓に副作用が出ていないか、肝臓に負担がかかっていないか評価します。

Cre(クレアチニン):腎臓の機能を示す指標です。多くの薬は腎臓で排出される(尿として体の外に出る)ので、腎臓に副作用が出ていないか、腎臓に負担がかかっていないか評価します。

感染症検査:B型肝炎、C型肝炎、結核の有無を調べます。治療の中には免疫系の薬剤があり、感染症の有無を調べることは非常に大切です。免疫をおさえる治療を行った場合、感染症が非常に悪くなることがあり、それを防ぐための検査です。

NUDT検査:遺伝子の検査です。飲み薬である免疫調整剤を使う際に1%の患者さんでひどい副作用が出ることがわかっています。最近の研究で副作用が出るかどうかの遺伝子を調べられるようになりました。ひどい副作用が出ずに正しく治療を行うための検査です。

便検査

便潜血検査:便の中の出血の量を示す指標です。非常に敏感な検査であり、また大腸カメラの結果とよく比例するので非常に有用です。

便中カルプロテクチン検査:便の中の炎症の量を示す検査です。大腸の炎症の強さをよく反映します。大腸カメラの結果とよく比例するので非常に有用です。

便培養検査:便の中に悪い菌(細菌)がいないか調べる検査です。症状が悪くなったとき、実は一般的な胃腸炎(感染性腸炎)だったということがたまにあります。潰瘍性大腸炎やクローン病と一般的な胃腸炎を区別するために、大切な検査です。

2. 内視鏡検査

潰瘍性大腸炎やクローン病で腸の状態を評価するためにとても重要な検査です。とくに大腸を観察する大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が重要です。カメラの先端からは様々な器具を出し入れすることができ、大腸の細胞を取ったり、大腸のポリープを切除したり、出血していたら止めたりすることもできます。

内視鏡検査を行う目的

「症状を抑える」から「病気を治す」時代に変わり、内視鏡検査がとても重要な治療目標となりました。この目標が達成できれば、

  • 病気が再発するリスク(再燃といいます)
  • 病気が原因で入院するリスク
  • 病気が原因で手術が必要なリスク
  • 病気に関連した医療費

をすべてを減らすことが可能であることが、多くの研究でわかってきました。ですので、それを確認するために内視鏡検査が必要になります。

大腸カメラの方法

①下剤を飲んで腸をきれいにする→②内視鏡をお尻から入れる→③奥から抜きながら大腸を観察する、というのが大まかな流れです。

  1. 下剤を飲んで腸をきれいにします
    まず一番はじめに腸をきれいにすること(前処置といいます)から始まります。この処置はとっても大切で、前処置がしっかりできないと、正確な大腸カメラができません。腸管洗浄液という下剤を飲んで、腸をしっかりきれいにします。当院ではニフレック(液体)、モビプレップ(液体)、ビジクリア(粒)の3種類を準備し、なるべく飲みやすいものを選んでもらっています。
    (注)おなかの症状が強く下剤を飲むことが危険な時は、この前処置を行わないこともあります。

  2. お尻からカメラを入れます
    検査の時には、ベッドに左側を下にした状態で横向きになり、膝を抱える姿勢をとり、検査を始めます。カメラで入れる前に、麻酔のゼリーを使い、指を入れて診察して肛門に病気がないか確認します。その後に、12mmくらいの太さの内視鏡をお尻(肛門)から入れていき、大腸の一番奥(お腹の右下の部分)までカメラを進めます。
    大腸の長さは1mから2mと個人差があり、また、腸の形によっては、仰向けや右向きへと患者さんの体の向きを変えながら検査を進めていきます。痛み止めや麻酔を使用してなるべく苦痛を少なく検査します。薬の使用の有無に関しては、主治医に遠慮なくお聞きください。

  3. 奥から抜きながら大腸を観察します
    カメラをゆっくりと抜きながら大腸の観察を行っていきます。
    観察の時間は10分ほどですが、腸の形や長さに個人差があるため、時間が多少前後することがあります。またポリープを取ったりするときはさらに時間がかかります。
    観察するときには、カメラから空気を入れて腸を十分に広げ、大腸のすみずみしっかり観察をします。腸が空気で膨らむため、お腹が張って吐き気がしたり気分が悪くなることがありますが、検査終了後少しずつ良くなってきます。
    カメラの最中に、「病理検査」も合わせて行うことがあります。内視鏡の先から器具を出し、大腸の細胞を採ります(生検といいます)。この操作に関して痛みはありません。

クローン病に対する内視鏡検査

クローン病は口から始まり、食道→胃→十二指腸→小腸→大腸→肛門と食べ物の通り道(消化管といいます)のすべてに炎症が起こりうる病気です。クローン病の患者さんに行う内視鏡は大きく以下の4つがあります。

下部消化管内視鏡(大腸カメラ):お尻から入れるカメラです。「大腸」と「小腸の終わり一部」を観察します。

上部消化管内視鏡(胃カメラ):口(ときどき鼻)から入れるカメラです。「食道」と「胃」と「十二指腸の途中」までを観察します。

バルーン小腸内視鏡(小腸カメラ):お尻もしくは口から入れるカメラです。検査したい場所によりどちらから入れるかが変わります。主に「小腸」を観察します。

カプセル小腸内視鏡(カプセルカメラ):カメラが搭載されたカプセルを飲み込み検査します。画像は自動的に撮影し、適宜体外のモニターに転送されます。主に「小腸」を観察します。

近年クローン病の診療で「小腸」を正確に評価する重要性が言われております。これまで小腸を検査することが難しい場合がありましたが、バルーン小腸内視鏡の登場により小腸の観察も内視鏡により可能となってきました。

小腸のうち口に近い病変を見る場合は口から挿入(通常の胃カメラと同じ)し、肛門に近い小腸を観察する場合は肛門から挿入します。通常の内視鏡より長い内視鏡であること、小腸の深部まで挿入するために内視鏡の先端とオーバーチューブにバルーンをつけて、屈曲した腸をバルーンで保持して腸管を伸展させずに挿入していく内視鏡です。この検査法によりこれまで観察することのできなかった小腸を直接観察することが可能となったこと、またクローン病の狭窄病変に対して内視鏡的狭窄拡張術を施行することが可能となり、この数年でクローン病の診療は進歩してきています。一方クローン病は腸管の癒着が強い患者さんも多く、癒着がある患者さんに対しては検査が困難、またはできない場合もあります。当院はバルーン小腸内視鏡検査の国内専門施設の一つです。我々はそれぞれの内視鏡検査を適切に組み合わせて、クローン病の病気を診断します。

3. CT/MRI/エコー検査

CT/MRI/エコー検査を横断的画像検査といい、特にクローン病の診療においてとても重要な検査です。「横断的」というのは、かみ砕いて表現すると、人の体を輪切りに切って調べる検査のことを言います。
クローン病の患者さんに行う横断的画像検査は大きく以下の3つがあります。

CT検査(CTエンテログラフィー):ドーナツ状の機械に入り、お腹全体を撮影する検査です。放射線を用いるので一定の被爆があります。腸を膨らませるために少量の下剤を飲むこともあります。

MRI検査(MRエンテログラフィー):ドーナツ状の機械に入り、磁気を用いてお腹全体を撮影する被爆のない検査です。腸を膨らませるために少量の下剤を飲むこともあります。

超音波検査(エコー検査):お腹に機械を当てて、腸の状態や膿瘍を評価する検査です。放射線被曝はありません。検査する医師・技師の専門的な技術が要求されます。

横断的画像検査を行う目的

内視鏡検査が炎症性腸疾患の診療の中心であることは前述のとおりです。しかし、内視鏡検査には以下の2つの欠点があります。

まず内視鏡検査は決して楽な検査ではありません。また下剤を多く飲むのも大変です。内視鏡技術が進歩しましたがそれでもやはり患者さんに負担のある検査といえます。そのため横断的画像検査を代わりに行います。最近の多くの研究では、クローン病の病気の評価において、横断的画像による評価がよく内視鏡の結果を反映していることが分かってきました。一般的に横断的画像検査は内視鏡より「楽!」と考えられているので、患者さんの負担を考えると良い検査といえます。

次にクローン病で重要な腸管合併症が内視鏡では評価できません。

クローン病で重要な腸の病変(腸管合併症といいます)として
・狭窄:腸が狭くなり、食べ物などが詰まる(腸閉塞といいます)原因となる病変
・膿瘍:お腹の中に空間ができ、その中で細菌が繁殖し、膿をつくること
・瘻孔:腸の炎症が続いた結果、「腸と腸」もしくは「腸と別の臓器」がつながってしまうこと
があり、これらの病変は手術が必要になることもあるので、その評価はとても重要です。

内視鏡検査は、消化管の中をカメラを進めて病気を評価する検査です。ですので腸の外の病気の情報はわかりません。また狭窄がありそれ以上カメラが進められない場合は、その奥の情報はわかりません。そこで横断的画像評価を行うことで、「腸の状態」に加え「腸の外の病気の状態」を評価することが重要となります。

当院でのMRI検査

CT検査は放射線被ばくがあるため、特に若い患者さんは毎年の検査はおすすめしていません。MRI検査やエコー検査がより望ましいと考えます。とくに、近年の技術の進歩に伴い、高解像度の撮影が可能となり、これを用いた小腸評価が行われるようになりました。MRI検査は被爆がなく何度でも行える低侵襲な検査で、病気の経過観察にも有用です。

当院での方法は、前日の夜に下剤をのみ、MRI検査日にも腸管洗浄剤(ニフレック)を1リットル内服し、小腸に液体がたまった状態でMRI検査を行います。当院の検査でも内視鏡所見や小腸の消化管造影検査と比べ、良好な一致を確認しています。

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