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泌尿器がん臓器温存外来がスタート

 前立腺がん、筋層浸潤膀胱がん、腎臓がんに対する臓器温存治療を希望される患者さんを対象とする、「泌尿器がん臓器温存外来」という専門外来を国内で初めて設置いたしました。
 対象患者さんは、臓器温存治療を希望する前立腺がん、筋層浸潤膀胱がん、腎臓がんの方です。ただし、臓器温存治療を行うにあたって、病状に一定の条件を満たす必要があり、全ての患者さんに臓器を温存した治療ができるものではありません。下記に泌尿器がん臓器温存外来についてQ&A形式で説明しております。

質問1 どのような患者さんのために設置した専門外来ですか?

 前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん(疑いも含む)と診断され、がんの根治に加え、最大限の臓器機能の温存を希望される患者さんのために設置した専門外来です。当科の豊富な診療経験をもとに、臓器温存治療の適応を判断し、個々の患者さんにベストと考えられる治療方針を提示いたします。

質問2 国内初ということですが、日本に今までなかったのはなぜですか?外国では一般的な専門外来なのでしょうか?

 がん治療において、通常は根治が第一の目標となり、臓器温存治療にはしばしば根治を損なうリスクがあると考えられてきました。根治と臓器機能温存の両立が理想的と考えらますが、その確立が困難であった歴史があります。近年、腎臓がんに対する臓器温存治療(手術)は標準治療となり広く施行されていますが、前立腺がん、膀胱がんに対する臓器温存治療は、国際的にもまだ発展途上です。このような背景の中、泌尿器がんの臓器温存治療に焦点を当てた専門外来はなかったものと推測します。
 当教室では、1990年代後半から泌尿器がん(前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん)の臓器温存治療の確立を大きなテーマとし、治療適応の選定、および治療法の洗練を進めてまいりました。このような経緯を経て、今回国内初の専門外来開設に至りました。

質問3 がんの患者さんでも臓器を温存することが可能になった背景には何がありますか?

 第一に、近代的画像検査と健康診断の普及により、多くのがんがより早期に診断されるようになったことがあります。人間ドックなどの超音波検査で小さな腎臓がんが多数発見されるようになったことはよく知られています。さらに、前立腺がんにおけるMRIなど、画像モダリティの進歩により、がんの局在をより正確に評価できるようになったことも、臓器温存治療の発展に大きく貢献しました。膀胱がん(特に筋層浸潤性膀胱がん)に対する臓器温存治療については、以前から多くの試みがなされてきましたが、化学放射線療法(抗がん剤と放射線療法の併用)の有効性が示されることで、適切な患者選択のもとで臓器温存が可能となりました。
 また、臓器温存治療の可能性が拡大するとともに、必要性が高まっていることも重要な論点と考えます。臓器温存治療の第一の目的は臓器機能の温存で、その結果患者さんの生活の質(QOL)がより高く維持されます。QOLを維持したがん治療を期待する患者さんが増加していると感じられます。そればかりではなく、社会が高齢化し、また高齢者の平均余命が延長する中、広範な外科的切除を中心とする従来の根治療法、あるいは根治を断念した経過観察のいずれでもなく、最小限の侵襲(体の負担)で必要な治療を実現する第3の選択肢が必要と感じております。

質問4 がんの場合は、再発を防ぐために広範囲に渡って切除手術が行われますが、温存することによってがんが再発するリスクは高まりますか?

 がんに対する臓器温存治療においては、その患者さんが臓器温存治療に適しているかどうかの見極めが極めて重要です。このステップを欠いた場合、比較的高い再発リスクが懸念され、結果的に患者さんの不利益につながってしまう可能性があります。当科では、第一にその豊富な診療経験をもとに臓器温存治療の適応を適切に判断し、臓器温存治療の恩恵を享受しうる患者さんに対してこれを提供いたします。その場合にも、がんが再発するリスクをなくすことはできませんが、最小限とするべく、患者さんと十分な情報共有を行った上で、最終的に臓器温存治療の可否を判断します。

質問5 他の病院で「臓器の温存は難しい」と診断されてしまった場合でも受診できますか?

 受診できます。当科では前立腺がんに対する部分小線源治療、筋層浸潤膀胱がんに対する化学放射線療法と膀胱部分切除を組み合わせた膀胱温存療法、腎臓がんに対する無阻血腎部分切除など、独自性が高い治療を行っており、当科の豊富な診療経験をもとに、患者さんの病状を見直した上で当科における臓器温存治療の対象になるかどうか判断させていただきます。

質問6 家族が患者の代わりに受診することができますか?その際に必要なものは?

 診療情報提供書、画像データ、病理プレパラート(ある場合には)を持参していただければ、受診していただくことは可能です。しかしながら、原則として患者さん本人に来ていただきたいと考えています。患者さんと十分な情報共有を行い、ベストと考えられる治療方針を提示いたします。

質問7 臓器を温存できないケースというのは具体的にどんなケースでしょうか?

 根治性を大きく損ね、患者さんに不利益になると合理的に考えられる場合には臓器温存できないと判断します。具体的には、膀胱がんでは上皮内癌(CIS)が広範に存在する場合、腎臓がんではがんが血管に浸潤し安全な手術が難しいと判断する場合、前立腺がんではがんが広範に存在する場合や、グリソン・スコアが高い癌が存在する場合などです。その他さまざまな条件で臓器温存が難しいと判断する場合がありますが、できる限り温存の可能性を患者さんと一緒に考えていきます。

質問8 この専門外来の特色、泌尿器科の特色、東京医科歯科大学医学部附属病院の特色について教えてください。

「泌尿器がん臓器温存外来」では、臓器を限定せず泌尿器がんの患者さんで、がんの根治と機能温存の間で悩まれている方を幅広くサポートすることを特色としています。
 泌尿器科では、副腎・腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道、精巣など、と多岐に渡る臓器のがんで悩まれている患者さんを包括的に治療を行なっており、手術治療から薬物治療まで幅広く診療しています。当専門外来では泌尿器がんで臓器機能温存を目指している患者さんすべてを対象としています。

東京医科歯科大学医学部附属病院泌尿器科では、泌尿器がん(前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん)の臓器温存治療の確立を大きなテーマとし、治療法の洗練を進めてきました。前立腺がんに対しての小線源療法を用いた前立腺部分治療、筋層浸潤膀胱がんに対しての経尿道的膀胱腫瘍切除と化学放射線療法を併用し膀胱部分切除を行う4者併用膀胱温存療法を、当科における特色的な治療として施行しています。また、腎臓がんに対しては、当科で開発したミニマム創内視鏡下無阻血腎部分切除と、世界の標準的手術であるロボット支援腎部分切除術を患者さんの病状に合わせて選択し施行しています。

東京医科歯科大学医学部附属病院はJR御茶ノ水駅から徒歩数分と都内でも有数のアクセス良好な病院の一つです。泌尿器癌の患者さんで、がんの根治と機能温存で悩まれている方を幅広くサポートしたいと考えています。お気軽に受診してください。