ご家族の方へ

家族のためのハンドブック

肺機能検査

A-Tの患者さんは現在、特に症状がない場合も肺疾患の検査を受けておくべきです。スパイロメトリー(肺活量測定)は肺機能を調べるために現在、最も有効な検査です。

肺活量の測定はただ思い切り息を吸い、マウスピースに息を吹き込むだけの単純で痛みのない肺機能を測定できる方法です。ほとんどのA-T患者は、頭を安定させマウスピースをテープで固定するなど、ちょっとした工夫をすれば使用することができます。自分で検査に協力できる年齢になったら、年に一度程度の定期測定をお薦めします。

年に一度、肺活量を測定すれば肺の機能が低下した場合、その事実を特定でき、将来さらに急激に機能が低下する可能性があれば、その予想に役立ちます。肺活量に加えて、平均吸気圧 (MIP)、平均呼気圧 (MEP)、及び咳の際の最大流量を測定しますが、それにより呼吸筋がどれだけ機能しているのかの目安になります。経皮酸素濃度モニター、血液ガス検査、そして終夜睡眠ポリグラフ検査(睡眠検査) もまた肺機能を調べるのに有効な検査です。

肺疾患の特定、ならびに解析するための診断検査

1.

肺活量測定法により努力肺活量 (FVC) が低いと特定された人は、ヘリウム希釈法による肺容量の検査を考えてください。強制肺活量が低値であれば、肺予備能が低下しておりまた肺疾患の恐れがあると考えられます。ヘリウム希釈法は車椅子が必要な子供でも簡単に行うことができます。またこの方法は患者への負担もほとんどありません。ただしヘリウム希釈法を行える肺機能検査部門は多くありません。ヘリウム希釈法はボディプレチスモグラフィーでも代替できます。ボディプレチスモグラフィーはボディボックスに座って呼吸してもらう検査ですが、A-T患者には難しいかもしれません。いずれにせよ努力肺活量が低い場合は、呼吸器専門医の診察を受ける必要があります。

2.

A-T患者においても、呼吸器に慢性的な症状がある場合、あるいはは急性疾患の治療にもかかわらず呼吸器症状が認められる場合には、放射線検査を受けてもよいでしょう。胸部エックス線は肺炎を調べるのに有効です。また胸部のCTスキャンは小さな肺炎、胸水、気胸、気管支拡張症や、間質性肺炎の検査として有用です。放射線の被曝を抑えるために、可能な場合は放射線量の微弱なCTスキャンを使ってください。ただし、診断上必要と考えられる場合は通常の放射線検査も受けてください (“がんと放射線被ばくのリスク”の章を参照してください)。

3.

下気道や肺の状況を悪化させることがあるにも拘わらず、A-T患者の副鼻腔疾患は過小評価されています。A-T患者の副鼻腔疾患の症状は分かりにくいものです。以下の症状がひとつないし複数がある場合、疑うことが必要です。慢性的な夜の咳、鼻汁が喉の奥へ流れ落ちる。鼻詰まり、上気道の閉塞、そして口臭です。CTスキャンやMRIで副鼻腔を撮影することは、上気道粘膜に慢性的な炎症がある、あるいは肺に症状がある患者の慢性副鼻腔炎を診断するときに有効です。

4.

A-T患者では、年齢や慢性呼吸器疾患の有無にかかわらず、手術前に肺機能をよく調べておくことが重要です。麻酔専門医が全身麻酔をかける場合のリスクを理解し予測する基準となります。A-Tの小児・成人患者は手術後や、全身麻酔を必要とする他の措置の後に人工呼吸器から離脱することが難しい場合があります。全身麻酔以外の選択肢、あるいは麻酔後にスムーズに気道から痰を排除できる方策を考慮しておくべきです。麻酔を行う際は、患者の健康状態や臨床症状を鑑み、麻酔によるリスクについて麻酔専門医や呼吸器専門医とよく話し合っておくべきでしょう。

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