研究の紹介幹細胞・再⽣

3つの研究グループが腸管・膵臓等の幹細胞・再生の研究を行っており、各グループが大学院生の指導も行っています。

再生医療研究センターにおける研究の紹介はこちら

腸管オルガノイド応用グループ

リーダー
水谷 知裕   | 研究情報DBResearch mapPubMedORCIDGoogle Scholar
連絡先
tmizutani.gast@tmd.ac.jp

研究室のモットー・めざすもの

腸管オルガノイド応用グループでは、腸管上皮幹細胞の革新的培養技術であるオルガノイド培養法を基盤として、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease: IBD)に対する新規再生治療である、患者由来腸管上皮幹細胞を用いた炎症性腸疾患に対する粘膜再生治療を主導するともに、未来の消化管再生医療を牽引する新規知見の開拓を行っています。

プロジェクト紹介

・オルガノイド移植技術を利用した基盤研究
・炎症性腸疾患に対するオルガノイド移植再生治療の開発
・ヒトiPS細胞由来腸管グラフト移植による腸管組織再生技術の開発
・ヒト大腸上皮オルガノイドによる大腸癌化メカニズム解明
・患者由来大腸腫瘍オルガノイドを用いた個別化医療の開発

我々の研究室では、以前から独自の腸管上皮幹細胞オルガノイド培養技術を樹立するとともに、IBDのマウスモデルとして知られるDSS腸炎モデルを使用し、直腸に潰瘍性病変を有するマウスに体外で増殖させたマウス由来腸管上皮オルガノイドを経肛門的に移植することで、移植された腸管上皮オルガノイドが潰瘍部位に生着して上皮組織を再生し、潰瘍治癒を促進させることを見出しました(Nat. med. 2012)。また、新規に開発した高濃度EDTAを用いた生体マウス上皮剥離モデルを利用し、マウス小腸オルガノイドの大腸への移植、上皮再生も可能である事を示してきました(Genes & Dev. 2014)。これに引き続き、免疫不全マウスに対するヒト大腸上皮オルガノイドの移植、生着も報告されるなど、腸上皮幹細胞が移植による腸管再生治療のリソースとして使用可能であることが明らかとなってきました。そこでこの技術を発展させ、IBD患者自身の健常部位の腸管から上皮細胞を採取し、オルガノイド培養によって体外で患者自身の腸上皮幹細胞を増殖させ、再び本人の潰瘍、粘膜障害部位に供給することで、IBDによる慢性残存潰瘍の再生、上皮バリアー機能の再構築という新たな再生治療アプローチが期待できると考えました。現在、我々のプロジェクトは「培養腸上皮幹細胞を用いた炎症性腸疾患に対する粘膜再生治療の開発拠点」(AMED再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点B)、「難治性クローン病に対する自家腸上皮オルガノイド移植の研究開発」(AMED再生医療実用化研究事業)として、新規再生治療の実現に向けて鋭意努力を行っています。

また、患者由来腸管上皮オルガノイドを利用するアプローチ以外にも、iPS細胞など多能性幹細胞を用いた腸管再生医療の試みが近年報告されるようになってきました。

我々のグループでは、ヒトiPS細胞から誘導される腸オルガノイド(HIOs: Human intestinal organoids)の回転型バイオリアクターを用いた効率的で安定的な浮遊培養系を樹立しました(Cell Reports Methods 2022)。HIOと移植技術を組み合わせることで、現行の取り組みだけではない更なる将来性を見据えたiPS細胞由来の腸管組織再生という新規治療開発(AMED再生医療実現拠点ネットワークプログラム・基礎応用課題)にも取り組んでいます。

主な業績

  • Takahashi, J. et al. Suspension culture in a rotating bioreactor for efficient generation of human intestinal organoids. Cell Reports Methods 2, 100337 (2022).

マルチオルガン・ネットワークグループ

リーダー
伊藤 剛   | Research map
連絡先
gito.gast@tmd.ac.jp

プロジェクト紹介

腸管 〜炎症性腸疾患の病態解明と根治を目指した治療開発〜
 ー 感染を契機とした炎症性腸疾患発症・増悪機構の解明
 ー 抗菌ペプチドの腸上皮への作用の解明
膵臓 〜悪性膵腫瘍の病態解明と新規治療法の開発〜
 ー NETの分子生物学的特性の解明
 ー 機能性NETのホルモン分泌メカニズムの解明と治療応用
 ーSPNの分子生物学的特性の解明

研究室のモットー・めざすもの

近年医療は著しい進歩を遂げていますが、さらに「未来の医療」を考えると個別化医療、再生医療、AIが台頭してくることは確実です。

最近幹細胞の3次元体外培養技術でミニ臓器とも呼ばれるオルガノイド培養技術が腸管を中心に発展してきており、再生医療を中心に著しい進歩を遂げています。また網羅的遺伝子解析技術である次世代シークエンサーを用いたハイスループット解析技術と呼ばれるRNA-seq、single cell-seqも近年進歩著しく、基礎研究の病態解明だけでなく、患者さんの組織、血液の遺伝子情報を網羅的に解析し、個々の患者さんの遺伝的違いを明らかにし、個別化医療、臨床応用することに目が向けられています。このように今後の医療を語る上では遺伝子情報、再生医療が中心になってくると思われ、臨床医にもこのような知識は避けて通れなくなると思います。

本研究グループではこのオルガノイド培養技術、ハイスループット解析技術を用いて、当科の専門領域である炎症性腸疾患の病態解明、再生医療、個別化医療の発展に貢献することを目的とするだけでなく、オルガノイド培養技術を腸管から膵臓に広げ、予後不良な腫瘍の代表格である膵悪性腫瘍の病態解明や臓器間のネットワークの解明にも挑戦していきたいと考えています。現在の医療の選択肢を増やすこと、新たな技術や医療の進歩提供に貢献できるように研究を進めていきたいと思っています。

またひいてはホルモン分泌、消化、吸収などを通した腸・膵連関の解明、腸膵にとどまらず、全身への作用を統合的に理解することを目指すと同時に、「腸から全身を治療する」をコンセプトに、消化器内科が得意とする内視鏡治療やオルガノイド培養技術や、移植技術などを合わせて新規治療の開発にも繋げて行きたいと思っています。

今後研究を続けていかなくても、一度このような領域に身を置き今後の医療の方向性などについて考え、知識を深めることは将来のために大切だと考えています。少しでも興味を持たれましたら一度ご連絡いただき、見学にきてください。

リーダーから一言

研究に興味がある方はこちらへ!  gito.gast@tmd.ac.jp

ヒト腸上皮機能解析グループ

リーダー
藤井 悟
連絡先
sfujii.gast@tmd.ac.jp

研究室のモットー・めざすもの

・2023年度に誕生する新しい研究グループです。新しいことにチャレンジし、新しい発見を目指します。
・興味深いことを見つけたら、常に楽しむ余裕を持ちながら「孜孜不倦」の気持ちで研究を進めていきたいと思っています。

プロジェクト紹介

炎症性腸疾患の病態解明および新規治療法の開発

腸管の最表層は1層の腸上皮細胞に覆われ、その再生能力は非常に高く、上皮細胞層が破綻したとしても速やかに再生し元の状態へと回復します。一方、腸上皮の再生機構が慢性的に破綻した状態と言えるのが炎症性腸疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)であり、慢性炎症と難治性潰瘍を引き起こすのが特徴です。慢性炎症によって「傷害→再生→治癒」過程が繰り返された結果、再生機構が破綻し治癒に至らなくなると推定されますが、再生機構が破綻してしまう原因は未だ不明です。当研究グループでは、 炎症性腸疾患の腸上皮で繰り返される「傷害→再生→治癒」過程に着目し、炎症性腸疾患の病態解明を目指すとともに、新規治療法の開発を目指します。

また、大腸がんに関連した研究プロジェクトも立ち上げる予定です。

主な共同研究先

  • Thaddeus Stappenbeck lab, Cleveland Clinic, USA

リーダーから一言

2017年から約5年間、米国のThaddeus Stappenbeck lab, Cleveland Clinicでポスドク研究員として過ごし、多くの新しいことを学んできました。それらの新しい知見・技術を継承し、さらに発展させていきたいと考えております。当グループに興味を持たれた学生の方がいましたら、ご連絡をお待ちしております。

再生医療研究センター 消化管再生グループ

リーダー
油井 史郎   | Research map
連絡先
yui.arm@tmd.ac.jp
c

日本も、世界も注目する研究スキーム:炎症と上皮細胞・胎児化
→幹細胞操作・UCの病態解明
iPS細胞の次を担う腸オルガノイド研究の最先端ラボ!!

リーダーから一言

一流の研究を、一流の環境で!世界で活躍するチャンス!!
国際的・多分野・各世代の研究者との連携があります!