教授挨拶

クリニカルサイエンスの伝統を継承し、消化器病学における新たなサイエンスの創出と価値ある医療の提供を追求します

令和2年(2020年)に東京医科歯科大学消化器内科教授に着任致しました岡本隆一です。本学大学院の消化器病態学講座は平成12年(2000年)に、消化器内科は平成13年(2001年)にそれぞれ発足し、本年で25年目を迎えました。この間、高いレベルで特色ある診療を実践し、これを基礎・臨床研究に活かす「クリニカルサイエンス」の伝統が築かれました。また、このような「クリニカルサイエンス」を実践する仲間として多くの医局員に集まって頂き、大学に在籍するスタッフは60名、関連病院等に在籍する全医局員は350名超という、非常に大きな組織に成長しました。さらに大きな組織である利点を活かし、関連病院との信頼関係の下で多施設共同研究等に取り組む体制が備わっていることも、当教室の特長の一つです。

さて着任から5年目を迎えた現在、社会は新型コロナウィルスによる混乱を克服しましたが、この間の人工知能等のテクノロジーの急速な進化や多様性を尊重する価値観等の普及により、世界規模で歴史的な大変革期の只中にあります。人と人の関係だけでなく、国と国との関係、人と地球の関係がそれぞれ一変し、本当に大切なものは何かということを深く考え、大胆に選択し行動することが求められています。これまでとは全く異なる環境と持続可能な社会を目指す世界的な流れ・考え方の中で、私達の教室がどのような役割を果たし社会とともに発展を目指すのか、道筋を示して行く必要があります。

着任にあたり、私はクリニカルサイエンスの継承を宣言すると共に、教室内に健全な競争(切磋琢磨)が根付き、その上で教室員同士が敬意と称賛でつながる、という教室のあり方を示しました。また、教室員が夢中になれる診療・研究のテーマに出会い、真実を追求する科学的な思考を共有しながら、新たな課題や困難に果敢に挑戦していく文化を育むこと、これを通して一人一人が臨床医・研究医として伸び伸びとキャリアを積み重ねて行ける環境づくりに務めることが私自身に課された重要な使命と考え、取り組みを重ねてきました。

私たちを取り巻く社会が大きな変革期を迎えたいま、「強く、しなやかで、朗らか」な教室としてさらに飛躍することを目指します。個々に豊かなオリジナリティ(個性)を発揮しながら組織として団結する「強さ」を備え、新しい技術や考え方を貪欲にとりこむ「しなやかさ」を併せ持ち、相互に敬意を払いながら切磋琢磨が実践できる「朗らかさ」が一層育まれることを理想に掲げ、当教室は歩み続けます。この歩みの中で、新しいサイエンスを創り、これを価値ある医療へつなげ、世界中で繰り返し使われるオリジナルの技術や知見を一つでも多く社会に送り出すことを教室全体で追求します。

皆様と一層の協力関係を築きながら、高い意欲と志を持った医師・研究者が世界から集う教室として成長するため、全力で職務に取り組む所存です。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

令和6年(2024年)6月
消化器内科・教授 岡本隆一
岡本隆一

教授挨拶(動画)