ご家族の方へ

家族のためのハンドブック

摂食と嚥下

ジョンズ・ホプキンス・チルドレンズ・センター
マウリーン A. レフトングレイフ 理学博士・言語療法士(2007年改定)

Maureen A. Lefton-Greif, PhD,CCC/SLP - Johns Hopkins Children's Center

摂食行為には多くの要素が含まれます。食べるためには、体幹・腕・手・口の一連の動作がスムースにつながる必要がありますし、飲み込むためには反射的な運動も必要です。安定した姿勢で腰掛け、テーブルの上にある食べ物を口まで運び、しっかり噛み、きちんと飲み込むためには、十分な運動のコントロールが必要なのです。

正常な嚥下とは、食べ物や飲み物を口から胃まで安全に運ぶことです。摂食・嚥下が正常にできることには、単に“食べられる”ということ以上の意味があります。食事は、いつもの夕食であれ特別な日のディナーであれ、社交の時間であり、家族の交流の場です。この章では、嚥下と、その機能がうまく働かない場合の問題点について説明していきます。

摂食および嚥下機能

摂食と嚥下には二つの機能があります。一つは、食べ物・飲み物・唾液を、気道に入らないようにしながら、口から胃まで導く機能です。二つ目は、十分で適切な食事の摂取により、大人では健康の維持を、子供では健やかな成長を促す機能です。

私たちは1日におよそ六万回も何かを飲み込んでいます。一番よく物を飲み込むのは食事の時間ですが、実は一日中、眠っている間にも飲み込んでいるのです。嚥下には、三つの段階(相)があります。口腔相、咽頭 (のど)相、食道相の三つです。

嚥下の各相

まず口の中で行われる口腔相では、顎、唇、舌、歯、頬、口蓋 (口の天井部分) が使われます。口腔相の役割は、食べ物を飲み込むのに適した状態にして、これを口の奥に持っていくことです。液体とプリンやアイスクリームのような食べ物は、口の中に入った時点ですでに飲み込める状態になっています。飲み込める状態になっている食物や液体のことをボーラス(食塊)と呼びます。他の食べ物(サンドイッチ、果物、野菜、肉など)は、噛んで飲み込める状態にしないといけません。こうした食べ物は噛み砕かれたあと唾液と混ぜ合わされてボーラス(食塊)になります。その後、舌・頬・のどの筋肉によって、ボーラス(食塊)は口の奥に移動し、口腔相は終了します。

次の咽頭相はのどで行われます。この段階ではボーラス(食塊)は口から咽喉 (のど) を通って食道へ移動します。この時には、気道は閉じられ、ボーラス(食塊)は気道には入らないようになっています。咽頭相では、多くの器官のすばやい連動が必要です。舌の付け根・軟口蓋(口の天井部分の奥の方の筋肉)・喉頭蓋(気道を塞ぐ弁)・咽頭・喉頭 (発声する部分) 、そして食道上部の筋肉が、すべて素早く、タイミング良く動きます。食物が咽喉相を通過するのには一秒もかかりません。

嚥下の第三段階は食道相です。この段階では、うねるような食道の筋肉の動きにより、食物は食道から胃へ移動します。

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